「共同参画」2021年10月号

特集1

令和3年度
性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査結果
内閣府男女共同参画局総務課

内閣府男女共同参画局では、第5次男女共同参画基本計画(令和2年12月25日閣議決定)及び重点方針2021に基づき、性別による固定的役割分担に関する無意識の思い込み、いわゆるアンコンシャス・バイアスの解消に取り組んでいます。

この度、アンコンシャス・バイアスについて家庭・コミュニティシーン、職場シーンに焦点を当てた測定項目を設定した上で、世代間での意識の差や決めつけられた経験等の調査を実施いたしました。

調査対象は、20代から60代までの10,330人(男性5,069人、女性5,165人、その他96人)とし、世代によるアンコンシャス・バイアスの意識の差や、同世代でも性別によっての違いはあるか、といったことなどを調査しています。

調査の中で、各設問中「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の選択肢を選択した割合がアンコンシャス・バイアスの割合ということになります。以下、具体的に見ていきます。


1 性別役割意識(全体)

本調査では、家庭・コミュニティシーンと職場シーンでの性別役割、その他性別に基づく思い込みの36の測定項目について、最初に自分の考えにあてはまるかどうかを聞き、その後、性別に基づく役割や思い込みを決めつけられた経験を聞きました。

測定項目について、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」の4段階で聞いたところ、1つでも「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した者の割合は回答者全体の76.3%で、多くの人にアンコンシャス・バイアスがあることがわかりました。

一方で、「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」という言葉の認知度は、21.6%に留まっています。

下の表は、性別役割意識について、男女別の上位10項目について調べた結果です。男女共に、上位2項目は、5割前後の高い割合となりました。上位10項目を男女で比較すると、全体的に男性の方が高い割合となりました。測定項目全体の中で男女差が大きく開いたのは、「デートや食事のお金は男性が負担すべきだ」(男性37.3%、女性22.1%)、「男性は人前で泣くべきではない」(男性31.0%、女性18.9%)、「家を継ぐのは男性であるべきだ」(男性26.0%、女性15.6%)、「男性なら残業や休日出勤をするのは当たり前だ」(男性20.2%、女性10.3%)といった「男性は~すべきだ」の4項目でした。


性別役割意識


2 性別役割意識(シーン別)

下の表は、性別役割意識を、家庭・コミュニティシーン、職場シーンにおいて男女それぞれ上位5項目についてみたものです。家庭・コミュニティシーンでは、女性より男性の方が、仕事と家事の分担に関して性別役割意識が強い結果となりました。

(1)性・年代別~50-60代の男性傾向~

年代別では、男性50-60代で、性別役割意識が強く、例えば、「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」の項目では、男性20代・30代は約41%が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答したのに対し、男性50代は55.7%、60代は63.5%と、男性でも年代間で大きな意識の差が見られました。この世代は、家庭では父親として、職場では管理職として若い世代に影響力のある立場であることが多く、アンコンシャス・バイアスの気づきの機会を提供し、理解を促すことで、アンコンシャス・バイアス解消への一歩となることが考えられます。

(2)性・年代別~20-30代の男女の差~

20-30代の若い世代における男女の意識にギャップがあることもわかりました。「共働きでも男性は家庭よりも仕事を優先するべきだ」では、20代で8.4ポイント差、30代で7.9ポイント差、「家事・育児は女性がするべきだ」では、20代で6.8ポイント差で男性の方が高い割合となりました。若い世代の男女における性別役割意識の差は、結婚生活における価値観の違いとなることになるとも考えられ、晩婚化や未婚率に影響している可能性があります。

