「共同参画」2017年8月号

行政施策トピックス2

理工系分野における女性活躍の推進を目的とした関係国の社会制度・人材育成等に関する比較・分析調査報告書
男女共同参画局推進課

我が国の理工系分野における女性研究者や技術者の割合は増加傾向にあるものの、研究者に占める女性の割合は15.3%(2016年)に留まっており、諸外国の30%程度と比較すると、依然として低い水準となっています。また、増加のペースも3年で1%程度と諸外国と比較して低い状況が続いています。今後、本格的な人口減少社会を迎える中で、世界最先端の科学技術立国を目指す我が国が、持続的な成長を確保し、さらに、イノベーションの創出によって社会の課題を解決するためにも、女性研究者等の活躍を推進することは急務です。

しかし、女性研究者等の母集団となる、理工系に学ぶ女子大学生の比率は理学部で27.0%、工学部で14.0%(2016年)であり、諸外国と比較して少ないのが現状です。

そこで、欧米各国の中でも女性研究者等の割合が高い国や近年女性研究者等の活躍が顕著と言われている国における理工系女性人材の確保に向けた社会制度や人材育成の仕組み等を比較・分析することで、我が国施策の示唆を得ることを目的に、調査を行い、報告書にとりまとめました。報告書の主な内容は以下のとおりです。

1.各国における女性研究者・技術者に関するデータの比較

調査対象国(アメリカ、イギリス、ドイツ、ノルウェイ、シンガポール、韓国)の中では、日本の女性研究者の割合は全体、産業、政府機関、大学のいずれでも最下位となっています。特に、産業では、8.1%であり、他国と比較して低い水準となっています。

韓国の政府機関と高等教育部門では、2000年代前半までは日本と同レベルかそれ以下(ただし、産業部門は2000年時点で既に日本より上)でしたが、2000年代後半から女性研究者割合が大きく伸びてきてきました。全体では、2014年は18.5%と日本よりも4%近く高くなりました。産業部門では更に女性研究者割合は伸びています。日本は着実に増加していますが、他国はそれ以上のペースで割合が伸びています。

また、調査対象国でのPISA(OECDの生徒の学習到達度調査)やTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)の結果を比較したところ、日本の女子生徒の「数学」「科学」の成績は国際的に悪くなく、得点の男女差も日本において特に大きい訳ではありませんでした。

調査対象国における女性研究者の割合(各部門)(2013年)


2.各国における理工系人材の確保に向けた社会制度や人材育成の仕組み等の取組動向

本調査では、次の4つの項目について調査を実施しました。

  • (1)女子生徒の理工系教育(STEM教育)への取り組み
  • (2)企業の女性技術者増加の取り組み
  • (3)女性研究者・技術者についての政府の体制と政策
  • (4)日本にとっての示唆

3.理工系教育(STEM教育)に関する各国取組の整理と我が国への示唆

調査結果より、以下の6つの項目について、整理しています。

  • (1)定量データ
  • (2)女子生徒の理工系教育(STEM教育)への特徴的取組
    • ・特に女子生徒へのアプローチ
    • ・男女問わず全体へのアプローチ
  • (3)女子生徒の理工系教育(STEM教育)に関する傾向分析、示唆
  • (4)理工系分野における女性活躍に関する主な法律・制度
  • (5)理工系分野における女性活躍に関する体制面の特徴(担当部署など)
  • (6)民間企業の女性エンジニア支援の取組例

4.提言

調査対象国における取組内容等を踏まえ、以下のとおり、今後の日本の取るべき施策等について提言しています。

  • (1)STEM教育等に関する研究活動の活性化およびエビデンスベースの戦略策定
    •  施策は、エビデンスに基づいて一貫性を持って戦略的に策定されるべきである。女子生徒等の理工系分野への進路選択の促進に向けた施策策定のエビデンスとなる研究(STEM教育における男女の差異に関する研究等)に、より多くの研究者が取り組むことが求められる。
  • (2)教育コンテンツの充実と教育から就業までの一貫した支援の実施
    • ・より実践的な教育コンテンツを積極的に導入して知識と社会とのつながりの理解を促すことや、理工系分野に対する認識を拡大することは、男女の区別なく理工系分野への関心を高め、ひいては女子生徒の理工系進路選択を促進できる。
    • ・日本でも、キャリア教育のためには、地域社会にいる社会人・職業人の学校教育への参画が必要だとされている。すでに理工チャレンジ(リコチャレ) や出前授業等において職場見学や業務体験等の取組が行われているが、より多くの生徒が理工系の職業イメージを具体的に持てるよう、参加者や内容を更に拡充させることが望まれる。
    • ・生徒の身近な人々においても、理工系に関する知識、理解、関心を増加させ、理工系分野との関わりを増やすことを考えるべきであり、個々の生徒だけではなく家族や保護者も対象とした施策を検討するべきである。
    • ・長期的には先進事例を参考とした教育から就業までの一貫した支援を行う新たな取組が望まれる。

報告書の全文は、内閣府男女共同参画局のホームページでご覧いただけます。
http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/riko_comp_research.html

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019