「共同参画」2020年1月号

特集

各国の男女共同参画の取組ー各国大使館よりー
内閣府男女共同参画局総務課

駐日オーストラリア大使

リチャード コート特命全権大使(2017年2月着任)



オーストラリア連邦 Australia
  • 面積 769万2,024平方キロメートル(日本の約20倍、アラスカを除く米とほぼ同じ)(出典:ジオサイエンス・オーストラリア)
  • 人口 約2,499万人(2018年6月。出典:豪州統計局)
  • 首都 キャンベラ(Australian Capital Territory、人口約42万人[2018年6月。出典:豪州統計局])
  • 民族 アングロサクソン系等欧州系が中心。その他に中東系、アジア系、先住民など。
  • 言語 英語
  • 宗教 キリスト教52%、無宗教30%(出典:2016年国勢調査)

女性のリーダーシップ促進に向けたオーストラリアの取組

■初めて上院で女性議員の数が半数に

オーストラリアでは先日、初めて上院で女性議員の数が全議員の半数に達しました。これは100年以上の年月を経て達成した成果です。オーストラリアでは1902年に女性の選挙権が認められ、同時に国会議員への立候補も可能になりましたが、実際に女性国会議員が誕生したのは1943年になってからでした。そして2019年、ようやく上院の議員数が男女同数になりました。閣僚の男女比では女性が全体の30%で、マリズ・ペイン外務大臣とリンダ・レイノルズ国防大臣が女性ですが、この両ポジションに女性が同時に就いたのは、2013年以降では2度目のことです。

ダイバーシティやインクルージョンが経済的に有益なことは明らかで反論の余地はありませんが、一致団結した取組なくしては男女格差の解消は進みません。近年オーストラリアの国会で女性比率が増大したのも、女性の政党員や国会議員を増やそうとする積極的な政策と取組あってこそです。例えば労働党は、当選の可能性が高い議席のうち35%をあらかじめ女性に割り当てることを定めたクオータ制を導入し、自由党は2025年までに女性の数を50%に増やすことを目指しています。


オーストラリアのスコット モリリン内閣では女性閣僚の割合が30%以上です。

■民間企業や公的機関での取組

民間企業や公的機関でも同様の取組が行われています。オーストラリア証券取引所の上場企業で取締役を務める女性の数は、2010年から2019年の9年間に4倍に増え、その比率は8.3%から29.5%に上昇しました。大手銀行や資源産業でも女性の経営者が登場しています。これもまた、各社が女性リーダーの育成に向けて充実した取組を実践した成果です。大手通信会社のテルストラでは、5年前にすべての職務について、要望に応じてフレキシブルな働き方を認める方針を採用しました。これによって社員は通常の勤務時間以外の勤務やリモートワーク、ジョブシェアリング、パートタイムなどを選択することが可能になりました。その結果、会社全体で、女性の採用や昇進が増えただけでなく、生産性向上や従業員エンゲージメントの強化、顧客サービスの改善といった効果もありました。

■外務貿易省でのジェンダー平等への取組

私が所属する外務貿易省は、オーストラリア政府の中でも特にジェンダー平等への取組が進んだところです。たとえば、上級管理職の40%以上を女性にするという目標を設定しています。そして採用担当者に無意識の偏見を取り除くためのトレーニングを実施したり、性別ごとの採用情報をスタッフに報告したり、会議では男性よりも女性の方が話をさえぎられやすいことを念頭に「no interruptions 人の話をさえぎってはいけない」というルールを定めたり、また母乳育児中の職員が出張する際は、子どもや育児補助者を帯同できるよう支援するといった施策を導入しています。フランシス・アダムソン外務貿易省次官は、「パネル誓約」(パネル講演者のジェンダーバランス確保の手段が講じられている会議でなければ出席しないという誓約)を強く支持しており、また講演を依頼された場合も、独自の参加者誓約(出席予定者の30%以上が女性でなければ登壇しないという誓約)を守っています。

