「共同参画」2022年9月号

特集1

女子生徒等の理工系分野への進路選択における地域性についての調査研究
内閣府男女共同参画局推進課

内閣府では、特に理工系分野において次代を担う女子学生の比率が低い現状について、毎年調査分析を行っています。令和3年度の調査では、地域によって異なる進路選択の実態の把握及び要因分析を行いました。その結果を踏まえて、女子生徒の理工系分野への進路選択を促進するうえで重点的な取組が求められる分野・地域等、今後の事業のフォーカス・エリアを特定することを目的としています。調査の実施方法は、統計に基づく調査・分析と、高校生に対する進路選択アンケート調査の2つの手法を用いました。


1.統計に基づく集計・分析

文部科学省「学校基本調査」の二次分析により、出身都道府県ごとの学部別男女別入学者数の集計や、進路選択に関する地域別の特徴について整理し、都道府県別にみた理工系分野への進学状況の実態把握を試み、さらに、理工学部の設置状況、地域の社会経済状況、産業構造等に関する各種統計データと、4年制大学や理工系分野への進路選択との関連性を分析し、大学進学率や理工系分野に占める女性比率の地域格差に影響を与える要因について分析しました。


図1 分野別入学者に占める女性比率(令和3年度)
図1 分野別入学者に占める女性比率(令和3年度)


分析の結果、大学入学者に占める理工系分野入学者の割合は、全国では「理学」が2.1%、「工学」が11.5%でした。分野別にみた、入学者に占める女性比率の全国数値は、「理学」分野が30.2%、「工学」分野が15.2%であり、都道府県によっても開きがみられました。(図1参照)


図2 女性の4年制大学進学率と関連がみられる地域指標
図2 女性の4年制大学進学率と関連がみられる地域指標

理学分野の入学者における女性比率と関連がみられる地域指標
理学分野の入学者における女性比率と関連がみられる地域指標

工学分野の入学者における女性比率と関連がみられる地域指標
工学分野の入学者における女性比率と関連がみられる地域指標


また、女性の4年制大学進学率、理学分野の入学者における女性比率はともに、親世代(40~64歳)の女性大卒者率との間に正の相関がみられ、母親の学歴の影響が大きいことがうかがえます。女性の4年制大学進学率と、一人当たり県民所得との間にも正の相関がみられました。大学収容力(地域における大学の設置状況)は女性の4年制大学進学率に、理学部収容力(地域における理学部の設置状況)は理学分野の入学者における女性比率に正の相関が見られるなど、地元での進学機会の多寡も、影響力のある指標であると考えられます。(図2参照)


2.高校生に対する進路選択アンケート調査

高校生の進路希望や進路選択の理由、保護者や教員からの働きかけ、固定的性別役割分担意識等を把握するため、インターネット・モニターを対象としたWebアンケート調査を実施しました。全国の高校生から性別や居住地域に偏りなく回答を得るため、性別・地域ブロックによる割付を行い、最終的に、高校生本人から4,594件の回答を得ました。


図3 希望する学部別 進路希望の理由(女性):複数回答(Q28)
図3 希望する学部別 進路希望の理由(女性):複数回答(Q28)


アンケートの結果より、女性の理工系分野への進路選択に影響を与える要因に関して、次のようなことが考えられます。

  1. 女性の理工学部志望者は、数学や物理が好きで、理数系の成績も上位者が多く、幼少期の科学館・博物館体験や大学や自治体のイベント等の理系的経験が多い。理工系分野に興味を持つきっかけとして、理系的経験が寄与している可能性がうかがえる。
  2. 進路選択の理由として、将来像が明確であるから、就職・転職に有利だから、将来高い収入が得られるからなど、理科学習に対する動機付けが高い。(図3参照)
  3. 保護者も理工系を専攻していた割合が高く、生徒の進路について、保護者が理系進学を望んでいると認知している割合が高い。理工系学部出身の大人が身近にいることで、理工系の職業イメージが湧きやすくなったり、理工系への進学を勧められる機会が増えたりすることが、理系に対する前向きなイメージにつながっている可能性が考えられる。

また、理工系分野への女性の進学と居住地域(市区町村)の人口規模の関係については、次のような結果が得られました。


図4 <幼少期の理系的な経験>
人口規模別
「保護者に、科学館や博物館に連れていってもらうこと」があったか(女性):単数回答(Q25_3)

図4 <幼少期の理系的な経験>人口規模別「保護者に、科学館や博物館に連れていってもらうこと」があったか(女性):単数回答(Q25_3)


  1. 女性の理工系分野への進路選択に影響を与える要因のうち、教科・科目の好き嫌いや成績、理系のイメージ等については、人口規模による大きな傾向の違いはみられない。
  2. 一方、幼少期の科学館・博物館体験や、大学や自治体などが主催するイベントへの参加経験等の理系的経験は人口「5万人未満」で少なく、理工系に対する興味を深める機会が不足していることがうかがえる。(図4参照)

3.まとめ

調査結果を踏まえると、人口「5万人未満」の地域には、高等教育機関へのアクセスの改善(情報提供等を通じた、理工系分野への進学・職業イメージの向上)と、幼少期からの体験やイベント等を通じた、理工系分野への興味を深める機会の創出等の取組が重点的に求められると考えられます。男女共同参画局では、この提言も踏まえ、理工系分野における女性の一層の活躍に向けて取り組んでまいります。


詳細は、こちらを御覧ください。
https://www.gender.go.jp/c-challenge/materials/index.html

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