「共同参画」2018年12月号

特集

各国の駐日大使からのメッセージ(各国の男女共同参画の取組)

バングラデシュ、カナダ、フランス、ニュージーランド、スウェーデン、イギリス
6か国の駐日大使より、男女共同参画の取組に寄せたメッセージをご寄稿いただきました。

スウェーデンにおける男女平等の歩み
駐日スウェーデン大使 マグヌス・ローバック閣下からのメッセージ

駐日スウェーデン大使


本年はスウェーデンと日本の外交樹立150周年記念であり、様々なイベントが開催され、4月には国王王妃の訪日もありました。私の赴任以来3年連続で9月をジェンダー月として行っていたジェンダーセミナーについても、本年は「男女平等を実現する手段としての税制―スウェーデンの経験と日本の選択」と題し、スウェーデンで所得税を夫婦単位の課税から個人単位に切り替えたことで社会がどのように反応したか、また政治的抵抗をどのように克服したかなどを2人のスウェーデン人有識者が発表し、日本の税制改革の参考になるか、などを議論しました。またこれに合わせ、スウェーデンのジェンダーに関わる改革の歴史の年表などの展示も同時に行いました。

ジェンダーセミナーの様子
ジェンダーセミナーの様子

ジェンダーに関する歴史年表の一部
ジェンダーに関する歴史年表の一部
(1972年 配偶者との共同課税が廃止される(1971年に法成立、翌1972年に施行))


1971年の税制改革はやはり特筆に値します。すでに産業界では人手不足が進み、女性の労働市場への進出は始まっていましたが、この所得税改革(完全には1991年に個人単位の税制となる)により、既婚女性が有償労働に参画する心理的なバリアが取り除かれました。政治的にも反対は多く、与党の社会民主党内でも意見は割れていましたが、女性自身が経済的自立を望んだことが世論の後押しをしたようです。そして女性の賃金が上昇し、既婚女性の労働市場への進出が本格化すると、保育の整備が必要となりました。

保育制度は急速に拡大され、制度を利用する子供は1972年には12%でしたが1985年には50%となり、今では1〜5歳児の85%がプレスクールに登録しています。また公的保育サービスは安価で、収入に関わらず一人目の保育料の月額上限は16,000円程度です。

 スウェーデンは世界に先駆けて、それまで母親のみが取得できた出産休暇から、両親双方が取得できる育児休暇を1974年に導入、同時に公的保育制度の整備を決定しました。また男性の育児休暇取得を促進するため1995年には30日間の「父親月間」を導入。2002年には「父親月間」を60日に延長、2016年からは両親合わせて取得できる480日のうち90日が「父親月間」とさらに延長されました。このような制度改革により、今では10人中9人の男性が育児休暇を取るようになりましたが、休暇の長さではまだ女性のほうが長く、不平等は完全には解消されていません。

政治の世界でも、この9月の選挙の前まで政権の座にいた政府では、閣僚の半数は女性、国会議員の議席も44%が女性でした。9月の選挙では349議席中161議席を女性が占め、46%となりました。一院制となった1971年には14%だった女性議員の比率は、1990年代に与党社会民主党が候補者名簿を男女交互とするジッパー制を導入し、他の政党でも女性議員の比率を高める努力をしたため、今では40%を超えています。

政治および公的セクターに比べ、民間部門では女性の役員の数等まだ改善の余地があります。2016年の段階で上場企業における女性の取締役は32%、数年間でかなりの改善がみられたものの、平等になるには10年かかると言われています。役員を指名する側の10人に9人が男性だからです。また平均月給額についても職種やセクターの違いなどを考慮しても説明できない4.5%の男女格差(2016年)があります。今後はこの分野においての改善に力を注いでいかなければならないということが認識されています。

国会女性議員の比率
国会女性議員の比率


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