「共同参画」2018年5月号

行政施策トピックス1

「政治分野における男女共同参画の推進に向けた地方議会議員に関する調査研究報告書」の公表について
内閣府男女共同参画局推進課

■背景・目的等

1.第4次男女共同参画基本計画においては、「民主主義社会では、男女が政治的意思決定過程に積極的に参画し共に責任を担うとともに、多様な意思が政治や社会の政策・方針決定に公平・公正に反映され、均等に利益を享受すること」が必要であり、政治分野における男女共同参画のためのさらなる取組が重要であるとされています。

2.政治に多様な民意を反映させるためには、国会のみならず、住民の生活により身近な存在である地方政治においても、女性の政治参画を拡大していくことが重要です。しかしながら、地方議会における女性議員比率は、都道府県議会が10.1%、市区議会が14.9%、町村議会が9.9%(平成29年12月31日現在 総務省調べ)と低い水準にとどまっています。

こうした現状を踏まえ、内閣府では、政治分野における男女共同参画の推進に資する情報提供を目的として、現役の女性地方議員を対象にアンケート調査等を行い、女性議員の実態を把握するとともに、女性地方議員が増えない要因等の分析、検討を行いました。

■先行研究の参照および企画委員会による検討

本調査研究に先立ち、我が国の女性地方議員の実態に関する先行研究を参照するとともに、有識者による企画委員会を設置して議論を行いました。その結果、本調査では、女性議員の割合の少ない要因検討に際して、次の観点から調査の設計及び分析を行いました。

  • ① 女性の政治参画に関する周囲(家族や地域、男性議員等)の意識や理解
  • ② 議員生活と家庭生活(子育てや介護等)との両立
  • ③ 選挙活動や議員活動をする上での経済的側面

■調査内容

1.アンケート調査の対象

全国の女性地方議員4,170名(平成28年12月31日時点)を対象とし、各議会事務局を通じて所属する女性議員にアンケート票を配布して、調査を行いました。(回収率は39.6%)

2.アンケート調査の構成

アンケート票は、3部構成となっており、第1部では選挙活動に関する質問として、立候補の理由や選挙費用における自己資金の割合等を、第2部では議員活動や議員活動を行う環境に関する質問として、産前・産後休暇、育児休暇等の明文化の有無や託児所・授乳室等の環境整備状況、及び、女性地方議員が少ない原因として考える理由等を、第3部では、回答者自身の属性に関する質問として、所属政党、最終学歴、婚姻状況等の属性を調査項目としました。

3.ヒアリング調査

女性の参画を促進する啓発活動やロールモデル情報の発信等の取組等を行なっている地方議会等に対し、女性議員の参画を促進している事例の収集を目的としてヒアリング調査を行いました。

■調査結果

1.回答者の属性

アンケートでは、回答者の属性に関し、所属議会分布及び年齢分布については、都道府県議会、市区議会、町村議会ごとに実際の女性議員数の分布とおおむね一致しており、我が国の女性地方議員の実態に即したサンプルを収集することができました。

2.女性議員の増加を阻む原因

アンケート調査への回答では、地方議会において女性議員の増加を阻む原因として、以下の事項が考えられると指摘されました。

① 政治は男性のものという意識(固定的性別役割分担意識)

「女性議員が少ない原因として考えられる理由」を尋ねたところ、「家族や周囲の理解が得づらい」との回答が約7割、「政治は男性が行うものという固定的な考え方が強い」との回答が約6割を占めました。

また、女性議員比率が高い議会に所属する議員ほど、「男性議員の理解やサポートがない」ことを課題としていない傾向があるという結果となりました。

② 議員活動と家庭生活の両立環境が整備されていないこと

育児に伴う休業制度や、託児や授乳室の有無に関する質問に対し、産前・産後休暇については、約6割以上、育児休暇については約8割が「明文化されていない」と回答、託児所や授乳室は約9割以上が「設置されていない」と回答しており、女性用トイレすら整備されていないとの回答もありました。

また、40歳以下で未就学児を抱える女性議員のうち78.8%が「議員活動と育児の両立が難しい」と回答しました。

③ 経済的な負担が大きいことについて

選挙資金における自己資金の割合に関する質問に対し、自己資金の割合は平均で6割程度であり、女性議員比率が高い議会に所属する議員ほど、選挙費用の自己資金の割合が低い傾向にあることがわかりました。

3.ヒアリング調査による事例収集

アンケート結果を踏まえて実施した地方議会に対するヒアリング調査では、女性議会など、実際に女性地方議員の輩出に繋がっている取組や議員の共有スペースでの育児サポートの実施等、議会における環境整備の事例等を得ることができました。

■今後の方向性

以上の調査結果を踏まえ、地方議会において女性議員を増やすためには、今後の取組として以下の視点が考えられます。

  • ① 政党や団体が性別にかかわらず能力に基づいて立候補を要請すること、女性議会等による女性人材の育成、研修機会の付与、ハラスメントや差別の防止に関する研修を行うことにより、政治は男性のものという意識の改革を行うこと。
  • ② 休暇や休業制度の明文規定の創設や、議会における託児所や授乳室の整備。
  • ③ 経済的な負担軽減のため、政党や団体による経済的支援を行うことや、議員とその他の職業を兼業しやすい仕組みを導入すること。

■まとめ

本調査研究において抽出された課題の情報を活用しつつ、どのような対応を行えば女性地方議員が増加するのかということについて、今後も継続的に調査を実施していく必要があります。  

今回の調査結果は、男女共同参画局HPからご覧いただくことができます。

◎調査研究報告書はこちら
http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/local-councilor_h29.pdf別ウインドウで開きます

調査研究報告書のQRコード

政治分野における男女共同参画の推進に向けた地方議会議員に関する調査研究報告書(概要)

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