「共同参画」2019年6月号

特集1

第5回国際女性会議WAW!/W20
 今年はWAW!とW20の同時開催。
 今回の議論・提言は、日本が議長国を務めるG20大阪サミットへ
外務省総合外交政策局女性参画推進室

WAW!は、国際女性会議WAW!、英語でWorld Assembly for Womenの略称で、「ワウ!」と呼ばれています。日本の女性分野に関する取り組みを国内外に発信するため、安倍総理大臣のイニシアティブで2014年に1回目のWAW!が開催されました。WAW!には、様々な国、地域、国際機関からトップ・リーダーが参加し、日本及び世界における女性のエンパワーメント、女性の活躍促進のための取り組みを議論します。第5回WAW!は「WAW! for Diversity」をテーマに、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に向けて、3月23日から24日にかけてW20(Women20)の会合と同時開催されました。

W20とは、G20のエンゲージメント・グループのひとつであり、女性に関する政策提言をG20に向けて行う組織体です。2014年G20ブリスベン・サミットで採択されたコミットメント「G20は2025年までに就労率の男女差を25%縮小する」の確実な履行を第一の目標とし、女性の社会進出がすなわち経済的エンパワーメントであるとのSDGsの考え方を共有しています。2019年は日本が議長国を務め、「Closing the Gender Gap for New Prosperity」をテーマに、コミュニケの策定及び手交、第5回国際女性会議WAW!/W20の開催に取り組みました。

 

3月23日 基調講演等

冒頭の開会挨拶では、安倍晋三内閣総理大臣から、女性活躍推進のための国内外の取り組みについて触れ、女性のエンパワーメントについて、参加者と共に発信し、世界を変えるための「行動」につなげて行きたい旨を述べました。次にW20運営委員会の目黒依子及び吉田晴乃両共同代表より、安倍総理に対し、W20コミュニケが直接手交されました。

安倍内閣総理大臣にW20コミュニケを手交する吉田及び目黒W20運営委員会共同代表
安倍内閣総理大臣にW20コミュニケを手交する
吉田及び目黒W20運営委員会共同代表

基調講演では、マララ・ユスフザイ・マララ財団共同創設者が、現在の活動に至った経緯及びSTEM分野における女性教育の重要性について触れ、女子教育の普及のため世界の指導者たちが声をそろえていくべきである旨を強調しました。次にミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官は、固定観念に基づく女性への差別が女性の能力発揮の妨げになっている現状に触れ、あらゆる分野において女性の参画を促進し、エンパワーメントを進めていく重要性を強調しました。続く特別挨拶では、ガブリエラ・ミケティ・アルゼンチン共和国副大統領が、昨年アルゼンチンにて開催されたW20及びG20サミットにおける成果について触れるとともに、教育及び雇用の機会均等、教育の質の向上等の重要性について述べました。

マララ・ユスフザイ・マララ財団共同創設者
マララ・ユスフザイ・マララ財団共同創設者

ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官
ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官

ガブリエラ・ミケティ・アルゼンチン共和国副大統領
ガブリエラ・ミケティ・アルゼンチン共和国副大統領

3月23日 パネル・ディスカッション

23日は3つのパネル・ディスカッションが実施され、各議論において女性のエンパワーメントの重要性が指摘されました。

パネル・ディスカッション「技術革新と変容する社会における人材育成」では、技術革新が人々の暮らし方や働き方に急速な変化をもたらす中で、そうした技術革新から取り残されないための人材育成のあり方や、STEM(科学、技術、工学及び数学)の分野における女性の教育の重要性等について議論されました。企業、大学、国家政策等における具体的な取り組み事例として、ブルガリアでは民間企業の協力を得てITエンジニアになる女子生徒の数で世界1位を獲得したことが紹介された他、今後は専門分野のみでなく幅広い知識を持った人材育成が必要であり、娘が科学分野へ進むことへのためらいをなくすことを目的とした保護者を巻き込んだ大学の取り組みが紹介されました。

