「共同参画」2022年7月号

特集2

令和4年版男女共同参画白書
内閣府男女共同参画局総務課調査室

令和4年版男女共同参画白書が、6月14日に閣議決定・公表されました。この白書は、「男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)」に基づいて国会に毎年報告されるもので、法定白書としては通算で23回目となります。


男女共同参画白書


新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、とりわけ女性の就業や生活へ甚大な影響を及ぼし、我が国において男女共同参画が進んでいなかったことが改めて顕在化しました。

問題の背景には、家族の姿が変化しているにもかかわらず、男女間の賃金格差や働き方等の慣行、人々の意識、様々な政策や制度等が、依然として戦後の高度成長期、昭和の時代のままとなっていることが指摘されています。

他方、今や、女性の半数以上は90歳まで生き、100歳を超える人は令和2(2020)年時点で女性69,757人、男性9,766人と、まさに人生100年時代です(図1)。


図1 男女の寿命


「もはや昭和ではない」。昭和の時代に多く見られたサラリーマンの夫と専業主婦の妻と子供、または高齢の両親と同居している夫婦と子供という3世代同居は減少し、一人ひとりの人生は長い歳月の中でさまざまな姿をたどっており、こうした変化・多様化に対応した制度設計や政策が求められています。

今回の白書では、このような問題意識の下、「人生100年時代における結婚と家族~家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~」を特集テーマとし、家族の姿の変化と人生の多様化、結婚と家族を取り巻く状況について、各種統計データ及び内閣府で実施した意識調査等を中心に整理した上で、実態とかい離した制度・慣行、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)を含む固定的な性別役割分担意識等に基づく構造的な問題に起因する課題を明らかにし、人生100年時代における男女共同参画の課題について考察しています。

以下、特集のポイントを御紹介します。


1 家族の姿の変化・人生の多様化

●婚姻関係の変化

結婚・離婚・再婚件数について、昭和45(1970)年は、婚姻件数は約100万件、離婚件数は約10万件でしたが、近年(平成27(2015)年~令和元(2019)年)は、婚姻件数は約60万件、離婚件数は約20万件と、離婚件数は婚姻件数の約3分の1で推移しています。また、婚姻件数に占める再婚件数の割合は1970年代以降増大傾向にあり、令和2(2020)年の再婚件数は13.9万件と、婚姻の約4件に1件が再婚となっています(図2)。


図2 婚姻・離婚・再婚件数の年次推移


●家族の姿の変化

家族の姿の変化を見てみると、昭和55(1980)年時点では、全世帯の6割以上を「夫婦と子供(42.1%)」と「3世代等(19.9%)」の家族が占めていましたが、令和2(2020)年時点では、前者は25.0%に、後者は7.7%に低下している一方、「単独」世帯の割合が38.0%と、昭和55(1980)年時点の19.8%と比較して2倍近くに増加しています(図3)。


図3 家族の姿の変化


●人生の多様化

結婚と家族の姿が変化・多様化する中で、女性の人生も多様化しています。

令和2(2020)年、50歳時点で有配偶の女性は約7割であり、「未婚」「離別」「死別」により配偶者のいない人は約3割に上ります

「雇用者の共働き世帯」は増加傾向にある一方、「男性雇用者と無業の妻から成る世帯(いわゆるサラリーマンの夫と専業主婦の世帯)」は減少傾向にあり、令和3(2021)年では、前者は後者の2倍以上となりました。ただし、「雇用者の共働き世帯」を妻の働き方別に見ると、妻がフルタイム労働の世帯数は昭和60(1985)年以降、横ばいで推移しています。共働き世帯の増加の大宗は、女性のパートタイム労働の増加によるものと考えられ、また、就業調整を行っている女性もいることから、有業の既婚女性の約6割は、年間所得が200万円未満となっています

単独世帯に目を向けると、20歳以上の女性の単独世帯数は、昭和55(1980)年から令和2(2020)年で、3.1倍に増加しています。就業している単独世帯の女性と男性を比較すると、世帯所得300万円未満の世帯は、女性は53.3%、男性は31.9%と、女性の割合が高く、また、単独世帯もそれ以外の世帯も、女性が世帯主の場合の世帯所得は、200~299万円に分布が集中しています(図4)。


1 総務省「国勢調査」より。
2 妻が64歳以下。
3 妻が64歳以下。
4 雇用者の共働き世帯:1,177万世帯、男性雇用者と無業の妻から成る世帯:458万世帯(総務省「労働力調査」)。
5 収入を一定の金額以下に抑えるために就業時間や日数を調整していること。背景として、昭和時代に創設された各種制度や企業による家族手当の存在が指摘されている。
6 総務省「就業構造基本調査」より。ここでの「既婚」とは、配偶関係「総数」から「未婚」を除いたものを指し、「死別・離別」「不詳」を含む。


図4 世帯主が就業している世帯の所得分布(平成29(2017)年)


