「共同参画」2019年6月号

巻頭言

WAW!/W20:国内施策への反映を期待

 12時間に及ぶ議論を経て「W20コミュニケ」が完成したのは、午前1時。安倍総理に手交する8時間前でした。急いで日本語の仮訳を作り、仮眠を取り、会場に戻ると、過去のWAW!とは異なる熱気が満ちていました。今回は、W20との同時開催ということもあり、より一層、国際的な政策枠組みや最新動向を反映した内容になったと思います。持続可能な開発目標(SDGs)、ESG投資、「ジェンダー平等は持続可能で公正な経済・社会の要件」と謳った2018年のG7とG20の首脳宣言と、それらに含まれた「ケアワークの再分配」「賃金格差の解消」「暴力の根絶」「デジタル領域での教育・参画促進」などの合意事項が多角的に議論されました。

 私は、「地方活性化と雇用創出、そのためのリーダーシップ」と「ジェンダー投資:世界の新潮流」に登壇しました。前者では、地方が直面する人口減少とその要因である若年女性の流出をジェンダー問題として捉え、職場や地域の「ジェンダーギャップの解消」に乗り出した兵庫県豊岡市の中貝市長のお話が反響を呼びました。後者では、ジェンダー視点から企業の中長期的な成長見込みやリスクを分析して投資判断に活かす「ジェンダー投資」が大変な速さ・規模で拡大しており、評価指標には男女の育休取得率、セクハラ対策を含む安全な労働環境づくり、サプライヤーとして女性が経営する企業とどれくらいの取引があるか(女性起業家育成への貢献)なども含まれるという報告に会場が湧きました。地方や企業での「女性活躍」にはジェンダー平等の推進が欠かせないこと、また、そのようなビジョンを政策や事業に確実に落とし込むリーダーの存在が日本社会のサステナビリティ(持続可能性)の向上にも不可欠であることを再認識しました。

 第5回WAW!/W20は、「国際社会」と「日本」を繋ぐ貴重な場でした。ここで生まれた学びは、日本国内の全ての女性・女の子に還元されなければなりません。専門家や実務家による真摯な議論の成果である数々の提言が、近く改訂される「まち、ひと、しごと創生総合戦略」「SDGs実施方針」といった国内政策や、ILOの仕事の世界における暴力とハラスメントを禁止する条約の批准に向けた議論に反映されることを期待します。次のWAW!、W20で、具体的な成果を国際社会に報告・発信したいですね。

 

W20運営委員、WAW!アドバイザー 特定非営利法人Gender Action Platform 理事 大崎麻子
W20運営委員、WAW!アドバイザー
特定非営利法人Gender Action Platform 理事
大崎麻子

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