■男性チャンピオンの会

官民両セクターにわたってオーストラリアのジェンダー平等を前進させた取組に、「変革を進める男性チャンピオンの会(Male Champions of Change)」があります。これは企業でも官僚組織でも、力のあるポジションの大半を男性が占有しているという現状を踏まえ、男性リーダーが力を合わせてジェンダー平等実現のために活動しようという取組です。これまで重要な役職に就く女性が限られていた背景には、採用プロセスですでに不均衡が存在するという事実があります。男性リーダーはその不均衡を解消するため、「採用男女比50:50、できないならば理由を」という考え方を推進し、採用決定の根拠となる評価を見直しています。この会からは「In the Eye of the Beholder(それぞれの視点)」という最新の素晴らしい報告書が発行されています。

オーストラリア国軍のアンガス・キャンベル司令官は、そのMale Championsの一人として有名です。現在オーストラリア国防軍の約5分の1が女性で、新規採用数は増加しています。空軍では新規採用者の40%、海軍では30%、陸軍では20%が女性です。国防軍の任務のうち、女性が従事することが禁じられているものは、今はひとつもありません。先日、オーストラリアの潜水艦が日本に寄港しましたが、艦内で男性と女性が一緒に任務に当たっていたことは、人々を大いに驚かせました。

■情報収集と提供

こうした積極的な取組に加え、オーストラリアワークプレイス男女平等局では、データ収集、スコアカードの発行、ベストプラクティスの発掘、雇用者への男女平等推進のためのアドバイス提供などを行っています。ここで収集されたデータは政策の改善に生かされるとともに、優良な企業のショーケースづくりにも役立っています。リビー・ライオンズ局長は2019年に東京で開催された国際女性ビジネス会議に出席し、オーストラリアの課題への取組について政財界の多くの関係者に語りました。

■日本との交流

様々な施策が順調に進んでいますが、それでもなお不平等は残っており、満足できる水準ではありません。女性の参画率を向上し、職場のリーダーになる女性を増やすため、私たち皆が役割を果たさなければなりません。私自身、現在の職場である在日オーストラリア大使館で、女性がリーダーとしてさらに力を発揮できるよう、最大限の努力をしています。そのひとつが「リソースフルウーマン」です。オーストラリアの資源産業界では、多くの女性がCEOなど企業の要職に就いており、そうした女性の訪日機会をとらえてイベントを開催し、日本の資源産業界で働く女性との交流を後押ししています。日本側からは様々な業務や職位の女性に参加していただいており、資源産業界のように一見男性優位と見える業界でも、女性がトップに立つことができるというメッセージを強く印象付けることができていると思います。こうしたイベントに参加した日本の皆様が刺激を受けて、今より高いポジションを目指し、女性のリーダーシップを積極的に推進していただけることを願っています。


2019年10月16日に在京オーストラリア大使館で開かれた才ある女性の昼食会にて、
コート大使がBHP三井石炭の資産管理部長のエルサベ・ミュラー女史や
日本の資源エネルギー部門のマネジャーや担当者の一団をもてなしました。


本邦駐箚アイスランド国特命全権大使

エーリン フリーゲンリング



アイスランド共和国国 Republic of Iceland
  • 面積 10.3万平方キロメートル(北海道よりやや大きい)
  • 人口 34万8,580人(2017年12月 アイスランド統計局)
  • 首都 レイキャビク
  • 言語 アイスランド語
  • 宗教 人口の約8割が福音ルーテル派(国教)

世界一ジェンダー格差の少ない国

世界経済フォーラムは毎年ジェンダーギャップ指数(GGI)を発表しており、アイスランドはGGIで10年前から常にトップを維持している世界一ジェンダー格差の少ない国です。ジェンダー平等は我が国の外交政策の基盤であり、女性の平和と安全、エンパワーメントは持続可能な開発の原動力であると考え、重点的に取り組んでいます。

各種研究によると、男性と女性の生涯収入の差が原因で、多くの国が富を失っているそうです。ジェンダー格差のない社会は幸福、健康、信頼感が向上し、経済発展も促進されるように、ジェンダー平等は様々な社会的・経済的利益をもたらすのです。

ジェンダー平等がビジネスに好影響であることは、多くの研究で指摘されています。女性がトップを務める企業、経営陣や取締役会が多様なメンバーで構成されている企業は利益率が高い傾向があります。

