「共同参画」2017年7月号

特集

女性活躍推進法による女性活躍の加速・拡大に向けて─平成29年版男女共同参画白書から─
内閣府男女共同参画局 調査課

本年6月9日、平成29年版男女共同参画白書が公表されました。特集「女性活躍推進法による女性活躍の加速・拡大に向けて」のポイントをご紹介します。

6月9日に、「平成29年版男女共同参画白書」が閣議決定、公表されました。この白書は、男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)に基づいて毎年国会に報告されるもので、今回が18回目になります。

今回の白書では、特集として、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号。以下「女性活躍推進法」という。)が平成28年4月に全面施行となってから1年が経過したことを踏まえ、「女性活躍推進法による女性活躍の加速・拡大に向けて」をとりあげました。ここでは、特集のポイントをご紹介します。

(1)働く女性の活躍の現状と課題

~高まる女性の就業率~

我が国では、15~64歳の生産年齢人口は減少しているものの、就業者数は平成24~28年の4年間で170万人増加しています。内訳を見ると、女性が147万人、男性が23万人増加しており、女性の就業が拡大しています。生産年齢人口の就業率は、近年、男女とも上昇していますが、特に女性の上昇が著しく、男女雇用機会均等法が施行された昭和61年(1986年)は53.1%でしたが、平成28年は66.0%と、最近30年の間に約13%ポイント上昇しました。なかでも、18年から28年の10年間では7.2%ポイントの上昇、24年から28年の4年間では5.3%ポイントの上昇と、この数年間で著しく上昇しています(図表1)。子育て期の25~44歳の女性の就業率については、昭和61年は57.1%、平成28年は72.7%と、この30年間に15.6%ポイント上昇し、24年から28年までの最近4年間で、過去30年間の上昇幅の3割程度にあたる5.0%ポイント上昇しています。

図表1 就業率の推移


女性の就業率を年齢階級別にみると、いわゆる「М字カーブ」になっていますが、 最近30年間の推移を見ると、М字カーブの底は大幅に上昇し、窪みが浅くなるとともに全体的に大きく上方にシフトしています(図表2)。最近10年間の推移を見ると、「30~34歳」「55~59歳」「60~64歳」の上昇率が高く、いずれも10%ポイント超の上昇となっています。

図表2 女性の年齢階級別就業率の推移(昭和61~平成28年)


女性の就業率を都道府県別に見ると、平成17~27年の10年間に、全ての都道府県で上昇しているものの、その水準については、地域差が依然大きい状況です。M字カーブの窪みがないとされる欧州諸国と、女性の就業率が国内で最も高い福井県とこれに次ぐ富山県を比べると、福井県の20代から40代前半にかけての就業率は既にスウェーデンを上回り、両県ともに、全ての年齢階級でドイツ・フランスを上回っています(図表3)。

図表3 欧州各国と福井県・富山県との女性の年齢階級別就業率の比較(平成27年)


~主要産業や多くの地域において依然少ない女性管理職~

我が国において、女性の就業が拡大し、就業者に占める女性の割合は43.5%と欧米諸国とほぼ同水準となっています。しかしながら、管理的職業従事者における女性の割合は近年逓増傾向にあるものの、低い水準にとどまり、欧米諸国のほか、シンガポールやフィリピンといったアジア諸国と比べてもかなり低い状況です。管理的職業従事者に占める女性の割合を都道府県別に見ると、その水準に差が見られます。女性の就業率(平成27年)が高い、福井県、富山県、島根県、鳥取県、石川県では、いずれの県も管理的職業従事者に占める女性の割合では全国平均を下回っています(図表4)。都道府県別に、全産業の従業者数に占める製造業従業者の割合と管理的職業従事者に占める女性の割合との関連性をみると、製造業従業者の割合が高い地域では、相対的に管理的職業従事者に占める女性の割合が低い一方、製造業従業者の割合が低い地域では、管理的職業従事者に占める女性の割合が高いという両変数の間に負の相関関係がうかがえます。管理的職業従事者に占める女性の割合に都道府県間で大きな違いがあるのは、地域の大きな特性のひとつである産業構造によるところがあると考えられます。

図表4 有業者と管理的職業従事者に占める女性の割合(都道府県別)


