「共同参画」2022年7月号

特集1

女性版骨太の方針2022
男女共同参画局総務課

令和4年6月3日に、総理官邸において全閣僚からなる「すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部合同会議」を開催し、「女性版骨太の方針2022」を政府決定しました。今回は、本方針の概要や具体策について御紹介します。


○家族の姿の変化・人生の多様化

我が国の男女共同参画の現状は、ジェンダー・ギャップ指数が156か国中120位であることに表れているように、諸外国に比べて立ち遅れていると言わざるを得ません。

その背景には、昭和の時代に形作られた各種制度や、男女間の賃金格差を含む労働慣行、固定的な性別役割分担意識など、制度・慣行・意識の3つの要素が相互に強化し合っているという構造的な問題があると考えられます。

とりわけ、人生100年時代を迎え、女性の半分以上は90歳まで生き、離婚件数は結婚件数の3分の1となっています。また、50歳時点で配偶者のいない方は男女ともに3割程度となり、家族構成は単独世帯が最も多く、配偶者がいない世帯が全体の約半数を占めるなど、女性の人生と家族の姿は多様化しており、もはや昭和時代の想定は通用しません。令和の時代にあった制度や施策が求められています。


婚姻・離婚件数の年次推移


男女の寿命(令和2年)


50歳時点での配偶関係は多様(令和2年)


家族類型(令和2年)


こうした認識のもと、女性版骨太の方針は、
①女性の経済的自立
②女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現
③男性の家庭・地域社会における活躍
④女性の登用目標達成(第5次男女共同参画基本計画の着実な実行)
という4つの柱立てに基づき、具体策を取りまとめました。以下、それぞれの柱立てに沿って、今年度及び来年度に実施することを決定した主な具体策を御紹介します。


〇今年度及び来年度に実施することを決定した主な具体策

Ⅰ 女性の経済的自立

前述のとおり女性の人生と家族の姿が多様化する中で、女性が長い人生を経済的困窮に陥ることなく生活できる力をつけることは、女性本人のためにも、また我が国の経済財政の観点からも、喫緊の課題となっています。


①男女間賃金格差への対応

我が国の男女間賃金格差を見ると、正規・非正規の格差に加えて、同じ正社員、同じ非正規でも格差があり、年齢が上がるにつれて、その差は拡大傾向にあります。国際比較をしても、日本は男女間賃金格差が大きい国の部類に入ります。

男女間賃金格差(所定内給与額、令和3年)


男女間賃金格差の国際比較(賃金:中央値)


このため、男女間賃金格差に係る情報の開示や同一労働同一賃金の徹底、女性デジタル人材の育成等を通じて、男女間賃金格差の是正に取り組んでいきます。

特に、男女間賃金格差については、女性活躍推進法の制度を改正し、常用労働者301人以上の事業主に対し、全労働者について及び正規・非正規雇用に分けて開示を義務付けることとしました。また、有価証券報告書の記載事項についても同様の開示を義務付けることとしました。


②地域におけるジェンダーギャップの解消

地域における10代〜20代女性の人口に対する転出超過数の割合


近年、若い女性が地方から大都市へと出て行く傾向が強まっており、その背景には、根強い固定的な性別役割分担意識があると考えられています。この流れを止めるためには、全国津々浦々でジェンダーギャップを解消する必要があります。

このため、全国355か所に設置されている男女共同参画センターの機能強化を行うとともに、独立行政法人国立女性教育会館(NWEC)を文科省から内閣府へと移管し、男女共同参画のナショナルセンターとして取組をバックアップします。


③固定的な性別役割分担意識・無意識の思い込みの解消

固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)の解消に向けて、地方公共団体や経済団体、学校の教育現場など様々な場面で取組を進めます。

その中で、女性の人生の多様化の実態について広く周知し、結婚すれば生涯、経済的安定が約束されるという価値観で女の子を育てることのリスクについて認識を広めます。


このほか、女性の視点も踏まえた社会保障制度・税制等の検討や、ひとり親への職業訓練の強化、養育費の「受領率」に関する達成目標の設定など、様々な角度から取り組みます。


