「共同参画」2021年10月号

巻頭言

性別による無意識の思い込みに関する調査研究に関わって
アンコンシャス・バイアスはみんなの問題

男女共同参画社会を実現するための重要なキーワードのひとつ、「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見・思い込み)」への関心が高まっています。

アンコンシャス・バイアスは、「自分では気づいていないものの見方やとらえ方のゆがみや偏り」を言います。物事を大枠でとらえ瞬時に判断し効率的に処理するうえでは役に立つことも多く、誰もが持っているものであり、それ自体はよい、悪いというものではありません。けれど、アンコンシャス・バイアスに気づかずにいると、自分の正しさを絶対だと思い込み、勝手に決めつけたり、価値観や行動の押しつけにつながり、相手を傷つけたり関係性に悪影響を与えたり、時には自分自身の可能性を狭めてしまうことにもなりかねません。女性活躍推進の制度や仕組みをいくら整備してもなかなか望む成果につながらないのは、アンコンシャス・バイアスへの対応が不足しているからだとも言えます。

アンコンシャス・バイアスが起きる要因は脳の認知機能にありますが、生育過程における経験や見聞きしたことなども強く影響しています。古くから続く慣習やしきたりの中には、今の時代にあわなくなったものも多く、価値観やライフスタイルが多様化する中で違和感を持つ人も増えています。

このたびの「性別による無意識の思い込みに関する調査研究」では、女性に家庭責任や補助的役割を求めるアンコンシャス・バイアスが根強くある一方、「男は仕事をして家計を支えるべきだ」「共働きでも男性は家庭よりも仕事を優先するべきだ」との意識も、全体的に強いことが明らかになりました。特に20代では男女差が大きく、女性は否定的な一方、男性により強くその傾向がみられました。さらに、誰から言われたかを聴くと「父親」や「男性の知人・友人」からが多くなっています。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事の西村創一朗さんは、「男性が稼ぎ頭として家族を支えるべき」という固定観念を「大黒柱バイアス」と呼んでいます。男性が、自分自身に対して大黒柱バイアスを強く求めることが、「女性は家事・育児・介護を担うべき」という、女性に対する「家庭役割バイアス」を強化しているとも言えそうです。

アンコンシャス・バイアスは、あなたの、私の、みんなの問題です。まず自分の中にある「内なるアンコンシャス・バイアス」に気づき、それにとらわれない、周囲に押しつけない、という意識を持つことが大切です。

今回の調査結果が、広く地域や企業・組織、教育現場の中で活用され、アンコンシャス・バイアスにとらわれず、誰もが活き活きと活躍できる社会を作る一助となることを期待しています。

㈱クオリア代表取締役社長 荒金雅子
㈱クオリア代表取締役社長
荒金雅子

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