「共同参画」2019年6月号

トピックス1

諸外国における政治分野への女性の参画に関する調査研究
〜イギリス・フランスの取組に学ぶ〜
内閣府男女共同参画局推進課

「男女の候補者の数ができる限り均等となること」を目指すことを基本原則とする「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が平成30年5月23日に施行。法律の成立も踏まえ、内閣府男女共同参画局では、日本における政治分野の男女共同参画のための取組の参考となる情報を得ることを目的に、平成30年度にイギリス・フランスを主な対象として、諸外国の取組や動向を調査しました。その調査から得られたイギリス・フランスにおいて有効であったと考えられる取組や国際的な動向等を紹介します。

1.概況

日本の政治分野への女性の参画状況は国際的に見ても遅れており、例えば、衆議院議員に占める女性の割合は約10%で、世界193か国中164位となっています。

一方、イギリス・フランスは、1980年代までは女性議員比率に日本とほとんど差はありませんでしたが、現在の女性議員比率はイギリス約32%、フランスは約40%となっており、様々な取組の結果、政治への女性参画が拡大しています。

2.女性議員を増やすという「政治意志」

フランス共和国前進では、2017年の国民議会議員選挙において党首(マクロン大統領)が勝てる見込みのある選挙区に女性を割り当てる意志があることを強調するビデオメッセージを出した結果、オンライン公募による女性の候補者が増加するとともに、女性当選者も増加しました。

イギリス労働党では、現職議員が引退を予定しているなどの「当選の可能性の高い」選挙区において、議員の候補者を選出する最終候補者リストを女性に限定するという仕組み(女性指定選挙区)が党執行部による強力なリーダーシップにより導入され、女性議員の増加に大きく寄与しています。

このように政党の党首や執行部が女性議員を増やすという「政治意志」を持ちリーダーシップを発揮することは、女性が手を挙げやすくし、実際に女性議員を増やすことにつながっているといえます。

3.候補者選定過程の透明化

イギリス保守党は、国会議員になるためのステップ(応募・相談→申請書の提出→適性審査→実務テストや面接)をHPで丁寧に紹介しています。候補者選定過程を透明化することで政治家としてのキャリアの見通しがよくなり、敷居が高いと思われがちな政治の世界に足を踏み入れやすくなると考えられます。

4.議員養成トレーニングの実施

イギリス労働党では、参加費無料で5か月間という長期間のトレーニングを実施しており、その中では、女性同士のネットワークを構築するために合宿も導入しています。また、イギリス保守党では女性候補者の発掘・支援・トレーニングを目的とする党内組織(Women2Win)がスピーチやメディア対応などのテーマ別のコース研修(2か月で1コース)を実施しています。

このように政治家になるために必要な資質やスキルなどの能力開発の機会を提供することで多様な人材が政治に参画することを促すことにつながると考えられます。

5.女性の声の党内組織への反映

イギリス労働党では1990年代より党内役職におけるクオータ制を実施しています。また、イギリス保守党では、前述のWomen2Winが、女性議員同士が党内で連帯していく活動基盤として機能しており、こうした取組により党内組織に女性の声を反映することにつながっています。

6.議員の働き方改革を進める

列国議会同盟が2012年に採択した「ジェンダーに配慮した議会のための行動計画」では、議員活動と家庭生活の両立支援のため、審議開始時刻を早めたり、遅い時間の議決を避けたりすることや学校のスケジュールに審議日程を合わせること、育児休暇を議会欠席の正当な理由として認めることなどの具体策が提示されています。

イギリス議会では、実際に審議時間の変更や議会内への保育所の設置などの議会改革が行われ、議員活動と家庭生活の両立が可能となるような環境が整備されています。

7.政治分野のハラスメント・暴力の撤廃

列国議会同盟が2016年に各国議員にハラスメント等の実態をヒアリングした結果、女性議員の約8割が精神的暴力(うち約65%が屈辱的な性的又は性差別的な発言)を、約2割が性的暴力を受けたと回答しており、政治分野におけるハラスメントや暴力は、国際的にも問題となっています。列国議会同盟はこうした状況に対して、苦情処理手続きの確立(機密性のある相談窓口の確保)やセクシュアル・ハラスメントへの議会行動規範の確立、研修の実施等の具体策を提言しています。

8.自己点検、モニタリング

イギリスでは、2018年に女性参政権100周年に際して、先進国として初めて列国議会同盟による監査を受け入れています。また、議会に設置されている「女性と平等委員会」が必要に応じて、調査や有識者・政党関係者のヒアリングを実施しており、定期的にレポートを発行しています。こうした取組が政党やメディアの理解を促進させ、各主体の取組を促進することにつながると考えられます。

9.政党助成金の在り方

民主主義・選挙支援国際研究所によると、世界30か国で女性議員を増やすことを目的とする公的な政治資金(政党助成金)の配分の仕組みが導入されており、大別すると、
●事前に設定した女性比率を超えた場合に全額又は一部を受け取れる仕組み
●候補者や議員の女性比率に応じて配分率を増減させる仕組み
●女性の政治参画を高める目的など、使途制限を課す仕組み
があります。

フランス国民議会選挙では、各政党の選挙候補者の男女差が2%以上の場合に政党助成金を減額する仕組みが導入され、女性議員の増加に寄与しています。

内閣府男女共同参画局では、引き続き政治分野における男女共同参画の推進に向けて国内外の実態調査等を進めていきます。

 

報告書の詳細をご覧になりたい方は、内閣府男女共同参画局WEBサイトをご覧ください。

http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/index.html
http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/index.html

※本稿掲載の女性議員比率及び順位は、列国議会同盟(Inter-Parliamentary Union ; IPU)の“Women in national parliament”による2019年2月現在の下院又は一院の数値。

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019