「共同参画」2021年9月号

特集2

中学生向け理数系教育に関する指導者用啓発資料についての調査研究
内閣府男女共同参画局推進課

内閣府では、女子生徒の理工系への進路選択を促進するため、主として中学校の理数系教員を対象とした啓発資料、「男女共同参画の視点を取り込んだ理数系教科の授業づくり~中学校を中心として~」を作成しました。


指導者用啓発資料表紙

本啓発資料は、男女共同参画の視点の必要性、無意識に持っていた固定概念・考え方や言動への気付き、男女共同参画に配慮した理数授業の事例、教員のアドバイスをきっかけに理数系に進んだ女性の事例等から構成されています。


第1章 本冊子作成の背景

中学校の理数系教科の授業における男女共同参画の視点への配慮が重要である背景として、下記の観点をまとめています。

子どもたちの将来の仕事において、理数系能力が必要とされていること
●<中学生の時期に女子の理数離れが顕著に進んでいること
日本の女子中学生の理数系の成績は国際的に見ても高い水準であり、成績ではなく環境が、女子の理数離れの要因であること

すなわち、「理工系の進路・職業選択は主に男性がするものである」という固定概念や、女性のロールモデルの少なさが、女子の理数離れを招いていると考えられています。


第2章 自分を知ろう

この章は、教員が日頃の授業等のふるまいの中で、無意識に持っていた固定概念・考え方や言動について気付きを与える内容になっています。例として、テストの点数の良かった女子生徒に、「女子なのに数学/理科ができて、すごいね!」と誉め言葉を掛けるケースを挙げています。こうしたふるまいは「好意的性差別発言」と呼ばれ、女子は理数系が苦手だという固定概念からくるもので、ほめているつもりでも女子生徒のその教科への意欲を低下させることがあるとされています。また、理科の授業において、実験の操作は男子、記録は女子という役割分担が自然とできており、それに任せてしまう例も挙げています。


第3章 日頃のふるまいを振り返ろう

この章では、誰もが持つアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)に自ら気付き、男女共同参画の視点に配慮した授業の実現に向けたふるまいや生徒との接し方について改める手法として、海外の教員研修プログラム等を紹介しています。

指導者用啓発資料1


第4章 理数授業 事例紹介

この章では、男女共同参画の視点に配慮した数学・理科の授業を行っている中学校教員に取材を行い、工夫をしている取組の事例や、その取組を進めるきっかけ、取組の成果等について紹介しています。

ある数学の授業における事例では、数学が得意な女子生徒の「数学が日常でどのように使われているのかを知ることができたら、みんなもっと数学に興味を持つと思う」という発言をきっかけに、日常の中で数学がどのように使われているかに焦点を当てた題材や、女子生徒の取組姿勢を踏まえた指導法を考えて、授業に取り込むようにしているとのことです。「東京タワーと東京スカイツリーが重なって見える場所はどこか?」を解明する授業や、じゃんけんの結果をグラフ化することで確率の正規分布を学ぶ授業、生徒が興味関心のあるテーマを自由に選択・研究してまとめる「数学新聞」の作成の授業等、生徒が身近に感じる題材を授業に取り込むことで、女子生徒も積極的に授業に参加し、その変化が男子生徒にも影響を与え、結果としてクラス全体の学習意欲を向上させているように思えるとのことです。

指導者用啓発資料2


第5章 理系選択の未来

最後の章では、理工系の職業に従事し、活躍している3名の女性ロールモデルのキャリア、プライベートとのバランス、中高生と教員それぞれへのメッセージ等を紹介しています。

あるロールモデルの女性は、中学生時点では仕事に関する明確な夢や目標はなかったものの、教員からの「近年はITの発展により情報工学科が注目されていて、就職率も高い」というアドバイスをきっかけに理系の進路選択を決意したと話しています。中学生へは何でも積極的にチャレンジすることを呼びかけるとともに、教員の方へは生徒のチャレンジへの後押しをお願いしたいとメッセージを送っています。

指導者用啓発資料3


本啓発資料は、下記リンクより閲覧、ダウンロード可能です。
https://www.gender.go.jp/c-challenge/pdf/keihatsu.pdf


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