(3)職場~性別・役職別の差~

職場シーンに目を移してみると、職場の役割分担に関する項目は、全ての年代において、女性より男性の方が性別役割意識が強く、「同程度の実力なら、まず男性から昇進させたり管理職に登用するものだ」では、特に20-30代男性の性別役割意識が強い結果となりました。他に、「男性なら残業や休日出勤をするのは当たり前だ」「女性の上司には抵抗がある」でも、年代に関わらず男女間で意識の差が大きくなりました。役職別でみると、役職が高いほど、性別役割意識が強い傾向がみられました。ここでは、20-40代と50-60代の「役員・部長(代理)クラス」など役職段階での比較もしていますが、20-40代の方が、性別役割意識が強い傾向がみられました。

性別役割意識〈シーン別〉


3 性別に基づく役割や思い込みを決めつけられた経験

下の表は、「直接言われた経験」と「言動や態度から感じた経験」についての上位10項目となります。全体的に「直接言われた経験」よりも「言動や態度から感じた経験」の方が、割合が高くなっています。また、男性より女性の方が、性別に基づく役割や思い込みを決めつけられた経験があると回答している割合が高くなっています。

直接言われた経験では、「女性は感情的になりやすい」など感情に関する考えも上位に入りました。

女性についてみると、「親戚や地域の会合で食事の準備や配膳をするのは女性の役割だ」「家事・育児は女性がするべきだ」「受付、接客・応対(お茶だしなど)は女性の仕事だ」「職場での上司・同僚へのお茶くみは女性がする方が良い」の4項目について、「直接言われた経験」も「言動や態度から感じた経験」も多い結果となりました。

性・年代別でみると、特に、50‐60代の女性で性別に基づく役割や思い込みの決めつけを感じてきた割合が高くなっています。

性別に基づく役割や思い込みを決めつけられた経験


直接ではないが言動や態度からそのように感じたことがある


4 性別役割を感じさせた人

性別役割について、「直接言ったり、言動や態度から感じさせた」人をみていきます。

男性に性別役割を感じさせたのは、「父親」が36項目中27項目、「男性の知人・友人」が同25項目と非常に多く、家庭コミュニティシーン、職場シーンにかかわらず影響を与えていることがわかりました。

職場シーンにおいては、男女とも「男性の職場の上司」から性別役割を感じさせられた経験があるとの回答が多くありました。

女性に感じさせた中には、「配偶者・パートナー」からも性別役割を感じさせられたとの項目数も多く上げられています。

全体的に、男性側から性別役割意識を感じさせられたとの回答が多い結果となりました。


性別役割を言ったり、言動を感じさせた人


5 地域における性別役割経験

成長過程における環境が与える影響を見るために、中学入学時点における居住地と現在の居住地の移動の有無別に、20-30代女性の意識と「直接言われた」経験についてみたのが次表です。

表中、「移動あり_直接」と「移動なし_直接」を比較すると、移動あり(地元を離れた層)の方が、移動なし(地元を離れなかった層)よりも、家庭・コミュニティシーンにおいて「直接言われた」経験の割合が高くなりました。

性別役割の経験


第5次男女共同参画基本計画の「第3分野 地域における男女共同参画の推進」の中で、「近年、若い女性の大都市圏への転入超過が増大しており、また、地方の都市部に周辺の地域から人口が流入する状況もみられる」「地方出身の若い女性が東京で暮らし始めた目的や理由として、進学や就職だけでなく、「地元や親元を離れたかったから」といったことが挙げられている。」との記載がありますが、アンコンシャス・バイアスが理由の一つとなっていると考えられます。


6 メディアにおける性別役割の影響

36の測定項目について、どのような態様で経験したかを聞いたところ、「直接言われたり聞いたりした」との回答よりも「メディアで見た」との回答割合の方が高く、メディアの影響も大きいことがわかりました。

情報の発信側も、発信内容が性別による固定的役割分担や無意識の思い込みのあるものとなっていないかという観点で検討し、情報の受け手に対し、アンコンシャス・バイアスの醸成、再生産をしないようにしていく必要があると思われます。


調査結果はこちらで閲覧、ダウンロードできます
https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/seibetsu_r03.html


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