「共同参画」2022年9月号

巻頭言

「理工系分野の男女共同参画」

世界の中でジェンダー平等が進んでいない国といわれる日本でも、教育分野だけは平等だと多くの人がみなしています。「法律や制度」「地域活動」における男女の地位が平等と思う国民が4割前後いるのに対し、「学校教育」の場は6割を超えます。ただ、実際の学校教育の場をみると、小中高校の教頭以上に占める女性の割合は2割強しかいないし、大学進学率にも依然としてジェンダーギャップがあります。

戦後日本の女性の大学(学部)への進学率は着実に上昇し、1990年代には短大への進学率を上回りました。2000年には30%を超え、2021年には51.7%で過去最高を記録しましたが、男性(58.1%)との間には数パーセントの開きがあります。また、専攻分野によって女性割合が極端に違っています。看護学や人文科学、教育学などの分野では女性が半数を上回るのに対し、理工系では3割を下回ります(工学約16%、理学約28%と)。

大学での専攻分野は職業選択に結び付きやすいため、このような不均衡が続くと労働の場のジェンダー平等も遠ざかってしまいます。また、各分野を専攻する学生の多様性が欠けると、視点や思考が画一化するため、イノベーションが生まれにくくなります。個人にとっても知識(学問)にとっても現状を変えていく必要があるでしょう。

とりわけ、今後の生活や仕事における科学技術の重要性が高まっていることから、それらの分野に女性が少ない国々ではジェンダー平等を推進する施策を講じています。たとえば、教師のあり方や教科の位置づけ、授業方法や教材選択などの見直しが行われてきました。また、大学の理工系学部でジェンダー関連科目を必修化している国もあります。理工系分野の女性を増やすために、生徒を取り巻く環境を変えようとしているのです。

OECDが実施している学力調査(PISA)によれば、国際的にみて日本の子どもたちは男女とも理数系の学力が高く、内閣府の調査でも理数系の科目の成績が上位だったと回答する高校生の割合の男女差はほぼ見られせんでした。またこの調査で、高校生の3分の2は、「男性=理系、女性=文系が向いている」に否定的な態度を示しました。

日本の高校生たちは、理数系の学業成績に男女差はみられず、専攻分野に対するステレオタイプな見方をしていません。それでも理工系を専攻する女性が少ないのは、彼女らを取り巻く環境が旧態依然としているからでしょう。教育は急には変わりませんが、高校生たちの実態に合わせ、私たちも変化することが求められていると思います。

山形大学学術研究院・地域教育文化学部主担当 河野銀子
山形大学学術研究院・地域教育文化学部主担当
河野銀子

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