「共同参画」2022年2月号

巻頭言

人生100年時代の男女共同参画

「人生100年時代」という言葉がよく使われるようになってきました。1960年の平均寿命は男性67歳、女性73歳、60年後の2020年には男性82歳、88歳に延びています(1歳未満四捨五入)。今の若者の半数は100歳を迎えるという予測もあります。

この変化は、ただ単に老後の期間が延びるという事を意味しません。人生のあり方の大きな変化が伴っています。例えば、1920年生まれの人は、98%が結婚し、離婚も10組に1組程度でした。しかし、今の若者の生涯未婚率は、25%程度、また3組に1組が離婚を経験すると予測されています。ということは、結婚して離婚せずに高齢を迎える若者は、半数程度になってしまうのです。

昭和の時代なら、夫は正規雇用で働いて、妻は専業主婦かパート、夫が退職後は年金で暮らし、配偶者や子供に世話になるという人生を大多数の人が経験できたでしょう。しかし、今では、独身で一生を過ごす人、一人で子供を育てる人も増えています。また、結婚の約3分の1はどちらかが再婚であるように中高年結婚も増え、同性で一緒に暮らし子を育てている人もいます。家族のあり方は、急速に多様化しています。

働き方も多様化しています。女性が育児中も働き続ける条件が整ってきている反面、男性でも正規雇用でない人が増えています。フリーランスや起業するなど、生涯にわたって様々な働き方を経験する人も出てきました。そして、「第二の人生」と言われるように、老後の長い期間をどのように生活していくかが、課題となっています。

このような、多様化し複雑化する人生を生き抜くためには、男女とも生涯にわたって仕事能力や生活能力をつけ、何かあったときに(もしくは結婚など期待するものができなかった時)対応できる力をつける必要があります。また、政府や企業など、社会も様々な家族形態や雇用形態を認め、全ての人が希望をもてる人生を築けるようにサポートしていく事が求められます。

「ライフシフト 100年時代の人生戦略」の著者(スコット&グラットン)は日本語版の序文で、「世界でいち早く長寿化が進んでいる日本は、他の国のお手本になれる」と書いています。ただ、他の国の「お手本」になるのか「反面教師」になるのかは、男女共同参画の進み具合にかかっていると私は思っています。

中央大学・文学部・教授 内閣府「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」座長山田昌弘
中央大学・文学部・教授
内閣府「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」座長
山田昌弘

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