「共同参画」2018年1月号

特集

女性リーダー育成事業「女性役員登用の閣議決定目標『2020年10%』達成に向けて」
内閣府男女共同参画局総務課

<女性リーダー育成事業>
モデルプログラムに基づいた研修の試行実施が始まりました

内閣府では、第4次男女共同参画基本計画(平成27年12月閣議決定)において、上場企業役員に占める女性の割合を「5%(早期)、更に10%を目指す(平成32年)」こととしています。平成29年7月現在、上場企業における女性の役員割合は3.7%となっています。

この目標の達成に向け、平成28年度に女性役員の効果的な育成の在り方を検討し、研修モデルプログラムを策定しました。今年度は、このモデルプログラムに基づき、10月から神奈川・京都の2箇所において「女性役員育成研修」を試行実施しています。

今号ではここまでの研修の状況についてお伝えします。

■研修の概要

企業経営層による講演と講義の組み合わせで実施しており、5回の研修とフォローアップ研修1回の全6回実施しています。(図1)

<(図1)女性役員育成研修 試行実施プログラム>

○対象者

神奈川県在勤者及び在住者、京都府在勤者及び在住者のうち、いずれかに該当する方であり、

  • ・内部昇進により役員に選抜されることが見込まれる、または期待される、上級管理職・執行役員候補等
  • ・社外取締役・社外監査役候補等
  • ・企業経営や管理責任に携わった経験を有し、社内・社外を問わず、将来、役員として活躍を望む方、または活躍を期待する方

を対象としています。
※原則、職務経験10年以上の方を対象としています。

○また、以下の各自治体及び経済団体と共催して実施しています。

  • <神奈川>
  • ・かなテラス(神奈川県立かながわ男女共同参画センター)
  • ・横浜市
  • <京都>
  • ・輝く女性応援京都会議(事務局:京都府・京都市・京都労働局・京都商工会議所)
  • ・公益社団法人関西経済連合会

■第一回目研修(神奈川10/25、京都10/26)

第一回目の研修では、武川男女共同参画局長が開会のあいさつで研修の目的等を説明しました。

「現在、上場企業の役員に占める女性の割合は3.7%(2017年7月)にとどまっている」とした上で、「企業の国際競争力を高めるためには、コーポレート・ガバナンスの強化が不可欠であり、経営の監督と執行のさらなる質の向上が求められる。女性が企業の意思決定に関わることで、多様な価値観が企業の経営の監督及び執行の両方に反映されるとともに、多様な価値観を受容する組織ではイノベーションが促進され、企業価値の向上にもつながる。また働き方改革の面においても女性が経営にかかわることが重要」と説明するとともに、女性が働きやすい環境を受講者の皆さんからも作ってほしいと伝えました。


<武川局長による開会の挨拶>

次の企業経営層による講演では、神奈川会場は林文子氏(横浜市長)、京都会場は橘・フクシマ・咲江氏(G&S Global Advisors Inc.代表取締役社長)がそれぞれお話されました。

林市長による講演では、「女性リーダーに期待すること」をテーマに、ご自身の働くことの原点となったことから、民間企業での社長やCEOのご経験、そしてすべてのご経験を活かした横浜市長としての思いを率直にお話しいただきました。


<林市長による講演>

「何よりも大切なことは相手の立場にたって物事を考えること。そして相手に対する感謝『ありがとうございます』の気持ちを常に持つことです。そして、今回の研修メンバーとのネットワークを大切にしてください。役員になることに不安もあるでしょうが、まったく心配はありません。ぜひ飛び込んでください。」と、受講者にエールを送りました。

京都では、橘・フクシマ・咲江社長が、「これからの取締役に求められるもの」をテーマに、日本とアメリカにおける民間企業でのパートナーや社内外の取締役のご経験から、取締役とは何か、経営者の責務とは何かなど、今後の変化も見据えてお話いただきました。


<橘・フクシマ・咲江社長による講演>

またグローバルリーダーとしての要件として戦略とコミュニケーションを挙げられ、「バリューチェーン」、「財務」、「説得力(直接語りかける・相手の立場に立つ)」の3つの大切さを教えていただきました。講演の最後には「外柔内剛」で頑張ってくださいと受講者にエールを送りました。

講演の後は、「法的役割と責任・リスクマネジメント」について、村瀬孝子弁護士(鳥飼総合法律事務所パートナー弁護士)による講義が行われました。法的役割と責任として、会社と役員の法律関係、取締役会の権限、会社法上の取締役の責任等についてお話いただきました。また会社法の視点からのリスクマネジメントについてお話しいただき、受講者同士での事例検討なども行いました。


