「共同参画」2019年2月号

特集1

シンポジウム「つなぐ、架け橋~アジア・太平洋で活躍する女性起業家たち~」
内閣府男女共同参画局総務課

シンポジウム「つなぐ、架け橋~アジア・太平洋で活躍する女性起業家たち~」の開催

平成30年11月18日(日)に内閣府主催のシンポジウム「つなぐ、架け橋~アジア・太平洋で活躍する女性起業家たち~」を開催しました。

本シンポジウムは、内閣府が2016年度から実施している「アジア・太平洋輝く女性の交流事業」の一環として開催したものであり、我が国とアジア・太平洋諸国において活躍している国内外の「架け橋女性」(アジア・太平洋諸国と日本の両国を知り、お互いの国の発展・交流に貢献している女性)の活躍に焦点を当てています。

本年度は、中国、韓国、フィリピン、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、インドの8ヵ国と日本で活躍する女性起業家を22名、各国で女性起業家を支援している団体の方々8名を招聘し、女性起業家がアジア・太平洋諸国と日本の両国でどのような経験をしてきたか、女性の起業や海外進出への課題をどのように克服し、更なる女性の活躍に繋げていくのか議論するとともに、ネットワークの構築を行いました。

基調講演

基調講演では、モム・ルアン・プリーモム・ルアン・プリーヤプン・スリダバット氏(アセアン女性起業家ネットワーク(AWEN)執行役員会長)「女性起業家の海外進出にあたっての女性起業家支援団体の役割とネットワークの力」というテーマで、お話をいただきました。

基調講演の様子
基調講演の様子


AWENは、ASEAN10ヵ国において、女性起業家の発展とネットワーキングを促進することを目的に設立されたものであり、域内の女性起業家のビジネスマッチング・プログラムや展示会等の企画・開催、ビジネスに関する情報や知見の共有、さらに、女性起業家の経営能力やリーダーシップの向上支援等を行っているとの紹介がありました。

また、女性起業家の海外進出支援として、ASEAN 域内のみならず、日本を含む諸外国や国際機関等と連携していくことの重要性、海外ビジネス支援におけるネットワーキングの重要性について語られました。

パネルディスカッション①

基調講演に続き「世界へ向かう女性起業家の課題」をテーマに、荻野みどり氏 (株式会社ブラウンシュガー1ST代表取締役)、山下彩香氏 (エダヤ・リサーチ・コーディリエラ 取締役兼ディレクター)、リン・リー氏(オーフリーチョコレート有限責任株式会社CEO)、チャン・ソンウン氏 (ヨーク代表)によるパネルディスカッションが行われ、濵田真里氏(なでしこVoice代表)がモデレーターを務めました。

パネルディスカッション①の様子
パネルディスカッション①の様子


このセッションでは、各女性起業家からご自身の経験をお話いただいた後、海外で起業することの課題や、その克服方法について意見が交わされ、最後に起業、事業の海外進出を目指す会場の一般参加者に向けてメッセージを発信していただきました。

荻野みどり氏は、「わが子に食べさせたい食材かどうか」を基準に、食材を厳選している食品会社を経営し、ココナッツオイル等のオーガニック食材の輸入販売をしています。

「もうけることは悪いこと、汚いこと、卑しいことのように思っている日本人女性が多いですが、稼ぐことはお金を循環させ、多くの雇用を生み、人々の生活を豊かにしたり、文化をつくったりすることにつながっていきます。もうけること=悪というマインドを取り払って、事業を進めていけたら面白いんじゃないかなと思います。」とメッセージを送りました。

山下彩香氏は、フィリピンでデザインとアートと教育のプロジェクトを立ち上げており、竹のジュエリーや楽器のデザイン・制作を行っています。

「生まれつき左耳が聞こえなくて、弱者と寄り添いたいという思いから、フィリピンの少数民族の失われつつある文化を形にしていくということを始めました。自分自身の強い思いを大切にするとともに、突破する行動力も大事です。一度行動すると、人はついてきてくれ、行動を起こすとそこにさらに共感が集まって、次々といろんなことが起こっていきます。」とメッセージを送りました。

リン・リー氏は、チョコレートを扱う店舗をシンガポールで経営するほか、中国にも出店しています。

リー氏は、「ビジネスを海外に拡大したいというときには、オープンマインドを持って、アドベンチャーを楽しむという気持ちも忘れないでください。何事も完璧に進むということはなく、時には、問題も起きます。うまくいかないときにも立ち向かっていく、そういう強さが必要です。」とメッセージを送りました。