~多様で柔軟な働き方の推進~

この10年間の女性の雇用者数は増加が続くとともに、 平成27、28年と、2年連続で正規雇用の増加が非正規雇用の増加を上回っています(図表5)。非正規雇用のうち、不本意ながら非正規の雇用形態を選択する人数を見ると、女性149万人、男性147万人と女性がやや多い状況です。我が国では、女性は出産・育児等による離職後の再就職にあたって非正規雇用者となることが多いものの、派遣社員やパートなどの非正規雇用から正規雇用に移行したいと考える女性が少なくありません。また、男女間の賃金格差は、縮小傾向にあるものの、男性一般労働者の給与水準を100としたときの女性一般労働者の給与水準は73.0と格差が見られます(平成28年)。女性の多様で柔軟な働き方の選択肢を広げるとともに、女性の能力を十分に発揮できる働き方を実現させるには、非正規雇用の女性の正社員転換・待遇改善が重要です。

図表5 正規職員・非正規職員の推移(男女別・対前年増減数)


(2)女性活躍推進法によって広がりつつある女性活躍推進の取組

女性の活躍推進の取組を着実に前進させるため、女性活躍推進法では、国や地方公共団体、301人以上の労働者を常時雇用する事業主に対して、女性の活躍推進に向けた「事業主行動計画」(以下「行動計画」という。)の策定・公表等を義務付けています。行動計画の策定にあたって、各事業主は、まず、自らの事業における女性の活躍についての現状把握や課題分析を行い、その結果を勘案し、女性の活躍推進に向けての数値目標や取組を行動計画に盛り込むこととされています。加えて、女性の職業選択に資するため、女性の活躍に関する情報の公表が義務付けられています。

~国における取組~

特定事業主とされる国の機関としては、府省等の行政機関のほか、最高裁判所や衆参議院事務局等が49機関あり、全ての機関が行動計画を策定済みとなっています。また、各府省等の取組を見ると、全ての府省等が、行動計画において、「女性職員の採用」「女性職員の登用」「男性職員の育児休業取得」「男性職員の配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇取得」の4項目についての数値目標を設定するとともに、これら4項目の情報公表を行っています。情報公表の対象とされる13項目(女性職員の採用割合、継続勤務年数の男女差等)のうち、行動計画の策定にあたり状況把握すべきとされる7項目(1)を内閣官房、内閣府、消費者庁、厚生労働省が公表しています。

(1) 女性活躍推進法により、行動計画の策定にあたり状況把握すべきとされる7項目とは、「女性職員の採用割合」「継続勤務年数の男女差」「超過勤務の状況」「管理職の女性割合」「各役職段階の職員の女性割合」「男女別の育児休業取得率」「男性職員の配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇取得率」のこと。

~地方公共団体における取組~

地方公共団体について、行動計画の策定等が求められる事業主は、地方公共団体の長、議会の議長、警視総監又は道府県警察本部長、教育委員会等があり、都道府県47団体、市区町村1,741団体の全てが行動計画を策定済みとなっています。都道府県の知事部局の行動計画において、「女性職員の管理職登用」の数値目標を設定するのは43団体です。女性職員の管理職への登用に都道府県間で大きなばらつきがある状況を反映し、数値目標の水準も都道府県間で大きなばらつきが見られます。

また、都道府県推進計画や市町村推進計画を策定し、中小企業における女性の活躍推進に対する支援を地域全体の優先課題と位置づけ、協議会も活用しつつ、積極的な取組を進める自治体が各地にあります。

~民間事業者等における取組~

平成28年12月末現在、301人以上の行動計画の策定等が義務付けられる一般事業主(2)の99.8%に相当する15,740事業主が行動計画の届出を行っています(3)。301人以上の一般事業主のうち、厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」で「行動計画の公表」と「情報の公表」の両方を行うのは3,875事業主で、全体の4分の1程度であり、「行動計画の公表」「情報の公表」のいずれかのみを行う事業主を含めても、7,706事業主と、同データベースに登録する事業主の割合は、義務対象事業主の5割程度となっています(平成28年12月末現在)。また、この3,875事業主について、1社あたりの情報公表は平均5.2項目で、企業規模が大きいほど、公表項目数が多くなる傾向にあります(図表6)。

図表6 厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」において情報公表される項目数<301人以上の事業主(規模別)>


