「共同参画」2022年10月号

特集2

DV対策の抜本強化に向けて
男女間暴力対策課

第2回DV対策抜本強化局長級会議を開催しました

去る8月30日、内閣府特命担当大臣(男女共同参画担当)を議長とするDV対策抜本強化局長級会議(第2回)がオンラインで開催されました。この会議は、配偶者等からの暴力の防止及び被害者の保護に係る施策を抜本的に強化するため、政府一体となって、各府省が連携して取り組むことを目的として立ち上げられたものです。

第2回の会議では、DV被害者の「生活再建支援の際の手続の見直し等に関する論点」として、手続の見直しに向けた検討の方向性が確認されました。これは、本年2月から3月にかけて内閣府が行った、DV被害者支援を行う配偶者暴力相談支援センター、民間シェルター等に対するアンケートにおいて、生活再建支援に係る具体的な手続の改善してほしい点を調査した結果を踏まえています。なお、同アンケートでは、DV被害者が、生活・就業・住宅・子育てなど、多くの面で生活再建に苦労していることが明らかとなっています(アンケート結果については次々頁以降を参照)。

DV被害者への支援制度は、各府省にまたがっており、被害者が直面する生活再建の困難を改善し、生活再建の円滑化を図るためには、各府省が連携して取り組む必要があります。今後、「生活再建支援の際の手続の見直し等に関する論点」に基づき、本年内にDV対策の抜本強化策を取りまとめることとなります。

会議の場では、小倉内閣府特命担当大臣(男女共同参画)から「霞が関の論理にとらわれず、現場の切実な声、ひいては被害者の声なき声に真摯に耳を傾けるという心構えで、本日取りまとめた論点に基づき、被害者の生活再建支援に関する手続の見直しを進め、抜本強化策を具体化するようお願いする。」旨の発言がありました。


小倉内閣府特命担当大臣(男女共同参画)
小倉内閣府特命担当大臣(男女共同参画)


(DV対策抜本強化局長級会議 構成員)
議長内閣府特命担当大臣(男女共同参画)
議長代理内閣府男女共同参画局長
構成員内閣府子ども・子育て本部統括官
警察庁生活安全局長
総務省自治行政局長
法務省大臣官房審議官(国際・人権担当)
法務省民事局長
文部科学省総合教育政策局長
文部科学省初等中等教育局長
厚生労働省子ども家庭局長
国土交通省住宅局長
オブザーバー最高裁判所事務総局民事局長

この会議で取りまとめられた「生活再建支援の際の手続の見直し等に関する論点」の概要は次頁のとおりです。

また、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律の見直しについては、女性に対する暴力に関する専門調査会の下に置かれた配偶者暴力防止法見直し検討ワーキング・グループにおいて検討が進められています。



配偶者暴力相談支援センター・民間シェルター等へのアンケートを踏まえた
生活再建支援の際の手続の見直し等に関する論点(概要)

令和4年8月30日
DV対策抜本強化局長級会議

配偶者からの暴力の被害者に係る支援について、以下の論点に基づき、令和4年内に抜本強化策を取りまとめる。

経済的支援
  1. 被害者が利用できる経済的支援について整理を行うとともに、生活保護法による保護の実施について、補足性の原理を前提としつつ、扶養能力調査の在り方、実施責任などについて、被害者の状況を踏まえ整理。
  2. 児童扶養手当の遺棄の認定事務について、その迅速化の観点から、被害者である場合に本人の申立書及び遺棄調書以外の書類の提出を求めないこと等を周知。
就業
  1. 離職せざるを得ない状況になった被害者に係る雇用保険の扱いに関し整理。
  2. 就労支援に関し、1年以上遺棄されている状態が継続すると見込まれるときは、「ひとり親」として扱われる場合がある旨を周知。求職者支援制度における世帯収入要件の扱いについて整理。
  3. 被害者の就業ニーズに配慮できる企業への職業紹介(都道府県をまたぐ広域職業紹介を含む)やきめ細かな職業相談、適切な職業訓練のあっせん、職業訓練時の一時保育の活用などを進める。
社会保険(雇用保険を除く)
  1. 行政機関又は関係機関と連携して被害者支援を行っている民間団体による支援が行われている場合の扱いについて、証明を必要とする手続きの性質等も踏まえて検討。
  2. 医療保険について、被害者が被扶養者等から外れるまでの間は保険診療による受診が可能であることを周知。被害者の秘密保持の観点からその際の被保険者への医療費通知等の在り方について検討。
  3. 医療保険について、被扶養者等から外す届出の提出をまたずに被害者を被扶養者から外すことができる「一定期間」の考え方や被害者が被扶養者等から外れる場合における通知の在り方について検討。 など
住宅
  1. 公営住宅における被害者の優先入居や目的外使用の活用の促進を図るとともに、被害者等の入居を拒まないセーフティネット住宅の登録を推進。
  2. 空き状況等の情報について、配偶者暴力相談支援センター等と共有し、居住支援法人等とも連携し、適切な住まいへの円滑な入居を進める。
子育て
  1. 保育所等の保育料、優先入所、保育認定等及び生活再建のための手続を行う際に必要となる一時預かりの利用について周知。
  2. 被害者の子どもについて、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置拡充を含めた学校における相談体制の強化によるきめ細やかな支援を行う。 など
母子生活支援・女性相談支援センター・女性自立支援施設
  1. 母子生活支援施設の入所に関する手続に関し、円滑な利用を可能にするよう、また、必要な書類を必要最小限なものとなるよう、運用実態を把握の上、検討。
  2. 困難な問題を抱える女性への支援に関する法律が円滑に施行されるよう、女性相談支援センター及び女性自立支援施設に関し、具体的な業務内容や留意点、関係機関との連携の在り方等を検討し、ガイドラインを策定等。
  3. 女性相談支援センター、配偶者暴力相談支援センター及び女性自立支援施設における心身の健康の回復を図るための医学的又は心理学的な援助を促進。
住民票・戸籍謄本・地方団体が発行する証明書
  1. 住所地外でのマイナンバーカードの申請・コンビニ交付の活用を図るとともに、住所以外における受取り等の活用を図る。戸籍謄本・地方団体が発行する証明書等を取得する際に、配偶者暴力相談支援センター等における代理申請の手続について当該施設の職員の個人名による申請を不要とするなどの整理。
支援体制の強化
  1. 官民連携の下で配偶者暴力被害者等を支援する民間シェルター等による被害者支援の更なる推進。
  2. 配偶者暴力防止法の見直しに関する検討状況を踏まえつつ、配偶者暴力相談支援センターの体制の強化。
  3. 弁護士などの専門家による仲介など、配偶者暴力の被害者の居場所を秘匿しつつ、婚姻費用・養育費や子の養育権の整理等に係る交渉を進める仕組みを検討し、整備。
  4. 男性及び外国人を含め多様な配偶者暴力に対応できる相談窓口の整備。
  5. 法テラスにおいて、弁護士会との連携を強化し、DV等被害者支援について経験や理解のある弁護士を確保。配偶者暴力相談支援センター、弁護士会及び法テラスの三者間において、このような弁護士の情報を共有するなどの連携強化。

