「共同参画」2019年5月号

トピックス1

企業等における仕事と生活の調和に関する調査研究報告書
内閣府男女共同参画局推進課

1.調査の目的

仕事と生活の調和した社会を実現するため、平成19年12月に「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」において、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(以下「憲章」という。)及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針(以下「行動指針」という。)」が策定され(平成22年6月及び平成28年3月に一部改定)、官民一体で取組が推進されています。

平成30年度においては、憲章及び行動指針を踏まえつつ、今後、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス。以下「WLB」という。)を推進するために社会全体で取り組むべき方向性や各主体の役割等を検討する際の参考とするため、WLBに関する現状を把握するための調査研究を行い、報告書をとりまとめました。

2.調査の概要

■ 企業調査

企業におけるWLBの取組の実態を把握し、企業に求められる取組を検討することを目的に、従業員101人以上かつ、農林水産業、公務(他に分類されないもの)を除く企業計10,000社(回収件数2,045件)を対象に調査を行いました。

■ 個人調査

WLBに関する個人の希望の実現度や、希望と実際が一致しない要因など、個人の実態と意識について分析を行うことを目的に、インターネットによるモニター調査(20〜60代の男女・計6,000名)を行いました。

3.調査の結果

■ 企業調査

企業調査により、次の5つの特徴が浮き彫りになりました。

(1) 従業員の規模や業種による違い

管理職への女性の登用状況、正社員の年次有給休暇の取得状況等の取組状況のほか、経営方針や経営課題にWLBの推進等を位置付けている割合についても、規模や業種による違いがみられました。

(2) 企業が取り組むテーマの広がり

企業が、育児のほか介護支援やメンタルヘルス対策、自己啓発支援、私傷病治療との両立支援等幅広いテーマをWLBの取組として認識していることがわかりました。

(3) 推進方針・体制と取組内容との関係

WLB、ダイバーシティ、女性活躍のいずれかを推進する方針や体制がある企業ほど、性別に関わりなく社員の能力発揮を推進することを重視し、多様な働き方や柔軟な働き方の導入に積極的に取り組んでいることがわかりました。

(4) 両立支援の制度の運用と取組の実施状況との関係

労働時間が短いほど有給休暇取得率も高いという関係がみられるなど、休暇を取得しやすい職場づくりのためには長時間労働の解消が必要、労働時間削減が進んでいる企業ほど柔軟な働き方を推進することを重視する等の関係があることがわかりました。

(5) 社員の活躍を促すことを重視し、取組や制度運用上の工夫を行う企業の特徴

性別を問わず社員の能力発揮の推進を重視する企業ほど、管理職女性比率や属性に関わらず活躍できるような人事制度や制度構築を重視する割合が高い一方で、重視していない企業では、休暇を取得しにくい職場環境や長時間働くことが評価される傾向があることがわかりました。

■ 個人調査

WLBで優先したい内容について、いずれの就労形態、あるいは性別においても、「家庭生活」を優先したいという割合が高い傾向にありますが、実際には、正社員、非正社員・男性、雇用者以外の就労者では「仕事」を優先している割合が最も高く、正社員層で希望と実際の不一致率が最も高いという結果になりました。

また、希望と実際の一致に影響を与える要因について、働き方、休み方、職場の状況、評価・処遇等がその要因として大きいとみられます。また、希望と実際が一致している割合は、おおむね60代が最も高く、20代において低い傾向があること、男性・正社員は、女性回答者に比べて希望と実際が一致している割合が低い傾向にありました。

自己啓発については、男性よりも女性の方が課題があると考えており、時間的・金銭的な課題のほか、具体的なノウハウ不足を課題と感じていることがわかりました。

4.今後の取組課題

企業調査から得られた示唆として、WLB等に関する企業の意識や実態については、従業員規模や業種による差が大きいため、こうした偏りを解消していくことが課題といえます。労働時間や休暇取得について好ましい状況にある企業ほど残業削減や休暇取得促進のための取組等に積極的な傾向がみられます。そのため、労働時間の削減や休暇取得に消極的な企業に対しては、多様な人材の活躍や能力発揮が阻害されることを示すとともに、取組方針や体制整備と併せて、効果的な取組等を示し、職場環境の改善を図っていくことが必要であるといえます。また、企業が取り組んでいる両立支援テーマは、介護や私傷病治療、自己啓発支援等、両立支援等多様化しており、今後拡大していくと考えられます。

一方、個人調査から得られた示唆として、労働者が求める柔軟な働き方の導入について、労働者と企業の認識の間に開きがあることがうかがえました。また、働き続けることを希望していたが妊娠・出産等様々な理由から離職した潜在的な労働者層が実際に働けるようにすることや、結婚・妊娠・出産等の際に希望する人が就業継続できるようにすることは、個人の希望の実現のみならず、労働力不足の解消やキャリアの継続による能力の発揮等、社会全体にとってもメリットがあることから、どのような就労形態や働き方であっても、WLBが確保でき、個人が希望する結婚のあり方や夫婦関係の構築が可能な社会を実現することが課題といえます。その解消のためには、社員の働き方が、その社員の家族形成意識にも影響することを踏まえ、特定の事由に限定せず全社員がそれぞれの事情に応じて活用できる柔軟な働き方を推進することも有効と考えられます。


今回の調査結果から浮き彫りにされた課題やそれらを踏まえた、企業、個人など各主体の積極的な取組が求められます。


※ 本調査の全文は下記よりご覧ください。
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/research.html

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