巻頭言
「女性の活躍こそが日本の未来を創る」
昨年末にスタートした「女性活躍と経済成長の好循環実現に向けた検討会」座長の平野です。この検討会は、小倉大臣の力強いリーダーシップの下、日本の社会における女性の活躍を促進し、それによる経済の活性化が更なる女性活躍に繋がるという好循環の実現を目指して、様々な分野で活躍するメンバーが熱い議論を交わしています。
バブル崩壊後の日本経済の長期停滞については様々な指摘がなされていますが、最大の要因は、キャッチアップ型の成功体験を越えてイノベーションや新しい事業モデルを生み出すことが出来なかった企業経営にあります。しかし、個性と創造力豊かな人材が自由に力を発揮することを阻む社会のあり方にも問題があるのではないでしょうか。
私は、長く国際金融に携わり13年間の米欧での生活を経験しましたが、外から日本の社会を見た時に否応なく感じるのは、同質性への強い指向であり、今日的な文脈で言えば「ダイバーシティ」の欠如です。例えば、私が1983年秋にニューヨークの投資銀行であるモルガン・スタンレーに赴任した時のこと、私の上司はフランス系カナダ人の女性で、フロアではアフリカ系アメリカ人を含む実に多様な仲間が、日々新たなビジネスに挑戦していました。今、アメリカは深刻な社会的分断など様々な課題に直面しています。しかし、あのエネルギーは健在であり、それがあの国の未来を切り拓く力です。EUの成功も、アイデンティティを共有しつつ多様な言葉や文化を包摂する努力を続けているところにありそうです。
30年に及ぶ長いトンネルを抜け出し、子供たちに希望に満ちた日本を引き継ぐために、私たちは私たちのやり方で豊かで活力溢れる社会を創り出していかなければなりません。ただ、鍵を握るのが新たな価値を生み出す源泉である「ダイバーシティ」である点は同じです。そして、現在の日本において最も重要なのは女性の活躍、すなわち女性たちの持つポテンシャルを解放し最大限に活用することです。1986年に施行された男女雇用機会均等法以降、様々な取組みがなされ、課題だった「M字カーブ」もほぼ解消されました。しかし、例えば「L字カーブ」が厳然として残り、少子化も進むなど、多くの課題が残っています。改めてその真因を探り、正面からそれに向き合い、具体的なソリューションを見出し、実行すること。それが今を生きる私たちの未来への責務だと、私は信じています。
株式会社三菱UFJ銀行特別顧問
平野信行