「共同参画」2022年8月号

特集1

「AV出演被害防止・救済法」が施行されました
内閣府男女共同参画局男女間暴力対策課

●AV出演被害の現状について

「モデル・アイドルになりませんか」と声をかけられたり、高収入のアルバイトに応募したことをきっかけに、アダルトビデオ(AV)出演被害にあう事例が生じています。

15歳~39歳の女性に対する調査では、4人に1人がモデル・アイドルなどの勧誘を受けた・応募したことがあり、勧誘を受けた・応募した人のうち7人に1人が、聞いていない・同意していない性的な行為等の撮影を要求されたことがあるという結果が出ており、AV出演被害の問題は身近な問題であることが分かります。


●AV出演被害防止・救済法が成立

AV出演被害の問題は、被害者の心身や私生活に将来にわたって悪影響を与える重大な人権侵害です。AV出演被害の防止を図り、被害者の救済に資するため、AV出演被害防止・救済法が令和4年6月15日に成立し、6月23日に施行されました。この法律は、性をめぐる個人の尊厳を守るための法律であり、出演者の性別・年齢を問わずAV出演契約を無力化するルールやAVの公表の差止請求、事業者への罰則を定めるものです。


AV出演被害防止・救済法 概要


●AV出演被害防止・救済法のポイント

法律の具体的な内容は次のとおりです。


[基本原則]

この法律は、出演者の性別・年齢を問わずAV出演契約を無力化するルールを定めるものです。当然、公序良俗等に反する行為や違法な行為を容認するものでも、合法化するものでもありません。


[契約締結時のルール]

出演契約は作成するアダルトビデオごとに締結しなければなりません。契約締結時には、契約書等の交付を義務付け、また、撮影・公表等のルールや契約の内容について説明を義務付けています。違反があった場合は、契約を取り消すことができます。さらに事業者に罰則もあります。


[撮影時から公表までのルール]

契約をしてから1か月は撮影してはいけないこと、撮影時には出演者の安全を確保すること、撮影や嫌な行為は断ることができること、公表前に撮影された映像を確認できること、すべての撮影終了後から4か月は公表してはいけないことを義務付けています。これらの違反があった場合は、契約を解除することができます。


[任意解除]

アダルトビデオの公表後1年間は、無条件に契約を解除することができます。経過措置として、法施行日から令和6年6月22日までに契約を締結した場合は、契約を解除できる期間が「2年間」とされています。

契約を解除しても、出演者が違約金等を払う必要はありません。嘘をついたり、おどしたりして任意解除をさせなかった場合には、事業者に対する罰則もあります。


[被害拡散防止の仕組み]

契約がないのに公表されている場合や、契約の取消・解除をした場合は、差止請求として、販売や配信の停止、データの消去や店頭からの回収などを請求することができます。事業者だけではなく、ウェブサイトにアップロードする個人にも請求できます。

さらに、プロバイダが通常よりも短期間で配信を止められるようにするなど、削除を迅速化するための仕組みも規定されました。


[罰 則]

企業であるか個人であるかにかかわらず、出演者と出演契約を結ぶ者が対象です。任意解除の妨害のための不実告知または威迫・困惑行為は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、契約書等交付義務違反・説明義務違反は、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。


第13条 出演契約の任意解除等について


●AV出演契約についての相談窓口

契約の取消・解除や差止請求のやり方などについて、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターで相談できます。もし被害に遭っているなら、一人で悩まず相談してください。「#8891(はやくワンストップ)」に電話をかけると、お近くのワンストップ支援センターにつながります。


一人でも多くの方の被害の防止・救済へとつなげ、AV出演被害の根絶に向けて取り組んでまいります。

内閣府ウェブサイトにおいても、AV出演被害に関する情報を掲載しておりますので、ぜひ御覧ください。

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019