WAW!パネル・ディスカッション「地方活性化と雇用創出、そのためのリーダーシップ」では、片山さつき内閣府特命担当大臣も登壇し、地方活性化のカギである仕事、暮らし、地域のリーダーシップの3つの要素について、地方で雇用や仕事を生み出すために必要な取り組みや、地方を女性が暮らしやすい場所にするために必要な取り組み、地域のリーダーが持つべき意識について議論が行われ、働きがいのある仕事の創出やテクノロジーを活用した女性のエンパワーメントの重要性、地方で暮らす価値の創出、トップが明確なビジョンを示し、関係者の力を結集することの重要性等が指摘されました。

WAW!パネル・ディスカッションの様子
WAW!パネル・ディスカッションの様子

W20パネル・ディスカッション「ジェンダーギャップの解消を通じた新しい成長のカタチ:女性のエンパワーメントを実現するガバナンスとは」では、ジェンダーギャップの結果として世界で約6兆ドルの損失があること、一方、日本では女性の活躍が促進されることで賃金換算で約8兆円、GDPに約3兆円の貢献があるという試算などが紹介され、ジェンダーギャップの解消による経済効果の大きさが示されました。さらに、アンコンシャスバイアスなどの意識や社会規範を克服する取り組み、更なる成果を上げるための政府・企業それぞれで有効なメカニズムなどについて議論がされました。

3月23日-24日 分科会パネル・ディスカッションおよびスペシャル・セッション

23日から24日にかけて、8つのテーマの下で分科会パネル・ディスカッションおよびスペシャル・セッションが行われ、活発な議論を通じ、登壇者からは具体的な提案が出されました。

WAW!分科会「多様性を育てるメディアとコンテンツ」では、固定観念の形成を防ぎ、多様性を育てるためのメディアやコンテンツのあり方について討論がなされ、優良事例として、人々のもつ固定観念を問いかけるテレビコマーシャルが紹介されました。メディアやコンテンツには人々の認識を変える力があることを再認識し、メディア制作に携わる人々がジェンダーや多様性に対するリテラシーを向上させていくことの重要性が指摘されました。

WAW!分科会「女性の参画と紛争予防・平和構築・復興」では、紛争経験国の現場は厳しいため国際社会の協力が必要という点が指摘されました。例えばイラクでは多くの被害者女性たちの精神被害は甚大で当事国のみでは対応できない規模であり復興には手当が必要です。また、新たなテロリスト集団を生まないために、ISISの家族まで罰するのではなく支援すべきという指摘もありました。シリアでは女性を和平交渉の場に参画させるには交渉の場に行けるよう交通費の支給や子どもの預かりなど具体的支援が実を結びました。男性リーダーを巻き込むことや、政府と市民社会が協力することにより平和構築・復興への女性の参画を施し、平和を確実なものとすることが述べられました。

W20分科会「女性起業家が創る新しい市場価値」では、行動指向型の研究、エビデンスに基づく政策などを、40年前にホワイトハウスに働きかけ、女性起業の障害を克服していった実例など、米国における女性起業支援のエコシステムが紹介されました。続いて、社会起業を含む女性起業の経済的インパクト、女性起業の支援に役立つ取り組み等について、各国で既に明らかになっていることをやり直す手間を省くため、成功事例を共有するプラットフォームが有効であるといった意見が出されました。

W20スペシャル・セッション「ジェンダー投資:世界の新潮流」では、ジェンダー投資の専門家が参集し、より多くの資金をジェンダー平等と女性のエンパワーメントに向けるための方策が議論されました。具体的には、投資家、企業、メディアの関心を高めるための戦略、ジェンダー平等の実現に向けて金融機関が果たせる役割やその役割を通じて金融機関が得られるメリット、また、ジェンダー投資を実行するための具体的なツール等についても議論が及びました。

WAW!分科会「多様性を成長に:企業経営や職場環境」では、経営者や役員が多様であると、企業経営の視点が複数になり、思考に柔軟性が生まれ、リスク管理の点からも有用であるため、多様性は企業の成長に繋がることが最初に再確認されました。続いて多様性の高い組織を運営する方策として、女性リーダーの増加、終身雇用等の日本独自の企業文化の撤廃、政府による福祉政策の後押しやハラスメントへの対策が提案されました。

