「共同参画」2021年2月号

特集1

第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~が策定されました
内閣府男女共同参画局推進課

1.はじめに

世界経済フォーラムが発表している最新の「ジェンダーギャップ指数」において、我が国は153カ国中121位、先進国でも最低水準という結果となっています。このような結果となっているのは、女性議員比率の低さに代表される政治分野の取組の遅れと、いわゆる管理職の女性比率の低さに代表される経済分野の取組の遅れが主な要因です。

我が国においても、男女共同参画・女性活躍に向けた取組を着実に推進しており、一定の進捗はしています。しかし、この順位は、諸外国の方がさらにスピード感を持って取り組んでおり、日本が相対的に遅れてしまっていることを示しています。男女共同参画はそれ自体が最重要課題ですが、グローバル化が進む中、世界的な人材獲得や投資を巡る競争を通じて日本経済の成長力にも関わります。令和2年12月25日に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~」(以下「5次計画」という。)は、こうした危機感の下、策定しました。


2.5次計画の特徴

5次計画の特徴として、次の3点が挙げられます。

  1. 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に関する視点を盛り込んだことです。新型コロナウイルス感染症は、DVや性暴力、雇用などの面において、女性により大きな影響を与えています。一方で、これを契機にオンラインの活用が広まるなど、働き方・暮らし方に新たな可能性ももたらしています。こうした問題意識を踏まえた記載を盛り込んでいます。
  2. これまで男女共同参画に深く関わってこられた方々だけでなく、より多くの幅広い方々に読んでいただき、男女共同参画の裾野を広げられるよう、分かりやすい文言や表現にするよう努めたことです。また、総論に当たる第1部を、データ等を多数引用しながら充実させるとともに、第2部の各分野における「基本認識」の記述を厚くし、基本計画の考え方をより理解していただきやすくなるよう工夫しています。
  3. 計画の策定プロセスそれ自体です。今回、若者たちの意見を含め、パフリックコメントでは約5600件、オンラインで2回開催した公聴会では約550件と、第4次男女共同参画基本計画の際の約1.6倍の御意見をいただきましたが、これらの御意見を可能な限り反映するよう努めています。例えば、若者から非常に多くの意見が寄せられた、「就活セクハラの防止」について、内容を充実させるとともに、処方箋なしに緊急避妊薬を適切に利用できるよう検討することを新たに盛り込んでいます。

以下では、第2部の概要を御紹介します。


3.「第2部 政策編」の概要

第2部の政策編は、I~Ⅲの3つの政策領域に加え、これらの取組を総合的かつ計画的に推進するための「Ⅳ 推進体制の整備・強化」で構成されています。


Ⅰ あらゆる分野における女性の参画拡大

第1分野 政策・方針決定過程への女性の参画拡大

2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう取組を進め、さらにその水準を通過点として、2030年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りのないような社会となることを目指し、①政治分野では、政党に対し、政治分野における男女共同参画の推進に関する法律の趣旨に沿って女性候補者の割合を高めることを要請することや、地方議会における議員活動と家庭生活との両立やハラスメント防止についての取組の促進など、②司法分野では、最高裁判事も含む裁判官全体に占める女性の割合を高めるよう裁判所等の関係方面に要請することなど、③経済分野では、企業における女性の参画拡大や女性の能力の開発・発揮のための支援などについて記載しています。

第1分野 主な成果目標


第2分野 雇用等における男女共同参画の推進と仕事と生活の調和

働きたい人全てが性別に関わりなくその能力を十分に発揮し生き生きと働くことができる環境づくりを図るため、①男性が子育て等に参画できるような環境整備の一層の推進、②職場や就職活動における各種ハラスメントの防止や男女間賃金格差の解消、③積極的是正措置(ポジティブ・アクション)の推進等による職場における女性の参画拡大、④非正規雇用労働者の待遇改善や正規雇用労働者への転換に向けた一層の取組などについて記載しています。

第2分野 主な成果目標


第3分野 地域における男女共同参画の推進

固定的な性別役割分担意識等を背景に、若い女性の大都市圏への流出が増大していることから、女性にとって魅力的な地域を作っていく必要があること、地域における女性デジタル人材の育成など学び直しを推進すること、女性農林水産業者の活躍の推進、地域活動における男女共同参画の推進などについて記載しています

第3分野 主な成果目標


第4分野 科学技術・学術における男女共同参画の推進

研究職・技術職に占める女性の割合は増加傾向にあるものの、日本は16.6%と諸外国と比較して低水準にとどまっていることから、①科学技術・学術分野における女性の参画拡大、②性差の視点を踏まえた研究の促進、③男女の研究者・技術者が共に働き続けやすい研究環境の整備、④女子生徒の理工系進路選択の促進などについて記載しています。

第4分野 主な成果目標


Ⅱ 安全・安心な暮らしの実現

第5分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶

女性に対する暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であり、その予防と被害からの回復のための取組を推進し、暴力の根絶を図ることが重要です。また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、配偶者等からの暴力(DV)や性暴力の増加・深刻化が懸念されています。このため、①「性犯罪・性暴力対策の強化の方針(https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/measures.html)」に基づき、令和2年度から4年度を性犯罪・性暴力対策の「集中強化期間」として取組を推進すること、②DVや性暴力の被害者の相談支援体制強化、③生命(いのち)を大切にする、性暴力の加害者にならない、被害者にならない、傍観者にならないことを教える教育の充実を図ることなどについて記載しています。

