「共同参画」2018年5月号

特集1

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2017(概要)
多様で柔軟な働き方で、みんなが変わる、社会が変わる
~はじめの一歩は男性の家事・育児・介護から!~
内閣府男女共同参画局仕事と生活の調和推進室

仕事と生活の調和が実現した社会に向けて、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(2007年12月策定)に基づき、官民一体となって、様々な取組が進められています。「仕事と生活の調和連携推進・評価部会」では、「行動指針」の数値目標に向けての取組の進捗状況について点検・評価し、現状の報告と、今後の課題を「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート」にまとめ、毎年公表しています。

2017年度のレポートでは、今後重点的に取り組む課題として、「仕事と家事・育児・介護の両立」を特集しました。以下、特集を中心に、最新の情報と今後の課題について御紹介します。

1.男性の家事・育児関連時間の現状

総務省「平成28年社会生活基本調査」によると、6歳未満の子どもをもつ男性の家事・育児関連時間は、2011年は2006年に比べて7分増加しましたが、2016年は2011年に比べて16分増加し83分になりました。その内訳を見ると、家事17分、看護・介護1分、育児49分、買い物16分となっています。男性の家事・育児時間は増加傾向が見られるものの、行動指針における数値目標(150分/2020年まで)に対して、低水準で推移しています。

1996年以降の夫の家事・育児関連時間は増加傾向にありますが、妻と比較すると、圧倒的に短い状況です。(図表1)

図表1 6歳未満の子どもをもつ夫の家事・育児関連時間(1日当たりの内訳)


夫の家事・育児関連時間を諸外国と比較すると、他の先進国よりも低い水準にとどまっています。また、妻は、他の先進国と比較すると家事・育児関連時間は長くなっています。(図表2)

図表2 6歳未満の子どもをもつ妻・夫の家事・育児関連時間(1日当たり)―国際比較―


2.男性の育児休業取得と家事・育児参画

内閣府経済社会総合研究所「男性の育児休業取得が働き方、家事・育児参画、夫婦関係等に与える影響」から、第一子出生後(1歳時)の男性の家事・育児参画の状況を見ると、育児については、育児休業取得・非取得の差はそれほど大きくは見られませんが、家事では育児休業取得者の行動者率が高い状況が見られました。(図表3) 次に、男性の家事・育児参画が育児休業の取得によりどのように変化するかを分析したところ、育児休業取得者の方が非取得者に比べて家事・育児への参画の増加が大きい傾向が見られました。(図表4)

図表3 男性の家事・育児参画の状況(第1子出生後)


図表4 男性の家事・育児参画の状況(第1子出生前後)


3.男性の育児休業取得率

男性の育児休業取得率については、2000年代前半までは1%を下回っていましたが、その後わずかな増減を繰りかえし、2016年度は民間企業が3.16%と前年より0.51ポイント上昇し着実に増えてきているものの、依然として非常に低い水準で推移しています。(図表5)

図表5 男性の育児休業取得率


4.介護の現状

今後、高齢化の進展が見込まれる中で、仕事と介護の両立は重要な課題です。15歳以上でふだん家族を介護している人(以下「介護者」という。)を見ると、2016年は698万7千人で、2011年から15万8千人の増加となっています。男女別に見ると、男性が277万6千人、女性が421万1千人で女性が介護者全体の約6割を占めています。(図表6)

介護者のうち、介護・看護を行った人の行動者平均時間は、2016年は男性が152分、女性が148分と、初めて男性が女性を上回りました。(図表7)

図表6 男女別介護者数の推移 図表7 介護者の介護・看護の行動者平均時間の推移


5.男性が家事・育児等に積極的に参画するために必要なこと

男性が家事、子育て、介護、地域活動に積極的に参加するためにはどのようなことが必要と思うかを聞いたところ(複数回答)、「夫婦や家族間でのコミュニケーションをよくはかること」が59.4%と最も多く、次いで「職場における上司や周囲の理解を進めること」、「男性自身の抵抗感をなくすこと」が共に57.0%となりました。(図表8)

図表8 男性が家事、子育て、介護、地域活動に積極的に参加するために必要なこと


6.男性の家事・育児参画へ向けた取組

男性の家事・育児の参画を推進するため、国や地方公共団体において「“おとう飯”始めようキャンペーン(内閣府)」(図表9)や「みえの育児男子プロジェクト(三重県)」(図表10)などの取組が行われています。また、仕事と子育てとの両立に資することを目的として、働き方に応じた多様で柔軟な保育サービスを提供する「企業主導型保育事業」を利用した企業内保育所(図表11)などが広がりつつあります。

図表9 おとう飯キャンペーンロゴマーク
詳細は⇒ http://www.gender.go.jp/public/otouhan/index.html


図表10 みえの育児男子プロジェクトロゴマーク
詳細は⇒ http://www.pref.mie.lg.jp/D1KODOMO/000117883.htm


図表11 企業主導型保育事業を利用した保育施設
詳細は⇒ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/outline/gaiyo.html


7.今後の課題

男女が共に仕事と子育てを両立できる環境の整備は、女性が活躍できる環境整備としても、男性が子育てを積極的に行うことを促進するためにも、非常に大きな課題になっています。夫婦共働き世帯の増加など、家族の形が変化すると同時に、子育てに関わりたいと思う男性の増加など働き方や生き方に対する希望も多様化しています。一方で、男性の育児休業取得率は着実に増えてきているものの、依然として低く、共働き世帯でも、約7割の男性が全く育児を行っていません。男性が仕事と育児を両立するためには、育児を積極的にする男性「イクメン」の普及など職場や男性を取り巻く人たちを含め、男性の働き方や意識の改革を進めることが必要です。また、子どもの頃からの男女共同参画の理解の促進に向けた取組や男女共同参画について国民的広がりを持った広報・啓発活動を展開することが重要です。

今後、高齢化が一層進展することが見込まれる中で、仕事と介護の両立も重要な課題です。年間約10 万人の労働者が家族の介護や看護を理由として離職しており、企業にとっても大きな損失となっています。このため、フルタイムで働いていても親等の介護を担えるよう、介護休業等の多様で柔軟な働き方を可能にしていくための環境整備を進めるとともに、社会全体で高齢者介護を支える仕組みが必要です。加えて、働きながら介護に従事する人が、介護休業等の働き方に関する制度のみならず、介護保険制度等地域における高齢者介護を支える仕組みについての知識・情報を得られるよう国、地方公共団体等が取り組んでいくことも重要な課題となっています。

2017 WLBレポートの詳細は⇒ http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/report-17/zentai.html

図表11 カエル!ジャパン

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