ジェンダー平等に向けたたゆみない努力

幸運にもアイスランドの国民は、自国のジェンダー平等が大幅に改善する状況を目撃してきました。取組の成果は10年前からGGIに表れており、その他の指数でも高いランクに位置付けられています。また先般、アイスランドはWomenomics Honorary Award(ウーマノミクス名誉賞)を受賞しました。ジェンダー平等に向けたたゆみない努力が評価されたものですが、国が受賞したのは初めてのことです。こうした取組によって蓄積したジェンダー平等の体験や知識を、国際協力を通じて他の国々とも共有したいと考えています。

国内ではジェンダー平等法という包括的な法律を1976年に採択し、数回の改正を加えて、ジェンダー平等の推進と格差の解消を図っています。最近では例えば、同一賃金証明証に関する法令が改正されました。

同一賃金証明証に関するこの法律は、価値の等しい労働に対しては必ず等しい賃金が支払われるようにするためのもので、10年前から続いている規制や国際協定を強化して2018年に施行されました。

また公共の委員会や上場企業の取締役会ではジェンダークオータ制も導入され、好意的に受け止められています。

男女共同育児休暇制度は、現在は両親合わせて9カ月ですが、これを12カ月に延長する新法が近く施行される予定です。とりわけ重要なのは3カ月間の父親育児休暇がある点で、これは父親が取得しなければ消滅します。父親の育児休暇取得率は現在74%です。

誰もが適正価格で利用できる質の高い保育施設も重要な社会インフラとして整備されており、2歳児の95%がプレスクールに通っています。

国際的な取組

アイスランドが拠出するODA(政府開発援助)の80%以上が、開発途上国のジェンダー平等や女性のエンパワーメントを支援するプロジェクトに使われています。アイスランドはUN Women(国連ウィメン)にも積極的に協力しており、人口ひとり当たりの寄付額は世界最高額になっていますし、UN Womenアイスランド協会からの拠出金は、人口ひとり当たりの額ではなく、実際の総額で各国協会の中で世界一です。アイスランド大学には学卒者向けに5カ月間のGender Equality Studies(ジェンダー平等学)という大学院プログラムがあり、2009年の創設以来、132人の学生が国際的なジェンダー研究を学び、post-graduate diploma(大学院修了証書)を取得しています。修了生の内訳は男性43名、女性89名で、出身国は22カ国です。

アイスランドは、女性が和平プロセスに意義のある参加ができるよう注力しており、2008年、国連安全保障理事会決議1325号の履行に向けた行動計画(National Action Plan)を、他の加盟国に先駆けて採択しました。2018年11月には、女性の脆弱性や安全に関する国内教育や啓発活動に重点をおいた第3次行動計画を発表しました。

2015年以降、世界各地でBarbershopと呼ばれるイベントが開催されています。これはジェンダー平等のための戦いに男性も参加してもらい、女性のパートナーである男性がジェンダー平等への取組で果たす役割の大きさを伝えるためのイベントです。そこでは男性にジェンダー平等の重要性について理解を深めてもらい、男性の役割と責任、チャンスについて自覚してもらうための議論が行われています。そして男性や少年たちが積極的にジェンダー平等を支持し、男性が変革の担い手になることを目指しています。第1回のBarbershopイベントが2015年1月にニューヨークの国連で開催されて以来、これまでに、例をいくつか挙げると、国際労働機関(ILO)、世界貿易機関(WTO)、北大西洋条約機構(NATO)、欧州安全保障機構(OSCE)、欧州議会、経済協力開発機構(OECD)、世界銀行グループ、アイスランド国会をはじめ、多数の組織から約2,450人がこのイベントに参加しています。

アイスランドは、2017年にブエノスアイレスで開催された第11回WTO閣僚会議で発表された「貿易と女性の経済的能力強化に関する共同宣言(The Joint Declaration on Trade and Women’s Economic Empowerment)」の起草でも主導的役割を果たしました。この宣言によって、男性と女性の双方が、貿易によるメリットを享受できる枠組みが示され、現在、127のWTO加盟国とオブザーバーがこの宣言を支持しています。

日本においての活動

このように、アイスランドはジェンダー平等に向けて数々の成果を上げています。それに対して日本の皆様は非常に強い関心を寄せてくださっており、駐日大使のエーリン・フリーゲンリングは様々なイベントでジェンダー平等に関する講演をさせていただいています。アイスランド本国政府もこうした実績を裏付けに、人権への取組やダイバーシティの推奨について、世界に向けて強く発信しています。