既婚・未婚にかかわらず、所得が低い場合には、リスクを回避・軽減することができず、不安定な状況に置かれる可能性があります。例えば、既婚の女性であれば、配偶者との離死別で貧困に陥るリスクがあります。子供がいる場合は、配偶者との離死別でひとり親となり、貧困に陥るリスクは更に高くなります。また、DV(配偶者暴力)を受けていても、経済的自立が出来なければ、逃れられず、身体的・精神的に追い詰められるリスクもあります。独身の場合は、リスクヘッジの手段がなく、経済的に不安定なほか、将来が不安というリスクを抱えています。人生が多様化し、遭遇するリスクも多様化する中、女性が経済的に自立できる環境を整える必要があります。


2 結婚と家族を取り巻く状況

特集の第2節では、内閣府の調査等をもとに考察を深めています。一部を御紹介します。


●結婚を取り巻く状況

結婚に対する意思について、独身者(これまで結婚経験無し)で「結婚意思あり」としたのは、20代では女性の方が男性よりも割合が高いですが、40代以上は、女性は割合が減る傾向にあります。一方、男性は、40~60代も2~4割が結婚願望を持っています。

また、「結婚意思なし」との回答をしたのは、女性は20代で14.0%、30代で25.4%、男性は20代で19.3%、30代で26.5%となっています(図5)。


7 「現在、既に予定がある・決まっている」「現在、予定はないが是非したい」「現在、予定はないが出来ればしたい」の累計値。
8 「出来ればしたくない」「したくない」の累計値。


図5 今後の結婚願望(独身者)


積極的に結婚したいと思わない理由について、独身の男女で比較すると、女性は、「結婚に縛られたくない、自由でいたいから」、「結婚するほど好きな人に巡り合っていないから」が5割前後となっています。

男女間で差があり、女性の方が高いものは、「仕事・家事・育児・介護を背負うことになるから」、「名字・姓が変わるのが嫌・面倒だから」などとなっており、男性の方が高いものは、「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定だから」となっています。この項目間差は20~30代よりも、40~60代と年代が上がる方が大きくなっています(図6)。

独身女性が、積極的に結婚したいと思わない理由について、「仕事・家事・育児・介護を背負うことになるから」を挙げる背景には、社会や周囲、また、自分自身のアンコンシャス・バイアスの他、仕事・家事・育児・介護のバランスを取ることに苦労している既婚女性の姿を見て判断している可能性もあります。


図6 積極的に結婚したいと思わない理由


●離婚を取り巻く状況

家族の姿が変化した今、結婚は必ずしも安定した生活を保障してくれるセーフティネットではなくなっています。

過去の離婚の経験を見ると、50代女性は19.4%、60代女性は18.4%、50代男性は13.3%、60代男性は12.9%が離婚経験があり、50~60代の現在独身の人に着目すると、女性は約半数が離婚経験があり、男性の半数以上がこれまで一度も結婚していたことがありません。

また、現在結婚している人のうち、将来、「離婚可能性あり」と回答した人は、男女ともに約15%となっています(図7)。


9 「現在、離婚準備中(調停中・裁判中含む)である」「かなりありそうだと思う」「あるかもしれないと思う」の累計値。


図7 今後離婚する可能性


3 人生100年時代における男女共同参画の課題

かつて、我が国では、家族は社会保障の機能を担い、多世代・3世代同居により、経済的な保障だけでなく、家事・育児、高齢者の介護は家族内で行われていました。昭和の高度成長期に、都市部では核家族化が進み、夫婦と子供という世帯が増加し、仕事は夫、家事・育児は専業主婦の妻に任されましたが、地方では多世代・3世代同居が続き、家族の社会保障の機能は維持されました。現在の我が国の税・社会保障制度等は、基本的には、この家族の姿を前提に作られています。

昭和、平成、令和と、時代が移り変わり、家族の姿の変化、家族に関する意識が変化し、家族が社会保障の機能を十分果たせなくなっています。これらの変化に応じて、税・社会保障制度等は、改変されてきていますが、現在の家族の姿に十分対応できておらず、制度等の恩恵を十分に受けられない人々がいます。

女性の人生は多様化し、女性にとって、もはや結婚は永久就職先ではなくなりました。しかし、人生の選択肢は増えたものの、遭遇するリスクも多様化し、多様化したリスクに対応する制度等の整備が追いついていません。一方で、女性の経済的自立の手段が依然として限られているため、リスクを回避・軽減できず、不安定な状況に置かれている場合も多いのが現状です。

家族の姿も女性の人生も多様化する中、人生100年時代を迎え、長い人生の中で女性が経済的困窮に陥ることなく、また、尊厳と誇りをもって人生を送ることができる国にするためには、様々な政策課題がありますが、特に、以下の5つが優先的に対応すべき事項であると考えられます。

①女性の経済的自立を可能とする環境の整備
②世帯単位から個人単位での保障・保護/無償ケア労働を担っている人への配慮
③早期からの女性のキャリア教育
④柔軟な働き方を浸透させ、働き方をコロナ前に戻さない
⑤男性の人生も多様化していることを念頭においた政策

人生100年時代を迎え、日本の家族と人々の人生の姿は多様化し、昭和の時代から一変しています。今後、男女共同参画を進めるに当たっては、常にこのことを念頭におき、誰ひとり取り残さない社会の実現を目指すとともに、幅広い分野で制度・政策を点検し、見直していく必要があります。


人生100年時代における男女共同参画の課題


令和4年版男女共同参画白書は男女共同参画局のHPに掲載しています。
こちらから御覧ください。
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/index.html

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
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