「共同参画」2021年6月号

特集2

令和2年度
政治分野・経済分野における調査研究
~女性の政治参画への障壁等に関する調査研究~
~ジェンダー投資に関する調査研究~
内閣府男女共同参画局推進課

Ⅰ 女性の政治参画への障壁等に関する調査研究

令和2年度に、内閣府男女共同参画局において、ハラスメントを含む女性の政治参画への障壁等について調査を実施しましたので、概要を御紹介します。


1.調査の概要

本調査では、①立候補を検討したが断念した者に対するアンケート調査と、②男女の地方議会議員に対するアンケート調査の2種類の調査を実施しました。

①立候補を検討したが断念した者に対するアンケート調査では、インターネットモニターの中から、選挙に立候補しようと考え、具体的な行動を起こしたが断念した者を抽出して調査を実施しました(回答者994人(男性500人、女性494人))。②地方議会議員に対するアンケート調査では、地域や議会の種類等を考慮して抽出した男女の地方議会議員を対象として調査を実施しました(回答者5,513人(男性3,234人、女性2,164人))。


2.立候補を検討したが断念した者に対するアンケート調査結果

まず、①立候補を検討したが断念した者に対するアンケート調査結果について御紹介します。立候補を断念した理由については、表1のとおり、上位3項目は、男女共に、「立候補に係る資金の不足」、「仕事や家庭生活のため、選挙運動とその準備にかける時間がない」、「知名度がない」となりました。上位10項目についてみると、「自分の力量に自信が持てない」、「当選した場合、家庭生活との両立が難しい」等で男女の差が大きく、これらが女性にとって障壁となっていることが分かります。

表1立候補を断念した理由


立候補を検討している時または立候補準備中に、有権者や支援者、議員等からいずれかのハラスメントを受けたと回答した者は、全体の61.8%、男性の58.0%、女性の65.5%となりました。ハラスメントの内容については、表2のとおり、女性の上位3項目は、「性別に基づく侮辱的な態度や発言」、「SNS、メール等による中傷、嫌がらせ」、「年齢、婚姻状況、出産や育児などプライベートな事柄についての批判や中傷」となりました。

表2立候補検討・準備中に受けたハラスメント行為


また、ハラスメントをなくすために有効な取組としては、表3のとおり、女性では「選挙管理事務局、政党、議会事務局等での相談窓口の設置」が最も多くなりました。


表3有効な取組


3.男女の地方議会議員に対するアンケート調査結果

次に、②男女の地方議会議員に対するアンケート調査について御紹介します。立候補を決める段階から選挙期間中の課題については、表4のとおり、女性の上位3項目は、「知名度がない」、「仕事や家庭生活(家事、育児、介護等)のため、選挙運動とその準備にかける時間がない」、「選挙運動とその準備の方法が分からない」となりました。上位10項目についてみると、「性別による差別やセクシャルハラスメントを受けた」、「自分の力量に自信が持てない」、「知名度がない」、「地元で生活する上で、プライバシーが確保されない」等で男女の差が大きく、これらが女性にとって障壁となっていることが分かります。

表4立候補を決める段階から選挙期間中の課題


議員活動を行う上での課題については、表5のとおり、女性の上位3項目は、「専門性や経験の不足」、「地元で生活する上で、プライバシーが確保されない」、「性別による差別やセクシャルハラスメントを受けることがある」となりました。上位12項目についてみると、「性別による差別やセクシャルハラスメントを受けることがある」、「議員活動と家庭生活との両立が難しい」等で男女の差が大きく、女性にとって障壁となっていることが分かります。

表5議員活動を行う上での課題


議員活動や選挙活動中に、有権者や支援者、議員等からいずれかのハラスメントを受けたと回答した者は、全体の42.3%、男性の32.5%、女性の57.6%となりました。ハラスメントの内容については、表6のとおり、女性では「性的、もしくは暴力的な言葉(ヤジを含む)による嫌がらせ」が最も多くなりました。

