「共同参画」2022年6月号

巻頭言

「クオータ制」導入が、日本を救う

「自然に任せていたら200年かかる」と1人の貿易産業大臣(男性)による強力なイニシアチブで企業の取締役会に4割を女性にするクオータ制の法律が施行されたノルウェー。約20年前の2002年のことだ。条件を満たさない会社は総会で解散決定するか裁判所により会社の解散が決定される。

経済界の強い反発があったドイツも、2015年に「自然の変化に任せていては90年かかる」と試算しクオータ法を成立させた。役員比率は男女共に30%以上にする義務が課され、女性が選出されない場合、男性は付けず空席を維持しなければならない。

米国もカリフォルニア州が2018年に法整備した。取締役総数が4人以下の企業は1人以上の女性取締役を、5人なら2人以上、6人以上なら3人以上を置く義務がある。違反すると足りない人数1人あたり10万ドル、約1200万円の罰金が課せられる。

米国ナスダック市場では、「取締役会多様性規則」が導入され、ジェンダー認識の分布、人種や民族の分布、LGBTQ+などの「取締役会多様性マトリックス」の公表を義務化。違反が継続すると上場廃止に至る。

そして英国。既に上場主要350社で取締役会に女性がいない企業はゼロになっているが更なる多様性確保のために取締役の40%以上を女性、少なくとも1人は白人以外。さらに会長やCEOやCOOなどの上級職に、少なくとも1人は女性とすることを求めることを金融行為規制機構(FCA)が決めた。

日本は、今動かなければ、グローバル社会での未来はない。雇用機会均等法が施行されてから35年以上経つが、男女格差は世界120位。自然には何も起きなかった。東京医大が入試で男性にゲタを履かせていたと大ニュースになったが、「成績で採用すると女性が多くなってしまう」と多くの企業は男性枠を決め、暗黙の男性クオータ制を長年続けている。なんとプライム市場に上場した企業の3割が、女性取締役ゼロと報告されている。

女性活躍は、取り組むべく1つの分野なのではなく、日本発展のための全ての課題解決に必要な横串の戦術である。経済、政治、教育、医療などどの分野においても「多様な視点」を入れることが組織を危機から救い、イノベーションを生み、成長へ導く。真の組織内ダイバーシティの指数を出す「ダイバーシティインデックス」でも多様な人財採用は重要な調査項目。世界では、取引先、サプライチェーンのダイバーシティを確認する動きも出てきており、投資も ESG企業に流れるようになっている。

取締役を男女それぞれを4割以上にしよう。課長以上の管理職も男女ともに4割以上に。そして入札を含め、発注先・取引先の10%以上を女性が経営する会社にしよう。日本は世界トップクラスの教育を受けた女性たちがいる。女性を含めた国民一人ひとりの能力を活かす以外、日本の発展はない。

グローバル社会から孤立するのか。それとも日本の国力を発揮するのか。今クオータ制をとりいれずして、日本の活性化は当分起きないだろう。

株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長 佐々木かをり
株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長
佐々木かをり

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