「共同参画」2020年6月号

特集2

新型コロナウイルス感染症の流行が女性・女児に与える影響に対する国際的な取組の動向
内閣府男女共同参画局総務課

 新型コロナウイルス感染症の流行及びそれに伴う外出制限は、社会の様々な部分に影響を及ぼしていますが、女性・女児に対する影響が特に大きいものとなっています。とりわけ、配偶者暴力(DV)を含む女性・女児に対する暴力が増加していることなどを国際機関等が指摘しており、各国でも様々な取組が行われています。ここでは、国際的な取組の動向をご紹介します。

1.国連諸機関トップによる声明及び国連報告書

■国連諸機関トップによる声明

 令和2(2020)年4月5日、アントニオ・グテーレス国連事務総長が、また、翌6日、プムズィレ・ムランボ=ヌクカUN Women(国連女性機関)事務局長が、新型コロナウイルス感染症による危機下において女性・女児に対する暴力が急増していることに関し、各国への重点的な対応を要請する声明を相次いで発出しました。

アントニオ・グテーレス国連事務総長
アントニオ・グテーレス国連事務総長
(UN Photo/Mark Garten)

 グテーレス国連事務総長は、「女性に対する暴力の防止と救済をCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)に向けた国家規模の応急対応のための計画の重要項目とすること」と題した声明において、都市封鎖と隔離により、経済的・社会的な圧力と恐怖が増大し、家庭内暴力が世界規模で急増していることを指摘。全ての政府に対し、新型コロナウイルス感染症対策において、女性に対する暴力の防止と救済を重要項目とするよう要請しました。

プムズィレ・ムランボ=ヌクカ UN Women事務局長
プムズィレ・ムランボ=ヌクカUN Women事務局長
(UN Women(国連女性機関))

 ムランボ=ヌクカUN Women事務局長は、「女性と女児に対する暴力:陰のパンデミック」と題した声明において、女性に対する暴力という“陰のパンデミック”が拡大しているとし、外出制限による精神的不安や緊張の高まりが暴力を増やしていること、被害者が支援サービスにアクセスするのが難しく孤立していることを指摘しました。そして、もし対処しなければ、この“陰のパンデミック”が、新型コロナウイルス感染症の経済への影響を更に増大させるおそれがあるため、全ての国が、女性のためのシェルターや相談窓口を必要不可欠なサービスとして利用可能にし、情報の周知・啓発をしなければならないとしました。

■国連による報告書

 令和2(2020)年4月9日、グテーレス国連事務総長は、新たなビデオメッセージにおいて、過去数十年で僅かしか進歩しなかったジェンダー平等と女性の権利が、今回のパンデミックによって巻き戻される危険性があることを指摘した上で、新型コロナウイルス感染症の女性への影響に関する報告書をまとめたことを発表しました。

 同報告書は、今次危機が及ぼす悪影響は、社会的・政治的・経済的システムにおける女性・女児の脆弱性を浮き彫りにし、既存の不平等を強める結果になると指摘し、女性への影響を踏まえた政策的対応の重点事項を示しています。

 具体的には、①経済、②健康、③無償ケア労働、④ジェンダーに基づく暴力、⑤人道的・脆弱な状況における影響と人権に対する影響の5分野について、各国政府のとるべき対応策と国連としてできることについての提言がなされています。


2.G7各国の女性・女児に関する取組

 特集1のように、我が国でも新型コロナウイルス感染症の影響による女性・女児に対する暴力の増加に対し、様々な取組を進めていますが、G7各国においても、外出制限下で、女性・女児に対する暴力被害が急増していることに対し、相談窓口の拡充、支援団体への資金提供といった被害者支援の拡充が図られるなど、幅広い取組が行われています。


3.意思決定過程への女性の参画の重要性

 上述の国連の報告書は、意思決定過程に女性を含めずに立案された政策は「ことごとく効果が低い」とした上で、新型コロナウイルス感染症への対策が必要な効果を上げるためには、国による全ての応急対応において、女性・女児を中心に据えることが極めて重要であると指摘しています。そして、これにより長年にわたる不平等を是正するだけではなく、より公正で強靭な世界を作ることにもなり、男性及び男児の利益にもなると指摘しています。女性は、この大流行により最も深刻な打撃を受けますが、同時に、コミュニティにおける対応の中心にもなるのです。

 グテーレス国連事務総長も、報告書の公表に寄せたビデオメッセージの中で、各国政府に対し、女性・女児を新型コロナウイルス感染症からの回復に向けた取組の中心に据えるよう強く要請し、そのためには女性がリーダーとして、平等な代表権と意思決定権を持つことが必要であると、意思決定過程への女性の参画の重要性を強調しました。

 また、136の国連加盟国大使及びオブザーバーは、グテーレス国連事務総長の声明に呼応する形で4月16日に共同声明を発表しました。共同声明は、女性が全ての応急対応と意思決定に参画することが全ての人にとっての「より良い回復」のための唯一の方法であると述べており、新型コロナウイルス感染症への対応及び回復における意思決定への女性の参画は国際的な潮流となっています。

新型コロナウイルス感染症に関連した女性・女児に関する国際機関による発表、報告書、各国の取組等についての詳細
内閣府男女共同参画局HP
【HP】 http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/sp_index.html

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
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