(2) 一般事業主とは、国及び地方公共団体以外の労働者を雇用して事業を行う全ての事業主を指し、個人事業主にあってはその事業主個人、会社その他法人組織の場合はその法人そのものを指す。独立行政法人、日本郵政公社、国立大学法人、大学共同利用機関法人及び地方独立行政法人は一般事業主に該当する。

(3) 平成29年3月末現在、策定・届出率は99.9%(義務対象事業主数15,848、届出事業主数15,825)となった。

なお、300人以下の一般事業主は、行動計画の策定・届出等が努力義務とされていますが、このうち、2,155事業主が自主的に行動計画の策定・届出を行っています(平成28年12月末現在)(4)。今後は、求職者や投資家等による市場を通じたモニタリングが有効に働き、企業による女性活躍の取組を加速・拡大させていくため、「女性の活躍推進企業データベース」での情報の充実をはじめとする「見える化」の推進が一層重要となります。

(4) 平成29年3月末現在、300人以下の届出企業数は2,788社となった。

~女性の活躍推進に積極的に取り組む企業の認定~

行動計画の策定・届出をした一般事業主について、女性の活躍推進に関する取組の実施状況等が優良な事業主は、都道府県労働局への申請により、厚生労働大臣の認定(「えるぼし」認定)を受けることができます。認定のための評価項目は、「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つで、評価項目の基準を満たす項目数に応じて3段階の認定(5)を受けます。「えるぼし」の認定企業数は平成28年12月末現在で215社であり、規模別では、1,001人以上の大企業が7割を超え、業種別では、金融業・保険業、卸売業・小売業、製造業の3業種で6割超を占めます(図表7、図表8)。

図表7 企業規模別の「えるぼし」認定企業数と認定企業総数に占める割合


図表8 業種別の「えるぼし」認定企業数と認定企業総数に占める割合


(5) 5つの評価項目の全てを満たす場合には、評価が最も高い「認定段階3」、3~4の評価項目を満たす場合には「認定段階2」、1~2の評価項目を満たす場合には「認定段階1」となる。

少子高齢化が進み、働き手が減る中で、有能な人材を確保し企業競争力を高めるためには、行動計画の策定・届出等が努力義務とされている300人以下の中小企業においても、女性活躍の重要性が理解され、取組を加速させていくことが重要です。中小企業の中には、自主的に行動計画の策定・届出等を行い、女性の採用拡大、女性の職域拡大や育成、正社員転換等を通じた女性の継続雇用、女性の管理職登用の拡大といった課題に対して、独自の知恵を出し、同業他社との連携等も活用しつつ、課題解決のため積極的に取組を進めている事例が見られます。

~女性活躍推進法をメインエンジンとした女性活躍の加速・拡大~

平成28年4月に「女性活躍推進法」が全面施行され、働く女性の活躍推進には、事業主の役割が重要であるとの認識の下、国や地方公共団体のみならず、企業等も含めた事業主に対して、女性の活躍に関する状況の把握や課題の分析、行動計画の策定・公表を義務付ける等、女性の活躍推進のための制度的枠組みが構築されました。国や地方公共団体、大企業において、行動計画の策定・公表が行われ、国や地方公共団体による支援、「えるぼし」認定や公共調達等を通じたポジティブ・アクションの推進もあり、中小企業による自主的な行動計画の策定・届出等も進みつつあります。人手不足の深刻化により、有能な人材を確保することは中小企業にとって喫緊の課題であり、中小企業による自主的な行動計画の策定・届出等の取組が広がっていくことが重要です。女性の活躍状況やその課題は地域によって異なるため、都道府県推進計画・市町村推進計画の下、多様な主体が参画する地域の実情に応じた取組が進められるとともに、地域における民間事業者の大半は中小企業であることから、地域における女性活躍推進にとっても中小企業による取組の広がりが不可欠です。少子高齢化が進む中で、社会の多様性と活力を高め、我が国経済が力強く発展していくため、女性活躍推進法の施行を契機に女性活躍推進の取組をさらに推し進め、企業や地域が自律的に女性活躍に取り組む流れを確立させ、社会全体として女性の活躍が加速・拡大していくことが必要です。

本白書では、ここで紹介した以外にも、様々なデータや取組事例を紹介しています。詳しくは、内閣府ホームページを御覧ください。
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/index.html

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