「共同参画」2014年 12月号

「共同参画」2014年 12月号

特集

みんなが、子育てしやすい国へ。「子ども・子育て支援新制度」がスタートします。
内閣府 政策統括官(共生社会政策担当)

「子ども・子育て支援新制度」が、平成27年4月に本格スタートします。今回は、新制度の概要について、主に利用者の方々の視点に立ち、御紹介します。

平成27年4月、幼児期の学校教育や保育、地域の子育て支援の量の拡充や質の向上を進めていく「子ども・子育て支援新制度」が本格スタートします。ここでは、新制度について、主に利用者の方々の視点に立ち、制度の概要を御紹介します。


新制度シンボルマーク
新制度シンボルマーク


「子ども・子育て支援新制度」の趣旨

平成24年8月、日本の子ども・子育てをめぐる様々な課題の解決を図っていくため、子ども・子育て関連3法が成立しました。これに基づいて、幼児期の学校教育や保育、地域の子育て支援の量の拡充や質の向上を進めていく「子ども・子育て支援新制度」が、平成27年4月に本格スタートします。この新制度の実施のために、消費税率引上げによる増収分から、毎年7,000億円程度が充てられることとされています。

貴重な財源を効果的に活用するため、新制度では、以下のような取組を進めていくこととしています。

  • 幼稚園と保育所の良いところを一つにした「認定こども園」の普及を図ります。
  • 保育の場を増やし、待機児童を減らして、子育てしやすい、働きやすい社会にします。
  • 幼児期の学校教育や保育、地域の様々な子育て支援の量の拡充や質の向上を進めます。
  • 子どもが減ってきている地域の子育てもしっかり支援します。

子育て支援の「量の拡充」と「質の向上」

新制度では、子育て支援を必要とするすべての家庭が利用できることを目指し、子どもの年齢や親の就労状況等に応じた多様な支援を用意し、教育・保育や子育て支援の選択肢を増やしていくこととしています。具体的には、仕事や介護等で子どもをみられない日が多い家庭には、従来の保育所や認定こども園に加え、待機児童の多い0〜2歳児が利用できる小規模保育や家庭的保育等を新たに認可事業として位置付け、地域の実情に応じて供給を確保していくこととしています。また、普段家にいて子どもと一緒に過ごす日が多い家庭についても、幼稚園や認定こども園における教育・保育(3〜5歳児が対象)のほか、急な用事や短期のパートタイム就労等の際に利用できる一時預かりや、気軽に親子の交流ができる地域子育て支援拠点等を、地域の実情に応じ増やしていくこととしています。

質の向上に関しては、例えば、幼稚園や保育所、認定こども園等で職員1人が担当する子どもの数を改善し、子どもたちにより目が行き届くようにする、職員の処遇改善を行い、職場への定着及び質の高い人材の確保を図る、18時半を超えて開所する放課後児童クラブについて必要な費用を支援することで、小学校入学を機に仕事と育児の両立が困難になる「小1の壁」の解消を図る等の取組を進めていくこととしています。

新制度で増える教育・保育の場

新制度で教育・保育の場が増えることについては前述のとおりですが、ここでは各施設等の特徴を説明します。

まず、小学校就学前の施設としては、これまで幼稚園と保育所の2つが多く利用されてきました。

新制度では、幼稚園や保育所に加えて、両方の良さをあわせ持つ「認定こども園」を、地域の実情に応じて、普及を図ることとしています。

認定こども園のポイントとしては、以下の3点が挙げられます。

  • (1) 保護者の働いている状況に関わりなく、3〜5歳のどの子どもも、教育・保育を一緒に受けることができます(※なお、0〜2歳の子どもが認定こども園に通園する場合は、「保育認定」を受けることが必要です(下部参照))
  • (2) 保護者が働かなくなった等、就労状況が変わった場合も、通いなれた園を継続して利用できます。
  • (3) 子育て支援の場が用意されていて、園に通っていない子どものご家庭も、子育て相談や親子の交流の場等に参加できます。

また、新制度では、新たに少人数の子どもを保育する「地域型保育」事業を創設し、待機児童の多い都市部、子どもが減っている地域の双方で身近な保育の場を確保していくこととしています。

この地域型保育には、以下の4つのタイプがあり、多様な施設等から利用者が選択できる仕組みとしています。


  • (1) 家庭的保育(保育ママ)
  • 家庭的な雰囲気のもとで、少人数(定員5人以下)を対象にきめ細かな保育を実施します。
  • (2) 小規模保育
  • 少人数(定員6〜19人)を対象に、家庭的保育に近い雰囲気のもと、きめ細かな保育を実施します。
  • (3) 事業所内保育
  • 会社の事業所の保育施設等で、従業員の子どもと地域の子どもを一緒に保育を実施します。
  • (4) 居宅訪問型保育
  • 障害・疾患等で個別のケアが必要な場合や、施設がなくなった地域で保育を維持する必要がある場合等に、保護者の自宅で、1対1で保育を実施します。

