「共同参画」2018年12月号

特集

各国の駐日大使からのメッセージ(各国の男女共同参画の取組)

バングラデシュ、カナダ、フランス、ニュージーランド、スウェーデン、イギリス
6か国の駐日大使より、男女共同参画の取組に寄せたメッセージをご寄稿いただきました。

ニュージーランドにおける男女共同参画の取組と女性参政権取得の歴史
駐日ニュージーランド大使 スティーブン・ペイトン閣下からのメッセージ

駐日ニュージーランド大使


2018年はニュージーランドの女性にとって記念すべき年でした。6月にジャシンダ・アーダーン首相とパートナーのクラーク・ゲイフォード氏の間に第1子のニーブちゃんが誕生し、首相は6週間の産休を取得しました。選挙で選ばれた世界のリーダーの中で、在任中の出産は2人目、産休の取得は初めてのことでした。また、9月のニューヨークでの国連総会にニーブちゃんを同行させたことも話題となりました。

「First Baby」のニーブちゃん
アーダーン首相、パートナーのゲイフォード氏、「First Baby」のニーブちゃん
(出典:NZ Herald/Mark Mitchell)


クラーク元首相の発言にもありますが、首相の妊娠が明らかになった祝福の日は、ニュージーランドが成熟した国であり、キャリアと家庭の両立は女性の自由な選択であることを受け入れたことを示す日でもありました。またゲイフォード氏が喜んで幼い子どもの育児に専念する姿が、現代のニュージーランド男性らしいと称賛されました。

さらに今年、女性の参政権125周年を迎えました。ニュージーランドで女性の参政権が認められたのは1893年、世界で初めてのことでした。この運動は10ドル紙幣の肖像にもなっている素晴らしい女性、ケイト・シェパード氏によって率いられました。運動には多くのマオリの女性も参加しました。代表的人物がメリ・テ・タイ・マンガカヒアです。彼女はさらにマオリ議会議員の被選挙権を女性にも認めるよう求める活動も行いました。

ケイト・シェパード氏と全国女性評議会メンバー
ケイト・シェパード氏と全国女性評議会(National Council of Women)メンバー(1896年)


女性参政権獲得への道のりは決して平坦ではく、長く困難なものでした。法案は何度も否決され、最終的に僅差で可決しました。投票直前に2名の議員が反対から賛成へ方針転換をしたためです。その2カ月後の総選挙で女性の投票が初めて実現し、多くの女性が投票所に詰めかけました。しかし、まだ完全な勝利と言える段階ではありませんでした。女性初の国会議員が誕生したのは、それから実に40年も後のことです。中国系の人々は男女ともに1952年まで選挙権がありませんでした。また女性が初めて首相になったのは、1997年の出来事した。

現在、首相、総督、最高裁長官と、国の最も枢要な3つのポストは女性です。また、アーダーン首相は、ジェニー・シップリー氏、ヘレン・クラーク氏に続く3人目の女性首相です。

歴代の女性首相
歴代の女性首相 右からヘレン・クラーク元首相、ジャシンダ・アーダーン現首相、ジェニー・シップリー元首相
(出典:NZ Herald/Babiche Martens)


現在の国会における女性議員の数は過去最高で、議員総数120名のうち40%は女性からなり、マオリ系、太平洋島嶼国系、アジア系の女性も多数含まれています。女性国会議員の増加の背景には、小選挙区制から比例代表制への選挙制度の移行も影響しています。比例代表制では政党名簿に載ることが国会議員になるためのひとつの道です。各政党は女性候補を多く含むことで、ニュージーランド社会の多様性を反映した多様な候補者からなる名簿の構成に努めています。

ニュージーランドの完全なジェンダー平等の実現に向けては、まだ課題が残っています。現在も女性が企業の役員・管理職や経営職を占める割合は低く、諸外国と同様に「#MeToo」運動によって、女性が差別やセクシャルハラスメントを経験していることが明らかになりました。また男女の賃金格差は約10%あり、低賃金労働に従事するのは女性が多く、さらには家庭内暴力の被害を受けている女性も数多くいます。

9月の国連総会で行った演説の中で、アーダーン首相は次のように述べています。

「現代においてもなお、ジェンダー平等に改めて尽力しなければならないことは驚きですが、それが現実です。ニュージーランドは女性のためにいくつもの成果を達成してきましたが、私自身は、それを喜ぶつもりはありません。世界には、最も基本的な機会と尊厳すら持てない女性や少女がいるからです。『Me Too(私も)』は『We Too(私たちも)』にならなければなりません。これは私たち全員の問題です。」

ニュージーランド外務貿易省では夫婦のどちらかが海外へ赴任する場合、配偶者の長期休暇取得を自動的に認めるなど女性のキャリアと家庭の両立を支援しています。私と妻のジャネット・ローは共に外交官です。このような制度のおかげで、共に支え合いながら二人の娘を育て、外交業務を継続することができただけでなく、共に大使のレベルにまで達することができました。

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