表6議員活動や選挙活動中に受けたハラスメント行為


また、ハラスメントをなくすために有効な取組の上位3項目は、表7のとおり、全体、男女別共に、議会による「議員向け研修」、「ハラスメント防止のための倫理規定の整備」、「相談窓口の設置」となりました。

表7有効な取組


立候補断念者の女性の「立候補を断念した理由表1」と、議員になった女性の「立候補を決める段階から選挙期間中の課題表4」の上位5項目を比較すると、「立候補に係る資金の不足」、「当選の見込みが低く感じられた」、「家族の理解やサポートが得られない」が、議員女性の上位5項目に入っていない一方で、立候補断念者の女性の上位5項目に入っており、これらが障壁になっていることがうかがわれます。

また、ハラスメントの状況について、立候補断念者表2と地方議員表6をみると、多くの項目で男性よりも女性の方がハラスメント行為を受けたと回答した割合が高くなっています

今後、内閣府男女共同参画局としては、本調査結果を幅広く周知し、政党や国会、地方議会において、政治分野における男女共同参画の推進のための議論が進むことを期待します。また、ハラスメント防止対策が進むよう、①ハラスメント防止研修に活用できる教材の作成、②地方議会におけるハラスメント防止研修の実施状況の「見える化」等に取り組んでまいります。

調査結果の詳細は男女共同参画局ホームページに掲載しています。
ぜひご覧ください。
https://www.gender.go.jp/policy/seijibunya/seijibunya_shiryo.html

Ⅱ ジェンダー投資に関する調査研究

近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)を投資判断に組み込み、長期的な投資リターンの向上を目指す、いわゆるESG投資が世界的に拡大しています。また、SDGs達成のための次のステップとして、社会的及び環境的な影響をより重視した、インパクト投資が欧米を中心に広がりを見せています。その中でも、企業における女性の活躍の状況や、SDGsのゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」の達成を企図した「ジェンダー投資」が着目されつつあります。

本調査研究は、 機関投資家へのアンケート調査及びヒアリング調査により、国内外におけるジェンダー投資に関する事例収集を行い、その分析を通じて我が国におけるジェンダー投資を推進することを目的として行いました。

ここでは主な調査結果を御紹介します。


1.多くの機関投資家が女性活躍情報に関心を持っている

投資判断に女性活躍情報を活用している機関投資家は、回答者の半数以上に上りました。また、投資判断に女性活躍情報を活用していると回答した機関投資家のうち、女性活躍情報は企業の業績に長期的に影響があると考える機関投資家は約9割となりました。

また、活用する女性活躍情報として、女性役員比率や女性管理職比率が多く挙げられた他、女性活躍に関する取組やその方針を参考にしているという回答も多く見られました。


2.ジェンダー投資は、現在は小規模だが、今後の増加が考えられる

ジェンダー投資を行っている機関投資家は回答者全体の2割弱であり、投資規模も全体から見ると小規模なものに留まっています。まだ市場としては限定的ではありますが、他方、ジェンダー投資の今後の方向性に関する質問では、「現在は取り組んでいないが関心はある」、「現在は取り組んでいないが今後検討したい」の回答と合わせると半数を占めており、今後、ジェンダー投資に参入する機関投資家が増加することが考えられます


3.今後ジェンダー投資を増やしていくには

今後ジェンダー投資を拡大するための課題として機関投資家からは、「社会におけるジェンダー投資への認知度の向上」、「アセットオーナーの関心の高まり」に加え、「女性活躍情報の入手」という声も多くありました

委員として御参加いただいた専門家の方々からは、企業価値向上の観点から、女性活躍を含む人的資本への投資及びその活用と戦略という点が注目されており、企業の更なる情報開示が望まれる等の意見がありました。

今後、内閣府では、本調査結果を上場企業に対して周知するなど、広く周知・広報を行うことにより、企業における女性登用の取組を促進してまいります。


投資判断や業務において女性活躍情報を活用する理由


ジェンダー投資の今後の方向性


調査結果の詳細は男女共同参画局ホームページに掲載しています。
ぜひご覧ください。
https://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/r2gender_lens_investing_research.html

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