DV被害者支援に関するアンケート結果について

本年2月から3月にかけて内閣府が行った、DV被害者支援を行う配偶者暴力相談支援センター、民間シェルター等に対するアンケート結果について説明します。

○調査の概要

 ◇対象:全国の配偶者暴力相談支援センター・市町村の婦人相談員、民間シェルター・自立支援ステップハウス
 ◇期間:令和4年2・3月に実施(直近5年程度の状況を念頭においた回答)
 ◇回答総数:534票(配偶者暴力相談支援センター・婦人相談員票:435票/民間シェルター・自立支援ステップハウス:99票)

○自宅を離れた被害者が危害や脅迫等を受けるおそれ

まずは、一時保護や相談支援を行っている施設を対象に、自宅を離れた被害者が、危害や脅迫等を受けるおそれを感じることがあるかについて聞いた結果を紹介します。

①身体的暴力、②精神的・性的暴力のうちPTSDなど心身に重大な影響がある場合、③精神的・性的暴力(②以外)、④経済的・社会的暴力の4つの暴力類型に分けて状況を聞き取りました。

図(1)のとおり、身体的暴力については約7割、精神的・性的暴力については約6割が、危害や脅迫等を受けるおそれが「よくある」「たまにある」と回答しており、一時保護等により自宅を離れてもなお、DV被害者は危害や脅迫を受けるおそれがあることが見受けられます。


(1)自宅を離れた被害者への危害や脅迫のおそれの有無(暴力類型別)
(1)自宅を離れた被害者への危害や脅迫のおそれの有無(暴力類型※別)


自宅を離れた被害者が危害や脅迫等を受けるおそれは、時間の経過とともに減っていくことがわかりますが、半年が経過しても、約5割が、身体的暴力や精神的・性的暴力による危害や脅迫等を受けるおそれが「ある」と回答しています(図(2)参照)。


(2)自宅を離れた被害者が危害や脅迫を受けるおそれの有無(暴力類型別・時期別)
(2)自宅を離れた被害者が危害や脅迫を受けるおそれの有無(暴力類型別・時期別)


また、危害や脅迫に至らない接触や接近への不安や恐怖に関しても、半年が経過しても、身体的暴力については7割以上、精神的・性的暴力については6割以上が、危害・脅迫に至らない接触や接近について、不安・恐怖を感じていることがわかります(図(3)参照)。


(3)自宅を離れた被害者が危害や脅迫に至らない接触や接近を不安・恐怖に感じるかどうか(暴力類型別・時期別)
(3)自宅を離れた被害者が危害や脅迫に至らない接触や接近を不安・恐怖に感じるかどうか(暴力類型別・時期別)


○被害者が苦労していると感じること

続いてのグラフ(下の図(4),(5))では、DV被害者が、一時保護中、一時保護後においても、トラウマなどの心理的な被害の影響を受けながら、生活資金や住宅の確保、就業や子育てなど多くの面で、生活再建に苦労していることが見て取れます。民間シェルターやステップハウスの一時保護から生活再建に円滑につなげることが課題だと考えられます。


(4)被害者が一時保護中に苦労していると感じること
(4)被害者が一時保護中に苦労していると感じること


(5)被害者が一時保護後(退所・退去後)に苦労していると感じること
(5)被害者が一時保護後(退所・退去後)に苦労していると感じること


○タッチポイントの必要性

最後に、加害者と被害者の「タッチポイント」の必要性について取り上げます。タッチポイントとは、離婚、婚姻費用・養育費や子供の養育権等を整理するための窓口(弁護士等)のことです。ご回答いただいた民間シェルター・ステップハウスの3割が既に実施しており、図(6)のとおり、多くの配偶者暴力相談支援センターが必要性を感じています。


(6)加害者と被害者のタッチポイントの必要性
(6)加害者と被害者のタッチポイントの必要性


このような配偶者暴力相談支援センター、民間シェルター等に対するアンケートやそれを受けた対策の取りまとめは、配偶者暴力防止法施行以来、初めての取組でした。実際に被害者支援を行っている現場の声を踏まえ、DV対策の抜本強化を図ってまいります。


アンケート結果の詳細はこちら

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
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