「共同参画」2019年3・4月号

連載/その1

ジェンダー主流化の20年(11)~グローバルな枠組みの基本原則に~
(特活)Gender Action Platform 理事 大崎 麻子

この連載もいよいよ最終回。日本のトップリーダーが自ら署名し、コミットした3つの国際枠組みを考察しましょう。G7サミット、G20サミット、そして、持続可能な開発目標(SDGs)です。

2018年6月のG7サミットでは、議長国カナダのトルドー首相が主導して設置したジェンダー平等アドバイザリー評議会からの提言を踏まえ、首脳宣言の「ジェンダー主流化」が実現しました。ジェンダーと女性に関する独立項目を掲げただけではなく、すべての項目、「成長への投資」「仕事の未来」「平和と安全保障」「気候変動、海洋、クリーン・エネルギー」に、女性・ジェンダーに関する文言を組み込んだのです。例えば「仕事の未来」の項目には、「職場内外での暴力、差別及びハラスメントの撲滅を含め、女性のリーダーシップ及び労働市場への全側面への平等な参加の機会への障壁を取り除く必要性を認識する」、また、「平和と安全保障」の項目には「女性・平和・安全保障(WPS)のアジェンダの実施を強化することを決意する。テロを予防し撲滅するための女性の参加及び視点を含むジェンダーに配慮した措置は、効果的で持続可能な結果、性的及びジェンダーに基づく暴力からの保護ならびにその他の人権侵害・違反の抑制のために不可欠である」と明記されました。

12月1日にアルゼンチンのブエノスアイレスで採択されたG20サミットの首脳宣言は、冒頭で「仕事の未来、開発のためのインフラ、持続可能な食料の未来、そして G20のアジェンダ全体としてジェンダーを主流化する戦略である」と宣言しました。「ジェンダー平等は、経済成長及び公正で持続可能な発展に極めて重要である」とし、「女性と女児に対するあらゆる形態の差別及びジェンダーに基づく暴力を終わらせること」「質が高く安価なケア・インフラや育児休暇へのアクセス等を通じ、全ての人々にとっての労働環境を改善 するため、民間部門と共に取り組むこと」「性別による賃金格差を削減すること等により、女性の経済的なエンパワーメントを促進すること」など、具体的な施策へのコミットメントを表明しています。同年10月にW201がマクリ大統領に手渡した提言の多くが首脳宣言に盛り込まれたのです。今年のG20議長国は日本。W20の提言書は3月23日に安倍総理に手渡されますが、6月のサミットが採択する首脳宣言にどれだけ反映されるか、世界の女性が注目しています。

最後にSDGsです。日本でも民間企業、自治体、メディアで注目度が高まって来ました。しかし、SDGsのどの目標の取組みにおいても「ジェンダー視点の主流化が必要である」という実施原則の周知は進んでいません。総理を本部長とするSDGs国内推進本部が平成28年12月に発表した「SDGs実施方針」には、「実施のための主要原則」として、「ジェンダー平等の実現及びジェンダー視点の主流化は、分野横断的価値としてSDGsの全てのゴールの実現に不可欠なものであり、あらゆる取組において常にそれらの視点を確保し施策に反映させることが必要である」「ジェンダー統計の充実が極めて重要であり、SDGsの実施において可能な限り男女別データを把握するよう努める」と明記されています。とても画期的な方針です。SDGsに関連した啓発・教育活動、企業や自治体による国内外での取組みに「ジェンダー主流化」のアプローチが浸透し、実行に移され、誰一人取り残さない社会が実現することを願います。

W20 ARGENTINA2018

W20 ARGENTINA2018
W20 ARGENTINA2018
W20アルゼンチンのスサナ・バルポ議長からG20議長国アルゼンチンのマクリ大統領へ提言書を手交(2018年10月)
出典:https://w20japan.org/news/news_05.html


G7シャルルボワサミット
G7シャルルボワサミット
首脳宣言の「ジェンダー主流化」が実現。
ジェンダーと女性に関する独立項目を掲げるとともに、すべての項目に女性・ジェンダーに関する文言を組み込んだ
(写真提供:内閣広報室)


G20ブエノスアイレスサミット
G20ブエノスアイレスサミット
首脳宣言では、冒頭に「G20のアジェンダ全体としてジェンダーを主流化する戦略である」と宣言された
(写真提供:内閣府広報室)


執筆者写真
おおさき・あさこ/(特活)Gender Action Platform理事、関西学院大学客員教授
コロンビア大学国際公共大学院で国際関係修士号を取得後、UNDP(国連開発計画)開発政策局に入局。UNDPの活動領域である貧困削減、民主的ガバナンス、紛争・災害復興等におけるジェンダー主流化政策の立案、制度及び能力構築に従事した。現在は、フリーの国際協力・ジェンダー専門家として、国内外で幅広く活動中。『エンパワーメント 働くミレニアル女子が身につけたい力』(経済界)。
内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019
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