「共同参画」2015年 7月号

「共同参画」2015年 7月号

連載 その2 女性首長から

誰にでもやさしい街づくりに女性の力を
安中市長 茂木 英子

安中市市章


安中市は群馬県西部に位置する人口約6万1,000人の街です。市の中央を国道18号が走り県境の碓氷峠を越えると長野県の軽井沢町になります。去年の6月に世界遺産登録された富岡製糸場のある富岡市とは隣接しており、碓氷峠や妙義山、榛名山などの山々に囲まれた自然豊かな街です。富岡製糸場の世界遺産登録により注目されている養蚕業は、市内では数十件の農家が今も養蚕を続けています。出荷された繭から生糸にする製糸工場「碓氷製糸」が全国で唯一、年間を通じて稼働しています。

また、日本のマラソン発祥の地でもあります本市では毎年5月に「安政遠足マラソン」という仮装マラソン大会を開催しています。今年で41回目を迎えた大会では約1,500名の皆さんが思い思いの工夫をこらした仮装で碓氷路を駆け抜けました。

さて、私は平成26年4月、群馬県初の女性市長として安中市の舵取りを任され、一年が過ぎました。まずは女性管理職とのランチミーティング、公用車の運転手に女性の起用、女性管理職の増員等、女性が活躍できる「空気づくり」に着手しました。市政を進めていく中で改めて女性がこれからの社会を担い変えていくキーパーソンになる必要性を強く感じました。

私が38年前に就職した会社では女性は事務、男性は営業、結婚すれば女性は寿退社、お茶くみは女性の仕事であたりまえでした。また、社会の様々なシステム、例えば、階段の段差、机の大きさや高さ、そして、教育、医療、福祉などの制度が成人男性を基準に作られてきたことに、私自身、何の疑問も持ちませんでした。

しかし、就職と同時に「地域づくり」のボランティア活動に参加したことにより物事に対する見方が変わっていきました。

活動の中では女性も男性も対等な立場で一つの目標に向かいお互いに意見を出し合ったり、責任者を女性が務めることなどがごく自然に行われていました。この経験がなければ、現在の私はなかったかもしれません。ボランティア活動は自分自身を磨き、地域社会と関わることのできる一つの手段であり、女性が政治に関心を持つことのきっかけにもなると考えます。しかしながら、本市ではNPOやボランティア活動を支える体制がまだまだ不十分だと感じていますので、今後、力を入れたい課題の一つです。

社会は男性と女性の共同体です。男女共同参画社会が目指すものは共に社会を作り上げている一員だという意識を一人一人が持つことだと考えます。ですから、女性自身の中に「女性だから…」という潜在的なあきらめ意識があって、力を十分に発揮できないのであれば、それは社会の大きな損失です。

今後、防災の強化、認知症予防、高齢者や子育て世代への支援、そして若者支援等、生活に密着している女性の視点を活かした施策を実行していきたいと考えています。そして、よりよい街づくりを進めていくためには行政と市民がお互いにできることを出し合い、協働していくことが求められています。お互い力を合わせ、様々な施策が展開できるようこれからもより一層の努力を行っていきたいと思います。

執筆者写真
もてき・ひでこ/1960年生まれ/1978年群馬県立富岡東高等学校卒業。1995年安中市議会議員4期。2007年群馬県議会議員2期。2014年4月群馬県内初の女性市長に就任。群馬県女性議員政策研究会会員。/趣味は里山散策、山野草鑑賞。