第5分野 主な成果目標


第6分野 男女共同参画の視点に立った貧困等生活上の困難に対する支援と多様性を尊重する環境の整備

女性は、経済社会における男女の置かれた状況の違い等を背景として、貧困等生活上の困難に陥りやすく、特に、ひとり親世帯の相対的貧困率は48.1%(平成30(2018)年)となっています。このため、ひとり親家庭等への養育費の支払い確保のための取組などひとり親家庭等の親子が安心して生活できる環境づくりについて記載しています。また、多様な困難を抱える女性等に対する支援も重要であることから、高齢者、障害者、外国人等が安心して暮らせる環境の整備などについて記載しています。

第6分野 主な成果目標


第7分野 生涯を通じた健康支援

男女の健康を生涯にわたり包括的に支援するための取組について記載し、その中では、不妊治療の経済的負担の軽減や仕事との両立を支援するための環境を整備すること、処方箋なしの緊急避妊薬の利用について検討することなどを掲げています。加えて、医療分野における女性の参画拡大や、各中央競技団体における女性理事の目標割合(40%)達成に向けた取組支援、競技者に対するセクハラやパワハラの防止対策などについても推進することを記載しています。

第7分野 主な成果目標


第8分野 防災・復興、環境問題における男女共同参画の推進

大規模災害の発生は、全ての人の生活を脅かしますが、とりわけ、女性や子ども、脆弱な状況にある人々がより多くの影響を受けます。そのため、女性と男性が災害から受ける影響の違いなどに十分配慮された男女共同参画の視点からの災害対応が必須となります。その具体的な取組として、防災・復興に関する政策・方針決定過程への女性の参画拡大及び防災の現場における女性の参画拡大について記載するとともに、「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」(https://www.gender.go.jp/policy/saigai/fukkou/guideline.html)の活用徹底について記載しています。

第8分野 主な成果目標


Ⅲ 男女共同参画社会の実現に向けた基盤の整備

第9分野 男女共同参画の視点に立った各種制度等の整備

個人の働き方の多様化、家族形態が急速に変更していることを踏まえ、働く意欲のある全ての人がその能力を十分に発揮できるよう、また、様々な施策の効果が必要な個人に確実に届くよう、社会の諸制度を見直すこととしています。具体的には、社会保障制度について第3号被保険者を縮小する方向で検討することなどを記載するとともに、旧姓の通称使用拡大や、選択的夫婦別姓制度を含む夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、更なる検討を進めることなどについて記載しています。

第10分野 教育・メディア等を通じた男女双方の意識改革、理解の促進

「令和元年度男女共同参画社会に関する世論調査」によれば、社会全体における男女の地位の平等感について、「平等」と回答した者の割合は21.2%に過ぎません。背景には、固定的な性別役割分担意識や性差に関する偏見・固定観念、無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)があることが挙げられます。このため、地方公共団体や関係機関・団体と連携し、男女双方の意識改革と理解の促進を図る取組について記載しています。また、人々の意識を変えていく上で、教育は極めて重要な役割を担っています。初等中等教育機関の先生の男女比は半々であるにもかかわらず、校長などに占める女性は依然として少ない状況であることから、学校教育における政策・方針決定過程への女性の参画を促進する取組についても記載しています。

第9分野 主な成果目標


第11分野 男女共同参画に関する国際的な協調及び貢献

持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた連携及び推進に関する取組や女子差別撤廃条約の積極的遵守などについて記載するともに、4次計画以降、様々な国際会議でジェンダーが取り上げられるようになり、首脳級・閣僚級の国際合意が行われていることを踏まえ、G7やG20などにおける国際合意を確実に履行することや、我が国が国際会議の議長国となる場合にはジェンダー平等を全ての大臣会合でアジェンダとすることなどについても記載しています。


第10分野 主な成果目標


Ⅳ 推進体制の整備・強化

国内の推進体制の運営に当たっては、多様な主体との連携を図り、若年層など国民の幅広い意見を反映することについて記載しています。また、男女共同参画会議が内閣総理大臣の下で男女共同参画を強力に推進する国内本部機構として、5次計画の実効性を高めるために集中的に議論すべき課題や新たな課題について調査審議を行うことや、成果目標の達成状況についてEBPMの観点も踏まえ、計画中間年(2023年度目途)にフォローアップ及び点検・評価を実施することについて記載しています。さらに、男女共同参画社会の実現のためには、身近な地域における取組が重要です。男女共同参画の視点から地域の様々な課題を解決するため、①実践的活動の場として、また、②地域における女性リーダーの育成や男女共同参画・女性活躍のための意識改革・人材ネットワークの拠点として、さらには③男女共同参画の視点からの地域の防災力の推進拠点として、男女共同参画センターがその役割を果たしていくことが重要となります。このため、地域における男女共同参画センターの機能強化や支援などについても記載しています。


4.おわりに

5次計画に基づき、政府一丸となって、女性が直面している具体的な課題を一つ一つ解決し、「すべての女性が輝く令和の社会」の実現に向けた取組を推進してまいります。5次計画の概要や本体は内閣府男女共同参画局HPに掲載しておりますので、是非、御覧ください。

内閣府男女共同参画局HP
https://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/5th/index.html

第62回男女共同参画会議(令和2年12月25日)で答申を受ける菅内閣総理大臣
第62回男女共同参画会議(令和2年12月25日)で答申を受ける菅内閣総理大臣

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