「共同参画」2018年8月号

連載/その3

震災の経験と教訓を未来へ―誰もが自分らしく暮らせる街を目指して
仙台市長 郡 和子

仙台市章

先般の、大阪北部地震や西日本豪雨などの災害によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された全ての方に心からお見舞い申し上げます。

東日本大震災当時、私は国会議員の立場にあり、東日本大震災復興対策担当大臣政務官として様々な被災地に足を運びながら復興のために尽力してまいりましたが、昨年8月に仙台市長に就任し、多くの災害の報に触れ、地方自治体として都市の防災力を高めるためには、非常時ではない、平時に何をしておくべきかを問われていると感じています。

仙台は、昭和62年3月に男女共同参画推進のための拠点施設を全国に先駆けてオープンさせたほか、東北唯一の専管財団である(公財)せんだい男女共同参画財団や、男女共同参画を掲げて活動する市民団体などとともに長年取組を進めてきたという自負がありました。

それでも、あの震災では、人々の固定的性別役割分担意識が顕在化し、多くの女性が様々な困難に直面しましたし、そのことがなかなか問題として認識されませんでした。男女共同参画が仙台の地にまだまだ根付いていないことを私たちに思い知らせる、とても重い意味を持つものでした。

そうした中、一つの契機として、平成27年3月に仙台が会場となった第3回国連防災世界会議では「仙台防災枠組2015-2030」が採択され、これまで災害弱者とされていた女性について、防災・減災の「推進主体」としての役割や、女性のリーダーシップ促進の必要性が明記されました。

本市では、震災での教訓や、この仙台防災枠組を受けて、男女共同参画の視点を反映した防災・復興まちづくりの重要性、さらには、平常時から地域活動、企業等の意思決定の場に女性が参画していることが防災の視点からも大変重要であることを、財団とともに様々な機会を捉えて国内外に発信しています。

また、人材育成については、ノルウェー王国からの支援で設立した「東日本大震災復興のための女性リーダーシップ基金」を活用し、平成27年に企業等の女性管理職候補育成を、さらに28年には地域での防災・まちづくりで活動する女性のリーダー候補育成を開始し、すでに多くの修了者が活躍の場を広げています。

しかしながら、最近の災害における報道でも、例えば避難所で、女性専用スペースの確保や支援物資の配布方法などに女性の意見が取り入れられず、苦しい、つらい思いをしながらも、「非常時だから仕方ない」と我慢してしまいがちな女性が多く見受けられます。

改めて、どの地域でも災害が起こる可能性があることを念頭に、発災時に女性が苦しい立場に置かれることがないように、そして、よりよい復興を遂げるためにも、平常時からの男女共同参画の重要性を発信していくことが、震災を経験した仙台の、次世代に対する責務だと感じています。

これからも、市民や事業者と協働しながら、こうした内外に向けた取組を進め、多様な市民がお互いを尊重しながら自分らしく暮らせる「杜の都・仙台」を未来へ届けていきたいと思います。

執筆者写真
こおり・かずこ/仙台市出身。東北学院大学経済学部を卒業後、昭和54年4月東北放送株式会社に入社、報道制作局部長などを歴任。衆議院議員として4回当選、内閣府大臣政務官、東日本大震災復興対策担当大臣政務官を歴任。平成29年8月第35代仙台市長に就任し、現在に至る。趣味はスポーツ観戦。座右の銘は「誠実・果敢」。
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