チャン・ソンウン氏は、ソーラー・ペーパーをはじめとする太陽光関連製品の開発・製造をする会社を経営しています。また、アフリカの農村の小学校に太陽光発電装置を設置することで、途上国支援にも携わっています。

「ビジネスを始めるというのは怖いことであると思ってしまい、先延ばしにする人は多いけれど、今、始めましょう。完璧な準備というものなど、存在しません。いったん始めれば、いろいろな人と出会うことができ、関係者、支援者など多くの人たちと関係を築いていき、それを通して学んでいきます。 「女性だから何か大変なことありますか」とよく聞かれますが、女性だから大変と感じたことはありません。それよりも、女性であることをメリットだというふうに捉えることのほうが多いです。女性起業家というのは非常に希少な存在なので、価値があります。」とメッセージを送りました。

パネルディスカッション②

続いて、「女性起業家を支援する女性起業家支援団体」をテーマに、藤沢薫氏 (全国商工会議所女性会連合会会長、東京商工会議所女性会会長)、ファディラ・マジド氏 (シンガポール・マレー商工会議所副会長兼女性部代表)、リナ・ゾエット氏 (インドネシアビジネス女性協会事務総長常任委員長)によるディスカッションが行われました。モデレーターは、横田響子氏 (株式会社コラボラボ代表取締役)が務めました。

パネルディスカッション②の様子
パネルディスカッション②の様子


藤沢氏からは、全国商工会議所女性会連合会は、昭和44年に設立され、今年で創立50周年となったこと、全国416の商工会議所に女性会があり、2万2000人の会員を持つ日本で最大の女性経営者の団体であるとの説明がありました。また、女性起業家大賞を毎年実施しているほか、起業を考えている方へ金融機関の紹介等、各種支援のプログラムを行っているとの紹介がありました。

ファディラ・マジド氏からは、シンガポール・マレー商工会議所では、ファイナンスやマーケティング等の女性起業家の能力強化のプログラムの提供や海外視察、展示会への参加を通じたビジネスマッチング等の取組、成功している起業家を招いての経験の共有を図るとともに、会員同士のネットワーキングの活動を行っているとの紹介がありました。

リナ・ゾエット氏からは、インドネシアビジネス女性協会は3万人以上のメンバーを擁しており、資金へのアクセスの提供、メンバー間の相互のネットワークの醸成、表彰の実施などを行っていることを紹介しました。

ディスカッションの最後に、登壇したパネリストの方々からは、このシンポジウムをきっかけとして、日本を含め、アジア・太平洋各国の女性起業家支援団体のネットワークを深めていきたいとの提言がありました。

グループディスカッション

パネルディスカッション後、登壇者、架け橋女性、女性起業家支援団体、一般参加者を交え、10のグループに分かれて、グループディスカッションを行いました。

グループディスカッションは、女性起業家が起業後3年目をどう乗り越えるか、女性起業家が直面する課題とその克服方法(資金調達、ワークライフ・バランス等)、女性起業家が海外進出する際の心得、女性起業家支援に求められること等をテーマに話し合われました。

実際にアジア・太平洋地域で起業を経験した架け橋女性や女性起業家を支援している団体の役員の方から直接お話を聞ける機会とあり、どのグループでも非常に活発な議論が行われ、架け橋女性の知見、経験などの共有が行われました。

参加者からの反響

本シンポジウムには、約90名の一般参加者にご来場いただきました。シンポジウム終了後に行われたアンケートでは、「勇気をもらえた」、「海外の起業家と繋がりを持つチャンスをもてた」などの感想が寄せられました。

女性起業家・女性起業家支援団体の交流

シンポジウムの翌日、11月19日(月)には、シンポジウムに参加された日本やアジア・太平洋諸国で活躍する女性起業家、女性起業家支援団体の方々の交流を深めるため、意見交換を実施しました。

女性起業家である光畑由佳氏(有限会社モーハウス代表取締役)、高垣 絵里氏(ペーパーミラクルズ代表取締役社長)、立川真由美氏(まかないこすめ/株式会社ディーフィット代表取締役)の3名をゲストスピーカーとしてお招きし、ご自身のビジネスの紹介をしていただいた後、グループに分かれて、「社会課題の解決をめざす女性たち」をテーマに議論を行いました。

報告書

本シンポジウムを含む事業の結果については、平成30年度内に報告書を取りまとめ、内閣府HP等で公表予定です。起業に興味を持っている方や、既に日本国内で起業しており、海外進出を目指している方、将来の進路を思案されている方は、ぜひ読んでいただき、迷った際の道しるべとしていただけると幸いです。

シンポジウムに参加された女性起業家、女性起業家支援団体の方々
シンポジウムに参加された女性起業家、女性起業家支援団体の方々


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