WAW!分科会「家族の未来:頼る・活かす・分かち合う」では、日本では働く夫と専業主婦と二人の子どもという4人世帯が「標準世帯」と長く認識されてきましたが、現在は全体の5%にも満たず、高齢者夫婦世帯と単身世帯が増え、事実婚や同性婚など家族の実態は多様化しているため社会・法制度の見直しが必要なこと、特に日本社会の課題である少子化は男女の賃金格差の解消無しには解決しないことが指摘されました。また、家事育児は女性の主担当ではなく「分担する」という男女平等の意識を幼少期から育むことが必要であり、そのための教育の必要性と重要性が述べられました。

WAW!分科会の様子
WAW!分科会の様子

W20分科会「デジタル時代のジェンダー平等」では、女性は男性よりも12%インターネットへのアクセスが低い状況をはじめ、テクノロジー業界におけるリーダーシップ、開発プロセス等、デジタルに関連する様々なジェンダーギャップの現状について、さらにその背景には教育やインフラ等複雑な要因があることが挙げられました。また、デジタル分野におけるジェンダーギャップの解消やオンラインハラスメントの根絶に向けて必要な取り組み等についても議論されました。

W20スペシャル・セッション「患者や介護者としての女性の就業:健康格差の是正による男女平等と労働参加の向上」では、冒頭の基調講演で、障害を持つ女性が健常者と対等に職場で活躍する「ノーマライゼーション」の概念が紹介された後、パネル・ディスカッションでは、障害を持つ女性、介護を担う女性が職場での機会を確保し、オープンに話せるインクルーシブな職場環境の構築に向けた取り組みについて議論がされました。

3月24日 パネル・ディスカッション、クロージング・セッション等

特別ゲストインタビューでは、伊達公子テニスプレーヤー/JICAオフィシャルサポーターから、人身取引被害者の支援能力向上プロジェクトなど脆弱な立場に置かれた女性への支援の重要性が述べられました。

W20パネル「労働におけるジェンダーギャップを解消する:ハッピーなワークとライフの実現へ」では、労働におけるジェンダーギャップ解消について、労働参加率だけでなく、賃金格差の是正やリーダーシップ層への女性の登用なども含めた向けた取り組みについて議論しました。企業側の取り組みとしては、ジェンダーバイアスを取り除いた評価基準の整備、多様なスタイルを許容するリーダーシップの定義を見直すこと、社会全体や個々人で取り組むこととしては、旧来型の社会的規範を打破し男女ともに職場でも家庭でも、それぞれの価値を提供することの重要性などが挙げられました。

W20パネル・ディスカッションの様子
W20パネル・ディスカッションの様子

クロージング・セッション冒頭では、西村康稔内閣官房副長官が、2日間の議論の内容を総括しました。次に各国から参加した女性外相と阿部俊子外務副大臣が、各国での女性のエンパワーメントのための取り組みや、女性外相として取り組んでいる平和構築への試みについて紹介し、和やかな雰囲気のなか高校生からの質問にも回答しました。続いて本年の議長国である日本のW20を代表して目黒依子、吉田晴乃両共同代表が、昨年議長国のアルゼンチンを代表してスサナ・バルボ前議長が、来年議長国のサウジアラビアを代表してサルマ・アルラシッド代表が、「トロイカ」としてスピーチをつなぎました。閉会挨拶では、安倍昭恵内閣総理大臣夫人が、WAW!/W20の議論を通じて得た「ひらめき」の共有と実践の重要性を述べました。

安倍総理夫人による閉会挨拶
安倍総理夫人による閉会挨拶

 後日、第5回WAW!の成果文書として「WAW!参加者からの提言に基づく総括」が取り纏められ、下記ウェブサイトで公表されました。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000460247.pdf
 またW20のコミュニケも下記ウェブサイトで閲覧できます。
https://w20japan.org/pdf/w20_communique_jp.pdf
 当日の様子は下記ウェブサイトの動画で見られます。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_003059.html


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