「共同参画」2017年3・4月号

行政施策トピックス2

シンポジウム 熊本地震からの復興を考える─これからのコミュニティ再生を中心に─
復興庁男女共同参画班

【はじめに】

平成29年1月21日、熊本市において、復興庁・内閣府主催シンポジウムを開催しました。本シンポジウムは、避難所が閉鎖され、被災者の多くが仮設住宅(借上型仮設住宅を含む。)に移行されて数ヶ月、新たな住居で課題となると予想される「コミュニティの再生」を中心テーマとし、熊本地震、東日本大震災及び過去の災害からの取組・経験・知恵を共有し、男女共同参画や災害時要援護者などの多様な視点を取り入れた今後の熊本の復興の在り方や災害への備え、更には、熊本の経験を共有し、東北の復興にもつなげていくことを目的に開催しました。

プログラムは、奥山恵美子仙台市長による基調講演に続いて、防災・復興に携わり、経験・知見を持つ有識者の方々による事例発表やパネルディスカッション、災害に関する取組を行っている団体の展示ブースと三部構成で実施しました。


会場の様子


ブース展示の様子

【開会式】

開会式では、大塚幸寛復興庁統括官付・内閣府男女共同参画局審議官の主催者挨拶の後、熊本市植松浩二副市長が、来賓挨拶として、男女共同参画や地域コミュニティの再生は、熊本市としても重要だと述べられました。

【奥山仙台市長による基調講演】

次に、奥山仙台市長から、「仙台から熊本へ 東日本大震災から学んだこと」と題し、基調講演がありました。話の中では、

  • ・男女共同参画や障害者の視点を配慮した対応についての教訓
  • ・市長の立場として、復興公営住宅の建築数などについて、不確定な複数の要素を考慮しながら、かつ、先の見通しが明らかでない中で決断が迫られ、市全体にとっての最適解と被災された個々人にとっての最適解が必ずしも一致しない中で決断せざるを得なかったこと

など首長ならではの発言がありました。

また、過去の災害経験のある地方公共団体から多大な支援・知見を頂いたが、仙台市としても熊本の皆さんにバトンをつないでいきたいとの発言がありました。


奥山仙台市長による基調講演

【事例発表・パネルディスカッション】

事例発表・パネルディスカッションでは、コーディネーターに新潟大学危機管理室の田村圭子教授、パネラーには、くまもと県民交流館「パレア」中園三千代館長、熊本市男女共同参画センター「はあもにい」藤井宥貴子館長、(公財)せんだい男女共同参画財団木須八重子理事長、福島大学うつくしまふくしま未来支援センター天野和彦特任准教授、NPO法人インクルいわて山屋理恵理事長、認定NPO法人CS神戸中村順子理事長の6名を迎え、事例発表とパネルディスカッションを行い、パネラーの皆様からは、特に以下のようなお話がありました。

  • ○中園パレア館長
    ・避難所の生活環境調査を行ったことや、女性総合相談室における相談内容の周知のため、地元新聞に掲載するなど様々な取組を行ってきた。
    ・情報の格差やジェンダーによる格差など被災者にとって不条理なことを無くしていきたい。
  • ○藤井はあもにい館長
    ・発災直後、全国女性会館協議会の相互援助システムが非常に役に立った。
    ・東日本大震災では、5年経っても性被害のカウンセリングを行っているとの話を受け、二次被害を1件も出したくないという思いで活動してきた。
    ・避難所では子どもたちの笑顔が生きる力を与えてくれた、子どもたちが笑顔でいられる熊本をつくるために誰一人も置き去りにせず、前に進みたい。
  • ○木須せんだい男女共同参画財団理事長
    ・発災時には、仙台市宮城野区長であったが、市長から、一律平等にではなく、区ごとの判断により対応することが認められたこと、常に先を見通して行動すべきとの指示は大きなことだった。
    ・質問のあった仮設住宅から恒久的住宅への移行が早かった秘訣は、仮設住宅の段階から、世帯ごとにカルテを作成し、一世帯一世帯きめ細かく訪問し、状況把握に努めた結果であった。
    ・女性は弱者ではない。女性には行動力もあり、コミュニティのキーパーソンでもあり、それを生かさない手はない。
  • ○天野福島大学特任准教授
    ・熊本の避難所の自主運営が一定程度言われるようになったこと、市民団体と行政の連携・協働が進んだこと、避難所の中に合理的配慮に基づいて特別なエリアができたことは、東日本大震災の教訓が生かされている点。
    ・震災関連死の7~8割が男性だと言われている中、男性も女性も集える場所のために「おでんプロジェクト」を行い、人と人とのつながりをつくることを意識した。女性も男性も、ジェンダーの視点を持つようエンパワーメントを行っていくべき。
  • ○山屋インクルいわて理事長
    ・震災後、誰も取り残さない、全員参加型で地域をつくっていこうと考え、一番大変な課題を抱えている「ひとり親」に対して、「こども食堂」など様々な活動を行っている。
    ・熊本においては、住宅再建が一番の課題と考えられ、被災者が一番相談しにくい家計の問題も相談でき、福祉の知識ももっているような者が必要とされる。
  • ○中村CS神戸理事長
    ・人は人の役に立つこと、ありがとうと言われることによって、生き生きとしてくる。自分のできることを行うことによって、他の人や社会とつながることが大事である。あなたは何ができますかと問いかけ、できることを事業化し、約350の団体を立ち上げてきた。
    ・男性も実際に地域社会で人のために一生懸命活躍している者をみて、自分も何かしたいとガラッと変わる。

また、最後に、コーディネーターの田村教授から、本日のまとめとして、

  • (1) 生き抜く力を身に着けて、災害に強いコミュニティをつくること
  • (2) 復興のためには、行政・市民団体と一緒に被災者ごとの支援プランを作っていくこと
  • (3) 支援に回る仲間を増やし、継続して地域を支える力を養っていくこと

の3点が重要だとお話がありました。


パネルディスカッションの様子

【終わりに】

閉会の挨拶では、全国女性会館協議会納米恵美子代表理事が、災害が起きると大きな社会の変動も起こるが、社会をより良いものにしていくために皆さんと一緒に力を合わせていけたら幸いと締めくくりました。

本シンポジウムの議事録や資料については、追って復興庁HPに掲載しますので御覧ください(http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-16/index.html
復興庁男女共同参画班 03-6328-0275

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