「共同参画」2022年5月号

特集3

女性の役員への登用に関する課題と取組事例
内閣府男女共同参画局推進課

1 調査の目的

我が国の上場企業の女性役員数は着実に増加していますが、女性役員は社外役員が多いなど、男性役員とはキャリアが異なることが多くあります。企業には、女性の育成・登用を着実に進め、管理職、更には役員へという女性登用のパイプラインを構築することが求められています。

本調査は、現状、国内企業において女性役員の登用が進んでいない原因を調査するとともに、国内企業における女性社員の育成や役員登用等に関する取組事例を収集し、発信することで、我が国の企業における役員への女性の登用に係る取組を推進することを目的として実施しました。


調査概要

■調査内容
役員への女性の登用を推進するため、女性役員の社内登用に関する課題認識を調査するとともに、社内取締役に占める女性割合の高い企業における既存の人事慣行の見直し事例や人材育成等の取組事例を調査しました。

■調査時期
2022年1月~2月

■調査方法
国内上場企業50社(①役員に女性がいない又は役員に社内登用の女性がいない企業、②15年以上在籍し取締役に就任した女性がいる企業)に対してアンケート調査を実施しました。


2 女性の役員の社内登用に関する主な課題

役員に女性がいない又は役員に社内登用の女性がいない企業に対し、女性の役員の社内登用に関する課題についてアンケート調査を実施したところ、主な課題として以下の回答がありました(カッコ内は回答企業の業種)。


■役員候補の育成に関する課題

結婚・出産といったライフイベントを経験する前の社員において、管理職登用に対する漠然とした不安感があり、女性社員が男性社員に比べて管理職への登用に対して消極的になってしまう。(鉄鋼)
近年は女性の総合職は増えたものの、上位職のロールモデルが少ない。(その他金融業)

■ワークライフバランスに関する課題

一部の業務において、ワークとライフとの両立が難しいことから、家庭を主に担う女性が昇進に躊躇しがちになる。(サービス業)

■性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する課題

年齢の高い男性の本部長が候補者を選定しているケースが多いため、女性候補者を必ず含めているが、男性目線による候補者選定になっている懸念がある。(小売業)

■その他

各職場でリーダーとして活躍する女性を増やすため、女性採用の強化に努めているが、採用のターゲットとしている理系学部の学生の女性比率が低く、採用における女性比率を向上させることが困難。(輸送用機器)
勤務時間が長くなる傾向の部署には男性が多く、男性の方が多い傾向のある部署と、女性の方が多い傾向のある部署が出来てしまう。(情報・通信業)


3 女性の役員の社内登用を行っている企業の主な取組事例

15年以上在籍し取締役に就任した女性がいる企業に対して、女性を役員へ社内登用するための取組についてアンケート調査を実施したところ、主な取組として以下の回答がありました。

■役員候補の育成に関する取組M

部長・室長・店長には、自身の後継者の候補者に男性と女性を含めてもらうことで、女性の登用・育成に関する意識を醸成するとともに、マネジメント業務を行うライン課長等への女性の登用を促進
女性特有のライフイベントや健康に対する課題への対応や、個性を生かしたリーダーシップの習得を目的として、女性のみを対象とした研修を実施
役員候補者の女性を経営者に近いポストに配属し、経験や知見を蓄積する機会を確保
管理職資格のない社員に、期間限定で「仮免許」を発行し、管理職の業務にチャレンジできる制度を導入し、20~30代の早い段階でマネジメント経験を積むことにより、育休等から復帰した後の活躍につなげる
次世代の幹部候補を育成する「経営塾」を開講。女性の取締役を塾長とし、すべての回に会長、社長が参加。コミュニティの形成や目標形成を理解した後、経営に必要なリーダーシップやリテラシーを習得する

■ワークライフバランスに関する取組

キャリアプランやライフイベントに応じて多様な働き方ができるようエリア総合職に複数の制度を導入
ライフイベントに柔軟に対応できる制度として、復職制度や、労働時間・日数を限定した勤務制度を導入
職場に家族を招待し、家族やスタッフ同士の交流を図ることで、互いを理解し、ワークライフバランスの推進を図るイベントを開催
社長とのミーティングや提案により得られた従業員の声を基に、両立支援制度を拡充

■性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する取組

管理職・女性社員を対象としたアンコンシャス・バイアス解消のための研修を実施。女性の役員が登壇し、社内でカスタマイズしたテキストを使い、事例を用いて説明することにより効果を高めている。

■その他の取組

社員のやりたいことを実現するためのプロジェクト制度を導入
経営トップが、女性が活躍することの効果などを情報発信
女性活躍に向けた取組や目的を「見える化」するため「ダイバーシティ推進方針」を策定し、各種施策や取引先との接点で活用
社内広報誌において、キャリアアップの好事例などの情報を発信

男女共同参画局では、こうした調査結果を広く発信することで、企業における役員への女性の登用に係る取組を推進していきます。


本調査の詳細は男女共同参画局ホームページにも掲載しています。
ぜひ御覧ください。
https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/yakuin_r03.pdf

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