「共同参画」2018年12月号

特集

各国の駐日大使からのメッセージ(各国の男女共同参画の取組)

バングラデシュ、カナダ、フランス、ニュージーランド、スウェーデン、イギリス
6か国の駐日大使より、男女共同参画の取組に寄せたメッセージをご寄稿いただきました。

カナダのジェンダー平等について
駐日カナダ大使 イアン・バーニー閣下からのメッセージ

駐日カナダ大使


2015年、カナダのトルドー首相が15名の女性閣僚を任名したことが世界中で大きなニュースになりました。カナダの歴史上初めて、男女同数の閣僚で構成される内閣が誕生しました。この勇気ある決断の理由をたずねられたとき、首相はさらりとこう答えました。「もう2015年だから」。

このとき私たちは、完全なジェンダー平等を目指すカナダの取組が、困難を乗り越えて大きな進歩を果たしたことを強く実感しました。20世紀初めまでカナダの女性には投票権がなく、政治家になる権利もありませんでした。事態が変わり始めたのは1916年から1917年にかけてのことです。一部の州で初めて女性に投票権が認められ、連邦政府もすぐにこれに続きました。そして、1921年には初の女性国会議員が選出されました。

現在カナダでは、連邦法や州法、さらにカナダ憲法の一部を成すカナダ人権憲章によって、女性が差別を受けないようにしています。女性は今や大学卒業生の半数以上を占め、労働参加率は74.4%(2017年)となり、労働人口の半分に迫ろうとしています。しかも働く女性の大多数(70%弱)が幼い子どもを持つ母親です。また最近の調査では、医師の40%が女性であり、若年層では女性医師の数が男性医師を上回っていることから、数年のうちに男女同数となる見込みです。

ジェンダー平等へのカナダの取組は大きな成果を上げていますが、一方で課題も残されています。例えば、指導的地位に就く女性は依然として少なく、大企業の取締役では20%余り、国会議員では27%にすぎません。また状況が改善しつつあるとはいえ、いまだ家事・育児・介護の負担は女性の方が重く、収入は男性より少ない状態が続いています。したがって完全なジェンダー平等の実現は、カナダ政府にとって引き続き国内外で主要な優先課題になっています。

カナダ政府は、国内のさまざまな分野で取組を行っています。STEM(科学・技術・工学・数学)分野に携わる女性を増やす施策を継続しているほか、女性の企業経営者増加に向けて資金調達やネットワークづくり、専門知識習得の支援を行っています。また、賃金格差を解消するため、賃金体系の透明化を推進する施策を導入したり、連邦政府の規制下にあるセクターでは同一賃金制度の整備を積極的に進めています。さらに、手ごろな価格の保育サービスへの支援に加え、家庭内での育児負担をより平等化するための新しい育児支援制度も導入しました。

ジェンダー平等を進展させるためには他国との協力も不可欠です。2017年には、女性・少女のエンパワーメントとジェンダー平等を中核として開発援助を行う「フェミニスト国際援助政策」を初めて策定しました。また今年、G7サミットで議長国を務めた機会を活用し、トルドー首相の主導でジェンダー平等アドバイザリー評議会を設立しました。この評議会には日本から、国連女子差別撤廃委員会(CEDAW)の元委員長であり、女性の人権保護活動に長年取り組んでこられた専門家である林陽子氏にご参加いただきました。

また今年9月にモントリオールで開催した女性外相会合には、河野太郎外務大臣をお迎えしました。先のG7サミットでジェンダー平等推進に向けてカナダと日本が緊密に連携したことに加え、大臣がこの会合にご出席くださったことで、両国が女性の政治的・経済的エンパワーメントをどれほど重視しているかが示されました。日本では2019年のG20サミット開催に向けた準備が進められていますが、カナダは引き続き日本と協力し、ジェンダー平等実現を推進していきます。

女性外相会議
カナダとEUが共催した女性外相会議(2018年9月モントリオール)
河野太郎外務大臣は、唯一の男性参加者


昨年の国際女性デーにトルドー首相は次のように宣言しました。「私たちは共に手を携えて、女性や少女たちが高い障壁やガラスの天井に阻まれることなく、それぞれの能力を自由にいかんなく発揮できる世界を作ることができる」。私自身も3人の娘を含む4人の子に恵まれた父として、人間の能力は性別では決まらないということを十分に理解しています。性別によって将来の可能性を決めつけたり制限したりすることは、絶対にあってはならないと考えます。

「“おとう飯”始めよう」キャンペーン
大使が三女と参加した「“おとう飯”始めよう」キャンペーン。
カナダでは、父親もよく家族と一緒に料理をします。

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