Ⅱ 女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現

女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会は、女性活躍・男女共同参画の大前提です。


①アダルトビデオ出演被害対策等

昨今、アダルトビデオ出演被害は若い女性にとって身近な問題として顕在化しました。調査によると、若い女性の約4人に1人がモデル・アイドル等の勧誘を受けた経験があり、モデル・アイドル等の勧誘を受けたり応募した経験のある女性のうち、約7人に1人が聞いていない・同意していない性的な行為等の撮影要求を受けたということです。

アダルトビデオ出演被害:モデルやアイドル等の勧誘(令和2年)


このため、女性版骨太の方針の決定後に国会で成立した「AV出演被害防止・救済法」に基づき、必要な対応策を講じていきます。


②性犯罪・性暴力対策

近年、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの相談件数も増加傾向にあり、深刻化が懸念されています。


全国の性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(47都道府県)の相談件数の推移


このため、令和5年度以降の「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」の後継となる方針を策定するとともに、ワンストップ支援センターの体制強化に取り組みます。また「痴漢撲滅パッケージ」の取りまとめも行います。


③配偶者等からの暴力への対策の強化

配偶者暴力防止法の改正が早期に実現できるよう検討を行うとともに、被害者の生活再建に向けた手続面の見直しに向けた抜本強化策を取りまとめます。


④女性の健康

女性の健康課題を技術の力で解決する「フェムテック」の更なる推進や、予期せぬ妊娠への対応として、緊急避妊薬を処方箋なしに薬局で適切に利用できるようにすることについて、パブリックコメントを実施するなど着実に検討を進めます。


Ⅲ 男性の家庭・地域社会における活躍

男女共同参画を進めていくためには、男性が家庭や地域でも活躍できることも大切です。


①男性の育児休業取得の推進及び働き方の改革

家事に関する配偶者との役割分担の希望を聞くと、若い男性の7割以上が、配偶者と家事を半分ずつ分担したいと考えています。しかし、現状はできていません。この背景として、長時間労働等の昭和時代から続く慣行が指摘されています。

家事に関する配偶者との役割分担の希望(男性)(令和元年)


このため、男性の育児休業取得の推進に加えて、コロナ収束後もコロナ前の働き方に戻さないため、テレワークなど多様な働き方の定着に向けた取組を強力に進めていきます。


②男性の育児参画を阻む壁の解消

内閣府の調査により、仕事と子育て等の両立を阻害する様々な慣行やしきたりが明らかになりました。

意見の内容


こうした課題を着実に解決するため、男性用トイレへのベビーベッド等の設置や、幼稚園や保育園、学校と保護者の間での連絡のデジタル化などの取組を進めていきます。


Ⅳ 女性の登用目標達成(第5次男女共同参画基本計画の着実な実行)

5次計画に掲げられた58の成果目標を着実に達成し、計画を絵に描いた餅にしないよう、目標の進捗状況を確認し、PDCAを回しながら必要な施策を展開していきます。


①政治分野

我が国の有権者の約52%は女性ですが、女性の議員がいない市区町村議会がいまだ275議会もあります。

女性の議員がいない市区町村議会


昨年夏に改正された候補者男女均等法の下、政府では、男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指して取組を進めています。

調査によると、特に女性の政治参画の障壁となっている要因として、女性の3人に1人が性別による差別やセクシャルハラスメントをあげています。このため、「政治分野におけるハラスメント防止のための研修教材」の積極的な活用を推進します。


②経済分野

女性役員がいない東証一部上場企業数は減少していますが、未だ約3社に1社は女性の役員がいません。本年4月に発足したプライム市場でも、3割近くの企業が女性役員ゼロ企業です。


女性役員がいない東証一部上場企業数


このため、女性役員の登用状況の見える化や、公共調達を活用した女性活躍企業の優遇などを通じて、女性役員の登用を促します。


このほか、行政分野(国家公務員の女性職員の職域拡大等)や科学技術分野(理系分野に進学する女子学生を対象にした修学支援プログラムの創設等)など、様々な分野で取組を進めます。


リンク集

女性版骨太の方針2022
https://www.gender.go.jp/policy/sokushin/sokushin.html

内閣府男女共同参画局公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCeJ_mPdtAojnTFXbuDnbjfQ

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019