駐日メキシコ大使

メルバ プリーア



メキシコ合衆国 United Mexican States
  • 面積 196万平方キロメートル(日本の約5倍)
  • 人口 約1億2,619万人(2018年世界銀行)
  • 首都 メキシコシティ
  • 民族 欧州系(スペイン系等)と先住民の混血(60%)、先住民(30%)、欧州系(スペイン系等)(9%)、その他(1%)
  • 言語 スペイン語
  • 宗教 カトリック(国民の約9割)

メキシコのジェンダー平等への取組

私はメキシコの大使として、またひとりの女性として、ジェンダー平等に対する人々の認識を高め、できる限り平等を推進することを大切な目標としています。過去数十年間を振り返ると、メキシコ政府が導入した制度が効果を上げ、また社会でも取組が広がるなど、私たちの国は正しい方向へ前進し、社会のさまざまな分野に良い影響を及ぼし続けています。

メキシコの人口は1億2200万人余りです(2014年現在)。そのうち52.2%が女性で、79%近くが都市部に居住しています。また先住民の人口は約1600万人で、68の民族・言語集団が存在しています。連邦政府は何年も前から、女性の権利とジェンダー平等推進について、主要分野を中心に取り組み、全国で大きな成果を上げています。具体的には、男女平等を確保するための法律の強化、制度の整備とジェンダー平等推進策への公的資源の配分の強化などです。


独立記念塔


ソカロ(中央広場)

第1回世界女性会議

メキシコがジェンダー平等の推進に積極的に取り組む契機となったのが、1975年にメキシコシティで開催された第1回世界女性会議でした。これは国連が初めて女性問題だけに議題を絞って開催した国際会議で、メキシコはホスト国を務めました。この会議を通じて、国の開発プロセスや政策実現において、女性は単なる受益者ではなく、重要な構成員なのだという考え方が広まりました。

教育におけるジェンダー平等

我が国における取組の成果のひとつが、教育におけるジェンダー平等の進展です。高等教育を含むすべての段階で、工学、工業生産、建設の各分野に入学する女性が増え、高等教育機関で学んだメキシコ人のうち、これらの分野で学位を取得した人の割合は11%となりました。OECDの全加盟国の平均は6%で、メキシコはその中で第2位という高水準でした。

政治分野におけるジェンダー平等

近年で最も目覚ましい進展があったのは2014年です。選挙制度が改正され、連邦議会および州議会への立候補に関するジェンダー平等の規定が憲法のレベルにまで引き上げられました。同年の憲法改正で、各政党が連邦議会および州議会の議員選挙に立候補者を擁立する際は、男女の数を同じにすることが義務付けられました。

さらに2019年5月からは、法令が改正されてメキシコ政府の三権(行政、立法、司法)および州政府でもジェンダー平等規定の適用が義務化されました。例えば連邦政府および州政府や地方公共団体で連邦政府と同様の業務を行う公務員は、半数を女性にすることを目指すとしています。司法府である最高裁判所でも、男女両方の裁判官で構成されることが必要とされ、登用試験でも男女数の平等を考慮します。その他に政党、自治体、地方公共団体(州政府、市町村)でも男女数の平等を確保することになっています。

メキシコでジェンダー平等のための公共政策の主な枠組みとなっているのが、国家開発計画です。2019年の5月1日にアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領が発表した新たな計画では、連邦政府の活動を規制する目標、戦略、優先課題が定められていますが、実質的な男女平等に向けた取組も、そこに含まれています。

メキシコ連邦では2019年3月21日、国家女性庁(Instituto Nacional de las Mujeres、 INMUJERES)が「女性フォーラム」と題する協議会をメキシコシティで開催しました。

このフォーラムの主な目的は、政府の三権(行政、立法、司法)の代表者と一般市民の対話の場を作ることでした。それによって女性の人権を強化し、保証し、尊重するための希望やニーズを拾い上げ、国家開発計画2019-2024に「ジェンダー、差別の撤廃、包摂的な視点」を横断的に盛り込んで、あらゆる社会集団における男女格差を解消することを目指しました。

男女平等のための国家プログラム

また昨年11月には、ロペス・オブラドール大統領が男女の実質的平等に向けた非常に重要なステップを定めた「男女平等のための国家プログラム」に署名しました。これは女性が幸福に、そして安全かつ平和に暮らせるよう、女性の生涯にわたる権利の向上を進めることを目標としたプログラムです。これによって、ロペス・オブラドール新政権がジェンダー平等を最重要政策のひとつに位置付けていることが明らかになりました。

