「共同参画」2015年 6月号

「共同参画」2015年 6月号

特集1

北京+20、我が国の女子差別撤廃条約批准30年
内閣府男女共同参画局総務課

今年は、「北京宣言・行動綱領」採択から20年、我が国の女子差別撤廃条約批准から30年です。

今年は、平成7年(1995年)に北京で開催された第4回世界女性会議において「北京宣言及び行動綱領」が採択されてから20年。また、昭和60年(1985年)に我が国が女子差別撤廃条約批准してから30年になります。

この記念すべき年に当たり、国連では3月、第59回女性の地位委員会(CSW)において、「北京宣言及び行動綱領」の取組状況に関するレビューが行われました。

また、国内では、我が国の女子差別撤廃条約批准30年を記念して、女子差別撤廃員会から林陽子委員長、レバノンのハイダー委員をお招きし、男女共同参画推進連携会議主催の「聞く会」が開催されました。

今回は、こうした国際的な規範、基準に関する最近の取組について、お伝えいたします。


第59回国連女性の地位委員会・北京+20(3月9日~20日 ニューヨーク国連本部)

第59回CSWでは、「北京宣言及び行動綱領採択」から20年を記念して、その取組状況に関する世界的なレビューが行われました。

開会式では、20年前の第4回世界女性会議で当時CSW議長を務めた、パトリシア・リクアナン フィリピン高等教育大臣が基調講演を行いました。

会合では、政治宣言の採択、一般討論、閣僚級が多数参加したハイレベル円卓会議、パネルディスカッション等が行われました。

今年のCSWは、例年と比べ世界中から多くの参加者が集まり、会場は大変な盛況ぶりでした。また、若者や男性の姿も多く見られました。

第59回国連女性の地位委員会 ニューヨークで開催


第59回国連女性の地位委員会 会合の様子


政治宣言の採択

会合で採択された「第4回世界女性会議20周年における政治宣言」では、「北京宣言及び行動綱領」実施の進捗が遅く、不均衡であることを憂慮し、(1)法、政策などを通じた効果的・加速化された取組、(2)組織機構に対する支援の強化、増加、(3)差別的な規範、固定的性別役割分担意識の変革、女性・女児に対する差別を撤廃する社会規範及び実践の推進、(4)投資の増加、(5)コミットメントの実施に向けた説明責任の強化、(6)能力開発の促進、データ収集、監視及び評価、情報・通信技術へのアクセス及び利用、を確保するための更なる具体的な行動を取ることを表明しています。

また、現在国連で作業を進めている「ポスト2015年開発アジェンダ」において、「北京宣言及び行動綱領」の完全で効果的な実施が必要であることや、男性及び男児の関与の重要性についても述べています。

こうした取組を強化するため、CSWにおいて、今後、「ポスト2015年開発アジェンダ」の取組状況のフォローアップや、大臣級の参加による対話型のセッションを行っていくことなども決議(「CSWの将来の機構及び作業方法」)しています。

日本の取組

日本政府からは、宇都隆史外務大臣政務官を首席代表に、橋本ヒロ子CSW日本代表、外務省、内閣府、厚生労働省、文部科学省、JICA及びNGO代表からなる代表団が出席しました。

宇都政務官は、3月10日に、ステートメントを行い、第3次男女共同参画基本計画に基づく国内の取組の推進、女性の活躍推進のための法律案の国会提出、第4次男女共同参画基本計画の検討等の現在進行している取組、UN Womenとの連携の一層の強化や武力紛争下の女性に対する暴力撤廃プロジェクトの支援等について述べました。

会場では、国連日本政府代表部と日本のNGOとの共催による2つのサイドイベント「女子差別撤廃条約とジェンダーに基づく暴力-北京会議後20年の成果と課題」(国連日本政府代表部、国際女性の地位協会、ポーランド国連代表部共催)、「高齢社会におけるジェンダー平等:日本高齢女性の活躍と課題」(国連日本政府代表部、国連NGO国内婦人委員会、国際婦人年連絡会、日本女性監視機構、国連フィリピン政府代表部)も開催し、各国から多くの参加者が討議に参加しました。


宇都隆史外務大臣政務官によるステートメント


「聞く会」の開催

平成27年4月23日、男女共同参画推進連携会議主催による「第59回国連婦人の地位委員会及び第3回国連防災世界会議について聞く会」(司会:石井美恵子 男女共同参画企画委員)が開催されました。

