「共同参画」2020年8月号

トピックス2

災害対応力を強化する女性の視点
-新たなガイドラインと令和2年7月豪雨での対応-
男女共同参画局総務課

はじめに

本年5月、地方公共団体の男女共同参画担当部局と防災・危機管理担当部局とが、女性の視点からの災害対応を行う際のガイドライン「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」を作成し、政策統括官(防災担当)と男女共同参画局長の連名で、都道府県知事・政令指定都市市長宛てに通知しました。

作成にあたり、有識者からなる検討会において、これまで被災した地方公共団体を始め、全国47か所へのヒアリング調査を踏まえ、議論を行いました。その後、検討会から示されたガイドライン案について、パブリックコメントを実施し、700件近いご意見をいただき、必要な反映を行いました。

ガイドラインの概要とそれに基づく取組についてご紹介します。

第1部 7つの基本方針

本ガイドラインの骨格となる7つの考え方を示しています。

災害は、地震、津波、風水害等の自然現象(自然要因)と、それを受け止める側の社会の在り方(社会要因)により、その被害の大きさが決まると考えられています。そのため、被害を小さくするためには、社会要因による困難を最小限にする取組が重要です。人口の半分は女性であり、女性と男性が災害から受ける影響の違いなどに十分に配慮された女性の視点の対応が行われることが、防災や減災、災害に強い社会の実現にとって欠かせません。

特に、災害時には、平常時における固定的な性別役割分担意識がより顕著に現れるとされています。したがって、平常時から災害対応へ女性の視点を反映させることが大切です。

7つの基本方針では、平常時からの取組の重要性に加え、女性は防災・復興の「主体的な担い手」であること(防災・復興の意思決定の場への女性の参画推進)、男女の人権を尊重して安全・安心を確保することなどを掲げています。

特に、ヒアリング調査の際に多く聞こえた「災害対応における男女共同参画担当部局や男女共同参画センターの位置づけを明確にしてほしい」という声を反映して、両者の役割を地域防災計画や避難所運営マニュアル等に位置付けることの重要性を打ち出しています。

この災害対応における男女共同参画担当部局等の位置付けの明確化については、令和2年5月の防災基本計画修正にも明記し、地方公共団体の取組を促しています。

7つの基本方針

第2部 段階ごとに取り組むべき事項

災害対応を「平常時の備え」、「初動段階」、「避難生活」、「復旧・復興」の4つの段階に分け、それぞれの段階ごとに女性の視点から取り組むべき事柄を記載しています。地方公共団体において、男女共同参画担当部局のみならず、防災・危機管理担当部局の方々が使いやすいよう、およそ1ページに1つのテーマを取り上げ、それぞれのページの頭には、チェックリスト形式でそのテーマのポイントを示しました。また、写真やグラフも多く採用し、わかりやすいものとしました。

次ページより、詳細を説明します。

第2部 段階ごとに取り組むべき事項

<平常時の備え>

 第1部「7つの基本方針」(1)に掲げたとおり、本ガイドラインでは、『平常時からの男女共同参画の推進が防災・復興の基盤となる』、という考え方を大切にしています。

このパートでは、職員の体制・研修に関する事項から、地域防災計画や避難所運営マニュアルに本ガイドラインに掲載されている内容を盛り込むよう努めること、さらに、女性団体をはじめとする市民団体等との連携まで、平常時に取り組むべき内容を幅広く取り上げ、地方公共団体の取組を促しています。

<初動段階>

「災害対策本部」のページでは、地方公共団体の災害対策本部の下部組織が構成される場合には、そこに男女共同参画担当部局や男女共同参画センターが組み込まれることの重要性を強調しています。また、災害対策本部の構成員のうち、男女共同参画を所管する構成員が、会議の場で女性の視点からの情報提供や問題提起を行うことも求めています。

また、「女性に対する暴力の防止・安全確保」について柱立てしました。災害時には、避難所などのプライバシーを守ることが難しいとされる環境において、性暴力が起こることがあります。その対策として、熊本地震や九州北部豪雨災害の際に行われた、防犯ブザーの配布や、DVに関する相談カードを避難所の女性用個室トイレやシャワー室に設置する取組を紹介しています。

暴力の被害を訴えることは、平常時でも難しいうえに、災害時にはより被害者が声をあげにくいということが指摘されています。そのことを踏まえた対応が欠かせません。

<避難生活>

このパートでは、特に避難所について、「避難所の開設・運営」、「避難所の環境整備」、「避難所の生活環境の改善」の3つのテーマで大きく取り上げました。女性用品や女性用の下着の配布の仕方や、男女別の更衣室や物干し場の確保など、避難所は災害時における女性と男性のニーズの違いが顕著に現れる場であり、女性の視点からの災害対応が最も求められる場面だと考えているからです。

なかでも、女性と男性の双方のニーズに対応できるよう、避難所の運営管理者に女性と男性の両方を配置することが重要です。また、好事例として、プライバシーの十分に確保された間仕切りの活用について、写真を交えて紹介しています。

<復旧・復興>

災害時だけでなく、復旧・復興段階においても女性の視点からの取組は重要です。復旧・復興に女性の視点を反映させるためには、地方公共団体の復興対策本部における女性の参画が大切です。

保健・健康増進から生活再建のための生業や就労の回復、心のケア等、復旧・復興段階においても、女性と男性が災害から受ける影響の違いを反映して、きめ細かな対応が求められます。

ガイドライン

第3部 便利帳

切り離して使える様々なチェックシート(備蓄、避難所、応急仮設住宅・復興住宅、男女別データ)や、「授乳アセスメントシート」、「避難所の見回り・相談ポスター(出典:全国女性会館協議会)」などを掲載しています。

ガイドラインp57 避難所チェックシート

令和2年7月豪雨における取組

内閣府調査チームの一員として初めて男女共同参画局の職員を熊本県庁へ派遣し、7月6~17日の2週間、現地災害対策室に常駐しました。この職員と熊本県男女参画・協働推進課が連携し、県庁内の関係部局、被災市町村、各避難所に対して、ガイドラインに基づく取組を促しました。また、性被害・性暴力を防止するためのチラシやポスターを作成し、各避難所に配布しました。

そのほか、橋本大臣から、7月7日(火)の閣議後会見において、すべての地方公共団体に対し、ガイドラインに基づく取組を呼びかけるなどしました。

災害対応に当たっては、現場を担う地方公共団体の役割が大変重要であり、女性の視点からの災害対応を進めるためには、各地方公共団体において取組が進められることが不可欠です。今後とも、関係省庁や全国知事会・全国市長会・全国町村会などの関係団体と連携して、ガイドラインの周知を図り、女性の視点からの災害対応を促します。

ガイドラインp57 避難所チェックシート
ガイドラインの活用を依頼する今井政務官
(福岡県知事との意見交換にて)

おわりに

本ガイドラインは、主に地方公共団体向けに作成されたものですが、男女共同参画センターや市民団体の皆さんの好事例もたくさん掲載しています。ぜひ、多くの皆さんにご活用いただきたいと思います。

災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~のダウンロードはこちら

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