このプログラムには、主な目標が6つあります。第1の目標は、最も貧しく、最も差別されている女性や少女を、常にメキシコの発展の中心に置くこと。第2は、女性のための正規の仕事を増やし、条件を改善し、権利を強化すること。第3に、すべての女性と少女に教育の機会を提供し、彼女たちを尊重し、暴力をなくし、平和と安全を実現することによって、女性たちのより幸福な人生を保証すること。第4に、ケア労働は家族と労働拠点が分担し、女性が自分のための時間をもっと持てるようにすること。第5に、生涯を通じて、女性の健康にもっと配慮すること。第6に、政府の価値観と原則、女性と少女の権利と機会の平等をもとに国全体で新しい文化を醸成するため、ともに協力し合うこと、です。全体としてこのプログラムは、6つの目標、37の戦略、273の行動計画で構成されています。

このプログラムは、国民の参加を得て成立したものであることも申し添えておきたいと思います。女性たちの声を直接聞き、彼女たちの要望やニーズが反映されています。

社会全体の動きへ

メキシコの社会を見ると、とりわけ若い人々を中心に、制度や文化を変えようという動きが大きくなっています。女性に対する差別や不平等は、社会全体に影響を及ぼすからです。政府機関、企業、博物館、財団、メキシコの大学など55の団体がHeForShe運動に賛同しているのも、そうした動きの表れです。この運動には11万9000人の個人も賛同しています。個人賛同者のうち8万人以上が男性で、女性と連帯してジェンダー平等の実現を目指しています。メキシコでは他のラテンアメリカ諸国に先駆けてこうした機運が高まり、HeForShe運動に賛同し、参加している人の総人口当たりの数がラテンアメリカ諸国の中で最大になっています。

ジェンダー平等への取組に、これで十分と言うことはありません。メキシコで成果を上げている実践例や、順調に進展しているプログラムを示すことが他国の皆様のよい刺激となり、世界全体でジェンダー平等が推進されることを願っております。

在京ルーマニア大使

スヴェトラナ タティアナ ヨシペル(Svetlana Tatiana IOSIPER)特命全権大使



ルーマニア Romania
  • 面積 約23.8万平方キロメートル
  • 人口 約1,976万人(2016年)
  • 首都 ブカレスト(人口約212万人)
  • 民族 ルーマニア人(83.5%)、ハンガリー人(6.1%)など
  • 言語 ルーマニア語(公用語)、ハンガリー語
  • 宗教 ルーマニア正教、カトリック

ルーマニアのジェンダー政策の取組

ルーマニアのジェンダーバランス政策とその実践について見解を述べる機会をいただいたことに感謝いたします。

機会と処遇が男女平等であることは、人権の基本原則です。ルーマニアのジェンダーギャップ指数は世界で63位(2018年)ですが、女性の権利の強化と差別の解消を優先課題として取り組んでいます。職場と労働市場でのジェンダー平等は、ルーマニアの憲法で保障されています。憲法には公共機関、一般企業、軍への就職や、社会保障や社会保険の利用を男女平等にすることが規定され、また有給の産前産後休暇の権利についても明文化されています。ルーマニアでは男女の機会と処遇の平等に向けた政策が2002年に初めて法制化され、機会の平等に取り組む中心となる国家政府機関が2005年に設立されました。

育児休暇

現在、出産をする女性には126日の産前産後休暇が与えられており、直前の収入の85%が支払われます。また男女双方に2年間の育児休暇が与えられ、やはり直前の給与の85%を受け取ることができます。育児休暇は父親も母親も取得できますが、家庭にいて子どもの面倒をみる父親はわずか3%ほどにとどまっています。

ジェンダー平等とEU基本条約

ルーマニアはEUに加盟していますが、ジェンダー平等はEU基本条約で定められており、さまざまな法令の基礎になっています。今般新たに、両親のワークライフバランスとキャリアに関する新しい指令が発出されました。この指令は家族に関する責任を男女が平等に担うこと、女性が労働市場に参加することを推進し、収入や賃金の男女格差を解消することを目指すものです。

