「共同参画」2022年6月号

特集1

諸外国の経済分野における女性比率向上に係るクオータ制等の制度・施策等に関する調査
内閣府男女共同参画局推進課

1 調査の目的

本調査は、諸外国における企業役員等の女性比率の向上を目的としたクオータ制※1等の制度・施策等について、それらの導入経緯、内容、政策的効果及び運用状況等を把握し、我が国の取組への示唆を得ることで、第5次男女共同参画基本計画の目標達成に向けた取組の更なる推進を図ることを目的として実施しました。

※1 積極的改善措置(ポジティブ・アクション)の手法の一つであり、性別などを基準に一定の数・割合を割り当てる制度のこと。


2 各国の企業役員に占める女性比率の推移

各国の企業役員に占める女性比率の推移

諸外国における企業役員に占める女性比率の推移をみると、役員の一定の数・割合を女性に割り当てるクオータ制を導入した国は、その導入以降、女性比率が大きく伸びていることが分かります。フランス、ノルウェー、イギリス、ドイツといった国々は、2021年時点で、役員の女性比率が30%台後半から40%台半ばとなっており、日本の3倍から4倍の水準となっています。


3 各国の取組

○フランス

一部の企業を対象として義務的なクオータ制が導入されています。

2006年時点では、ジェンダーギャップ指数が115か国中70位だったものの、2008年に憲法改正を経て、2011年に取締役クオータ法が制定されました。同法により、上場企業や、従業員、売上高等が一定規模以上の非上場企業等を対象とし、取締役会及び監査役会における男女それぞれの比率について、2014年1月1日までに20%、2017年1月1日までに40%を達成することとされました。達成できない場合、取締役や監査役への報酬の一部が停止されるといったペナルティもあります。

この制度によって、女性の役員比率は、45%を超える水準まで上昇しました。

また、最近の動向として、昨年12月に新たな法案が可決しており、その中では、従業員1,000人以上の企業を対象として、役員より下の幹部社員(上級管理職、管理職等)に占める女性割合について、2027年までに30%、2030年までに40%を達成することとされています。対象企業は、一定の猶予期間を経て達成できない場合には、罰金が科されるといったペナルティもあります。


○ドイツ

2001年に指導的立場の女性比率の向上について、政府と使用者団体が協定を結び、企業の自主的な取組を進めていましたが、2011年の段階で取締役の女性比率が低い水準にとどまっている状況を受け、2015年に「女性の指導的地位法」が制定され、監査役会にクオータ制が導入されました。

ドイツの企業における監査役会は、取締役の選解任などの権限があり、監査役会の女性比率を向上させることで、取締役等への女性登用の増加につなげるという観点で、まず監査役会に女性のクオータ制が導入されました。

具体的には、上場大手108社を対象とし、2016年以降、新たに監査役を選出する場合には、男女の比率をそれぞれ30%以上とすることが義務付けられました。毎年、その遵守状況の報告義務があるほか、男女の比率それぞれ30%以上を満たせない場合には、空席を維持しなければならないというペナルティもあります。

この制度の実施によって、2020年4月には監査役会の女性比率は35.2%まで上昇しています。

さらに、最近の動向として、本年1月から「第2次女性の指導的地位法」が施行され、その中では、①従業員数が2,000人超といった一定規模以上の上場企業に対し、取締役が3人以上の場合には少なくとも女性、男性をそれぞれ1人は選任すること、②政府が過半数の株式を保有する企業等にも対象を拡大する、といった内容が含まれています。


○ノルウェー

ノルウェーは世界で初めて企業役員への女性のクオータ制を導入した国です。

2002年の時点では、上場企業に占める女性比率は6%でしたが、2003年に法律を制定し、まずは国営企業について、取締役の女性比率を2005年7月1日までに40%という目標を設定し、企業が自発的に取り組むこととされました。また、2006年からは上場企業も対象となっています。具体的には、2007年末までに40%を達成することが義務付けられ、それができない場合には、会社名の公表のほか、最終的には企業の解散といった厳しいペナルティも設けられています。

国営企業については、2005年7月1日の時点では、取締役の女性割合は25%にとどまっていましたが、罰則が施行される2008年には、すべての上場企業について、全体として女性役員比率40%が達成され、2021年には41.5%となっています。


○イギリス

イギリスでは、企業役員のクオータを義務化する制度はありませんが、政府の委員会が数値目標を設定し、その進捗をフォローするとともに、取締役の性別構成の情報開示を義務化すること等により企業の取組を促すという方法がとられています。

具体的には、2011年に「デーヴィス・レビュー」によって、FTSE※2100の企業を対象として、2015年までに取締役の女性比率を25%以上とする目標を設定し、その目標が達成された後、2016年に「ハンプトン・アレキサンダー・レビュー」によって、FTSE350の企業まで対象を広げた上で、2020年までに取締役の女性比率を33%にするという目標を設定しました。これについても、2020年9月に、FTSE350の企業において、目標に未達の企業が約4割あったものの、対象企業全体の平均値で33%が達成されています。

また、ロンドン証券取引所では、本年4月、新たな上場ルールが制定され、プレミアム市場等の企業を対象に、取締役の女性比率40%以上の確保や、毎年の情報開示、未達の場合の理由の説明などが盛り込まれています。

※2 Financial Times Stock Exchange Share Index ロンドン証券取引所における株価指数。


○アメリカ合衆国

アメリカでは、国レベルでの企業役員のクオータ制はありませんが、証券取引所であるナスダックや、カリフォルニア州を始めとする各州において取組が進められています。

ナスダックについては、2022年8月から順次、全上場企業を対象に、取締役について女性から少なくとも1人の選任、その情報開示、また未達・未実施の場合はその理由を説明することが義務付けられています。適切な開示がなされない場合には、最終的には上場廃止というペナルティもあります。

アメリカでは州レベルにおいても取組が進んでおり、例えば、カリフォルニア州では、2018年に取締役へのクオータ制を導入しました。具体的には、カリフォルニア州に「主たる執行事務所」がある企業を対象とし、2019年末までに取締役に少なくとも女性1人の選任、また、2021年末までに、取締役の人数に応じた女性の選任が義務とされており、具体的には、取締役が6人以上の場合は3人以上の女性を、5人の場合は2人以上の女性を、4人以下の場合は1人以上の女性を選任することが求められています。これに違反した場合には罰金が科される制度となっています


男女共同参画局では、本年4月21日に開催した「男女共同参画会議 計画実行・監視専門調査会」(第15回)において、本稿で紹介した調査結果を報告し、議論を行いました。

今後も引き続き、諸外国の制度・施策等の情報収集を行いつつ、我が国における女性の企業役員等への登用拡大に当たっての諸課題について調査・分析を行うとともに、女性のキャリア継続や役員への育成・登用等を促進する取組を進めていきます。

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