<村瀬弁護士による講義>

研修の最後には、交流会を行い、自己紹介や名刺交換などを行うなど、受講者同士のネットワークづくりを行いました。


<交流会の様子>

■第二回目研修(神奈川11/13、京都11/16)

第二回目の研修は、神奈川会場は池田典義氏(株式会社アイネット取締役会長)、京都会場は塚原一男氏(株式会社IHI顧問)の講演から始まりました。

池田会長からは「輝く会社は女性で決まる」をテーマに、会社を興されてからこれまでの経営に対する思いなどをお話いただきました。夢を持つことや確固たる信念をもつこと、何より謙虚に感謝の心を持つことの大切さを受講者へ伝えました。


<池田会長による講演>

講演の最後にはサムエル・ウルマンの「青春の詩」を紹介し、「日本経済の再生には女性の活躍なくてしてはできません。その先陣となるのは(受講者の)皆さんである。信念と自信、そして明日へ希望をもって、思いきり若さを保ちながら頑張ってほしい」とメッセージを送りました。

京都では、塚原顧問から「経営者に求められるもの」をテーマに小説や歴史、経営学など幅広い観点からお話いただきました。

「まずは、経営者の評価基準を持つこと、そのために自分自身がどういう経営者になりたいかを明確にしてください。例えば、野球でいえば大谷選手になるのか、イチロー選手になるのかでやるべきことが変わってきます。ここを明確にしないと自己評価が甘くなります。

経営者に求められるものとして、『広い視野』『リーダーシップ』『志』の3つが大切である。経営学などの知識を学び、自分自身の引き出しを増やすこと、謙虚であることが大切」と受講者へ伝えました。


<塚原顧問による講演>

その後は、「コーポレート・ガバナンス」について、北川哲雄教授(青山学院大学大学院国際マネジメント研究科)による講義が行われました。講義ではコーポレートガバナンスシステムの重要性について、広範な視点からお話しいただきました。特に欧米では取締役会の役割が、責任ある企業行動(Responsible Business)遂行の観点から社会(ダイバーシティの推進も重要な視点)・環境についても論議される場となっていることが指摘されました。投資家側も責任ある投資活動(Responsible Investment)を掲げる機関が今主力になりつつあり、投資家側のこういった分野への関心も高いこともお話いただきました。


<北川教授による講義>

■第三回目研修(神奈川12/12、京都12/14)

第三回目の研修(神奈川会場)では、女性活躍・男女共同参画担当大臣である野田大臣が冒頭の挨拶を行いました。

「皆さんには責任感と明るさをもってこの研修を通じて何かを得ていただきたい。そして日本を変える原動力になっていただき、子どもたちのためにいい日本を作っていただきたい。私もこの仕事を通じてみなさんにエールを送ります。」と直接メッセージを受講者に送りました。


<野田大臣による挨拶>

企業経営層による講演として、神奈川会場は、神崎夕紀氏(キリンビール株式会社執行役員横浜工場長)、京都会場は、佐治正規氏(ダイキン工業株式会社執行役員人事本部長兼ダイバーシティ推進グループ長)に、それぞれの企業における女性活躍の取組等についてお話しいただきました。

神崎執行役員からは、「キリングループの多様性推進とキャリア形成について」をテーマに、今後の人口動向なども交えながら、キリンビールの女性活躍の取組について紹介いただきました。後半はキャリア形成の考え方として、強みをつくる、仲間をつくる、リーダーになるという3点についてお話いただき、最後に「“チャンスに応えられる自分になっている”ということが大切。みなさんも頑張ってください」と伝えました。


<神崎執行役員による講演>

京都では佐治執行役員から「ダイキン工業の女性活躍の取組および役員・幹部に大切にしてほしいこと」をテーマにお話しいただきました。

ダイキン工業の女性活躍の取組を紹介いただくとともに、実際に管理職研修などで使用されている会長語録の資料や経営幹部塾の概要などをご披露いただきました。


<佐治執行役員による講演>

その後は、「技術・産業のメガトレンド・イノベーションをおこす経営」について、小笠原敦特任教授(国立大学法人滋賀医科大学 バイオメディカル・イノベーションセンター)よる講義が行われました。講義では、経営者として広い視野でみていく中で何を基準に考えていくのかをマクロ経済の動向からの社会変化と科学技術の進展からの社会変化の視点でお話いただきました。また講義の最後では、新しいビジネスモデルについてグループ討議を行いました。


<小笠原教授による講義>

○次年度に向けて

今年度事業の成果も踏まえ、次年度以降開催箇所を拡大して研修を実施し、その効果や課題を明らかにするとともに成果を広く共有していきます。

※本研修の運営は公益財団法人日本生産性本部が受注しており、来年の3月まで神奈川・京都で実施します。

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