教育分野におけるジェンダー平等

教育では、ジェンダーギャップの逆転が起きて、女性が優位になっています。欧州に住む30〜34歳の女性の大学卒業率は44%ですが、男性は34%にとどまっています。しかし、高等教育を受けた人は賃金も高いはずですが、女性は男性と同じ仕事をしても賃金が低いため、賃金の男女格差は依然として大きな課題として残っています。ルーマニアのジェンダー賃金格差は8%、EU平均は16%です。

女性の政治参加

女性の政治参加は、経済的エンパワーメントと同様に重要であると私は考えています。女性が指導的立場に立ち、また立法プロセスに参加することにより、女性の声が届き、女性のニーズが満たされ、女性が抱える問題に対する適切な対応が実現します。

ルーマニアでは2018年から2019年まで女性が首相を務めていました。また女性が外務大臣だった時期もありますし、ルーマニア代表の欧州委員も女性です。このように女性の活躍が広がっているものの、国会議員全体に占める女性の割合は依然として20%という低水準で、強制力のあるクオータ制もありません(欧州議会の女性比率は、5月の選挙の結果、36%から40%に増大しました)。しかし中央および地方の行政機関の管理職の女性比率は、欧州の平均より高い52〜54%となっています。またルーマニアの司法部門は女性が多く、裁判官の70%、検察官の50%が女性です。

女性に対する暴力の問題

女性に対する暴力は依然として懸念すべき問題であり、最近、複数の女性虐待事件が注目を集めたことを受けて、法令の改正や啓発活動などさまざまな施策が検討されています。女性の30%が、暴力の被害を受けたことがあると話しています。

メディアにおける取組

ルーマニアの優れた取組の例として紹介したいのが、メディアの偏見を取り除くために実施しているジャーナリスト向けの研修プログラムです。ジェンダー像が広告の影響で固定化されてしまっており、メディア各社が描く女性像や各社の編集方針には、市民社会が懸念している女性問題が反映されていません。この研修を通じて、ジェンダー問題に関する認識を高め、女性の声を聞く機会を増やし、女性が抱える社会的、経済的、文化的課題に対するメディアの関心を高め、メディア企業・団体の上層部で指揮をとる女性を増やしています。

キャリア形成とジェンダー平等

私事になりますが、私がルーマニア外務省に入省したのは1992年で、女性の外交官が非常に少ない時代でした。ルーマニアの民主化からわずか2年しかたっておらず、これからルーマニアの社会はさまざまに変化するだろうし、その変化の中で女性にも新しいチャンスが生まれるだろうと考え、そうした変化を自分も体験したいと考えました。

当初はひたすら仕事だけに打ち込む日々でしたが、結婚して仕事以外の責任を負うようになってから、優先順位が徐々に変わっていきました。家族が全面的に協力してくれるおかげで、私はキャリアを中断することなく、仕事を続けています。労働時間の長さが、キャリアの継続を望む女性の大きな障害になっています。雇用者は、子育て中の両親には柔軟な勤務時間を認めるべきです。適切なワークライフバランスを達成すれば、社会の多くの課題解決にもつながると考えています。

ルーマニアについて

ルーマニアは欧州の南東部に位置し、EU(欧州連合)とNATO(北大西洋条約機構)に加盟しています。人口は約1,900万人、日本の約6分の1です。国土面積は238,391平方キロメートルで、本州と四国を合わせたくらいの大きさです。首都のブカレストには200万人が住んでいます。自由な民主主義国家で、愛国心と欧州への帰属意識が強く、力強い経済成長と活力のある社会と豊かな文化を誇っています。

ルーマニアには、それぞれの分野で成功した女性たちがいます。オリンピックの体操競技で史上初の10点満点を記録したナディア・コマネチ選手、元WTA(女子テニス協会)ランキング1位で、2019年のウインブルドン選手権で優勝したシモナ・ハレプ選手はルーマニアの人です。またアナ・アスラン博士は老年医学の研究で知られていますし、世界的なソプラノ歌手のアンジェラ・ゲオルギュー、日本でもたびたび公演しているバレリーナのアリーナ・コジョカリューも有名です。


Nadia Comaneci体操選手


Simona HALEP テニス選手(2019年ウインブルドン選手権優勝の時)


Adina Valean欧州委員会委員(交通担当)


Ana ASLAN 博士


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