「共同参画」2022年12月号

巻頭言

「実践と行動に向けて ~防災分野の共同参画~」

防災・災害対応・復興分野の男女共同参画は、近年大きく進展しています。東日本大震災をはじめとした大災害の教訓から学び、『男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン』(令和2年改訂)や『女性が力を発揮するこれからの地域防災』(令和4年)などで具体的な施策やノウハウ・活動事例が示されたことが効果を上げつつあります。

災害発生に備えて学び活動する女性はますます増えています。地方自治体や地域コミュニティで防災や災害対応に関わる人々の間でも、ジェンダーの視点や男女が共に担う体制が必要だということに一定の共通理解が得られるようになり、「必要性は理解できたが何をしてよいかわからない」という人は減っていると感じます。

地方自治体が作成する地域防災計画や避難所運営指針には、男女のニーズの違いへの配慮、安全対策、女性の参画について記載されるようになり、女性用品や子育て介護用品を備蓄する自治体も増えています。地方防災会議の女性委員比率は大幅に増加しています。

しかし、内閣府男女共同参画局のフォローアップ調査(令和4年)によると、この進展にはいくつかの偏りと隔たりがみられます。

まず、女性のニーズへの配慮と比べ、女性が意思決定の場に参画するための施策は遅れがちです。例えば、全国市区町村の70%が、避難所運営指針で男女別の更衣室・トイレ、授乳室を設置すると記載していますが、避難所運営への女性の参画を推進する記載は58%にとどまります。防災・危機管理部署に女性職員が1人も配置されていない市区町村は62%を占めます。

そして、計画や指針類に記載された対策が実践されない問題もあります。令和3年に避難所を開設した市区町村のうち、女性の視点を踏まえたトイレ・入浴施設を設置し、女性に対する暴力の防止・安全確保の取組を行い、避難所の運営体制に女性が参画するよう配慮した自治体はそれほど多くはありません。同様に、「自主防災組織への女性の参画を促すための取組」を実施した市区町村も期待されたようには増えていません。

最後に、市区町村の規模によって進展に差がみられ、町村部や小規模自治体では、一般的に防災分野の男女共同参画施策は導入が遅れています。

政策から実践へ。言葉から行動へ。配慮から参画へ。これは簡単なことではありません。これからが、防災分野の男女共同参画の真価が問われる大事な段階だと考えます。


<出典>
内閣府男女共同参画局2022「 地方公共団体における男女共同参画の視点からの防災・復興に係る取組状況について フォローアップ調査結果(概要)」
https://www.gender.go.jp/policy/saigai/fukkou/pdf/chousa/r3_zentaigauyou.pdf

静岡大学教育学部教授 池田恵子
静岡大学教育学部教授
池田恵子

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019