巻頭言
いろいろ
「さいたさいたチューリップのはなが ならんだならんだあかしろきいろ どのはなみてもきれいだな」とつい口ずさみたくなる季節がやってきた。私は歌が大好きで、替え歌を取り入れながら様々な講演を行っている。ユーモアあふれる「替え歌」作詞家(?!)の友人のおかげでレパートリーも徐々に増え、10数曲ほどある。ここで紹介することはできないが、『人生いろいろ』(作詞:中山大三郎)の替え歌はウイットに富み、心当たりのある人にはグサッとくる言葉が並んでいる。
『人生いろいろ』がヒットしたのは「男女雇用機会均等法」が施行されてまもない1987年。十人十色、百人百様という言葉はあっても、固定的性別役割分担意識が根強く、およそダイバーシティとは程遠い社会だった。だから女性にとっては「人生いろいろ 男もいろいろ 女だっていろいろ 咲き乱れるの」の「女だって」に、そうそう!私の人生だっていろいろよ!と共感を覚えたのではないだろうか。今日でもまだ「無意識のバイアス」は解消されておらず、男女を問わず、生きにくさを感じている人が多いだろう。
そのような中、元気になる!歌に出会った。『限界突破×サバイバー』(作詞:森雪之丞)である。「可能性のドアは施錠(ロック)されたまま やれやれ…今度も壁をブチ破る 今だ!限界×突破」「ワクワクの羽根広げ 次の世界へ行こう」。歌うは、ジェンダーを越え、ありのままの自分を表現し、自分の個性で生きていくことを表明した氷川きよしさん。環境を変えるのは誰?自分でしょう!歌詞そのままに、心を決めたら、前進あるのみ。
ところで、冒頭の『チューリップ』を作詞(1番)された近藤宮子さんは「なにごとにも良いところがあるものです。とくに、弱いものには目をくばりたい」という思いをこの詞にこめていたことをつい最近になって知った。チューリップの花言葉は「思いやり」。色によって花言葉が異なり、“いろいろ”あることもわかった。
立教大学教授
萩原なつ子