橋本ヒロ子CSW日本代表から、本会合全体を通しての報告が行われた他、NGOの代表者より、NGOと国連日本政府代表部との共催によるサイドイベントについての報告等がありました。

会場との質疑応答の際には、ニューヨークでの第59回CSW会合にNGOのインターンとして参加した大学生から、参加した若者有志による提言として、日本において、男女共同参画やステレオタイプ(固定的役割分担)の問題について気づきを与えることが必要なこと、今後、若者有志でSNSによる発信やワークショップ等の活動を行っていくこと等が述べられました。


4月23日「聞く会」



「北京+20」キャンペーンロゴ


※政治宣言を含む第59回CSWの開催結果は、下記ウェブサイトからご覧いただけます。

内閣府男女共同参画局
http://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_csw/

UN Women
http://www.unwomen.org/en


女子差別撤廃条約批准30周年記念
「女子差別撤廃条約の果たしてきた役割と最近の動向について聞く会」(3月19日 内閣府講堂)

平成27年3月19日に開催された男女共同参画推進連携会議主催による「女子差別撤廃条約の果たしてきた役割と最近の動向について聞く会」(司会:大日向雅美・男女共同参画推進連携会議議長)では、女子差別撤廃条約をめぐる国際的な状況、今後の課題等をテーマにパネルディスカッションが行われました。

有村大臣挨拶

冒頭、有村治子内閣府特命担当大臣(男女共同参画担当)から、「(女子差別撤廃条約批准30周年である)今年は、日本の活力ある未来をかけて女性活躍施策を打ち出す大変重要な年であり、すべての女性が各々の希望に応じ、家庭・地域・職場において、個性と能力を十分に発揮し、輝くことのできる社会の実現に心を尽くしていきたい」と挨拶がありました。


有村大臣あいさつ


パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、我が国から初めて女子差別撤廃委員会委員長に選出された林陽子委員長と、ナーラ・ハイダー委員(レバノン)、武川恵子内閣府男女共同参画局長による報告、意見交換が行われました。

(林委員長報告)

林委員長からは、同条約が日本の法制度及び社会に与えた影響について報告がありました。

(1)1985~1995年は国籍法改正・男女雇用機会均等法制定等、法律上の平等の進展がもたらされた時代、(2)1995~2005年は日本の政府報告審査でも配偶者間暴力が取り上げられる等、女性に対する暴力が女子差別撤廃委員会の政策課題となった時代、(3)2005~2015年は、2009年の総括所見における暫定的特別措置の実施の勧告等、実質的な平等追求の時代であったと、10年を区切った形での報告がありました。


林委員長報告


(ハイダー委員報告)

ハイダー委員からは、女性の人権における世界共通の残された課題についての報告がありました。

女性に対する暴力、公職への参画への差別、経済分野における女性差別、ステレオタイプの存在等を課題として挙げ、解決策のひとつとして暫定的特別措置(注)の意義について、説明がありました。また、新しい課題として、(イスラム国の動き等の)過激主義による女性への影響への対処を指摘しました。

最後に、来年の日本の報告審議に際し、市民社会、政府、学界等の様々な人々と対話をしつつ、女性の権利を推進していきたいと述べました。

(注)暫定的特別措置とは、一般的に、社会的・構造的な差別によって不利益を被っている者に対して、一定の範囲で特別の機会を提供すること等により、実質的な機会均等を実現することを目的として講じる暫定的な措置を指す


ハイダー委員報告


(武川男女共同参画局長報告)

武川男女共同参画局長からは、「女子差別撤廃条約と日本の男女共同参画行政」について報告がありました。

日本の男女共同参画行政は国連の取組への対応として進展してきたこと、また、男女共同参画会議の監視専門調査会による最終見解実施のモニタリング等、女子差別撤廃委員会の勧告を実現するための取り組み等について紹介がありました。また、今後の課題として、男女参画行政推進の拠り所として同条約を活用していくために、同条約の周知をより進める必要があることを述べました。


武川男女共同参画局長報告


質疑応答・閉会

パネリストによる報告後、会場との質疑応答が行われました。

最後に司会の大日向議長から、「聞く会」の議論のまとめとして、女性の人権には残された課題もあるが、女性の活躍推進を日本政府が重点政策としている今こそ、男女共同参画実現に向けて取り組むべきであると述べました。


大日向議長


CEDAW 女子差別撤廃条約批准から30年


※女子差別撤廃条約、「聞く会」については、内閣府男女共同参画局のウェブサイトをご覧ください。
http://www.gender.go.jp/

女子差別撤廃条約関連の歩み・国内における主な進展