利用できる主な支援


新制度で増える教育・保育の場


地域の子育て支援の充実

新制度では、共働き家庭だけでなく、すべての子育て家庭を支援するため、地域の子育て支援に関する様々な事業の充実が図られています(地域子ども・子育て支援事業)。

以下、これらの事業のうち、主なものについて御紹介します。

利用者支援

子育て家庭が個別のニーズに合わせて、幼稚園・保育所等の施設や地域の子育て支援事業等から必要な支援を選択して利用できるよう、地域子育て支援拠点等、子どもや保護者の身近な場所で専任の職員が情報の提供や相談・助言、関係機関との連絡調整を行います(下図)。


利用者支援事業のイメージ


地域子育て支援拠点

公共施設や保育所等、地域の身近なところに、気軽に親子の交流ができる場所を開設し、行政やNPOなど多様な主体が担い手となって、子育てについての相談等の援助を行います。

妊婦健康診査

妊婦の健康保持及び増進を図るため、妊婦に対する健康診査として、健康状態の把握、検査計測、保健指導を実施するとともに、妊婦期間中の適時に必要に応じた医学的検査を実施します。

乳児家庭全戸訪問

生後4か月までの乳児のいる全ての家庭を訪問し、子育て支援に関する情報提供や養育環境等の把握を行います。

養育支援訪問

養育支援が特に必要な家庭を訪問し、養育に関する指導・助言等を行うことにより、家庭の適切な養育の実施を確保します。

ファミリー・サポート・センター

子どもの預かり等の援助を受けることを希望する方と、援助を行うことを希望する方とが相互に助け合う活動に関する連絡、調整を行います。

一時預かり

急な用事や短期のパートタイム就労等、子育て家庭の様々なニーズに合わせて、子どもを一時的に預かります。認定こども園、幼稚園、保育所、地域子育て支援拠点等で実施されます。

病児保育

病中・病後の子どもを、保護者が家庭で保育できない場合に、病院・保育所等に付設されたスペース等で保育を行います。

放課後児童クラブ

保護者が昼間家庭にいない児童(小学生)が、放課後に小学校の余裕教室、児童館等で過ごすことができるようにしている取組です。新制度では、職員や施設・設備について新たに基準を設け、質の向上を図っていくこととしています。また、小学校6年生まで対象となります。

新制度の実施主体

施設等を通じた教育・保育の提供や地域子ども・子育て支援事業は、住民に最も身近な市町村が中心となって進めることとされています。市町村は、子育て家庭の状況及び子育て支援に対する住民ニーズを把握した上で、「市町村子ども・子育て支援事業計画」を策定し、5年間の計画期間において、ニーズに見合った子育て支援の確保方策を示すこととされています。

また、市町村は、子ども・子育て支援にかかわる多様な主体が施策の策定プロセス等に参画・関与できるよう、合議制の機関(地方版子ども・子育て会議)を設置するよう努めることとされており、上記の計画策定等に当たって意見を聴くこととされています。

3つの認定区分

以下、施設等(幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育)を利用するに当たっての手続等について、新制度で変わる部分を中心に御紹介します。

新制度では、施設等を利用するに当たり、それぞれの子どもごとに、利用のための「認定」を市町村から受けることとされています。この「認定」には、3つの区分があり、これに応じて施設等の利用先が決まっていきます。

具体的には、下図のとおり、子どもが満3歳以上で幼稚園等での教育を希望される場合は、「教育標準時間認定」(1号認定)となります。また、家庭での保育が難しく、保育所等での保育を希望される場合は「保育認定」が必要となり、そのうち満3歳以上は「2号認定」、満3歳未満は「3号認定」となります。

3つの認定区分


保育所等での保育を希望される場合の保育認定(2号認定、3号認定)に当たっては、以下の3点が考慮されます。

一つ目は、保育を必要とする事由です。

新制度では、フルタイムのほか、パートタイムや夜間の就労も保育の必要性の事由に該当することとされました。また、求職活動や就学の場合や、育児休業取得時に、既にきょうだいが保育を利用していて継続利用が必要な場合も、保育の必要な事由になります(下図参照)。


新制度における「保育の必要性」の事由


二つ目は、保育の必要量です。

保育認定は、保育の必要量に応じて、「保育標準時間認定」と「保育短時間認定」のいずれかに区分されます。

保育標準時間認定は、就労を理由とする利用の場合、フルタイムの就労を想定しているものであり、1日当たり最長11時間の利用が可能とされています。

保育短時間認定は、就労を理由とする利用の場合、パートタイムの就労を想定しているものであり、1日当たり最長8時間の利用が可能とされています。

なお、保育短時間利用が可能となる保護者の就労時間の下限は、1か月当たり48〜64時間の範囲で、市町村が定めることとされています1

1 経過措置として、新制度の施行後10年間については、48〜64時間の範囲に限定せず、市町村が定める時間を下限とすることができることとされています。

三つ目は、優先利用への該当の有無です。

ひとり親家庭、生活保護世帯、生計中心者の失業、子どもに障害がある場合等には、保育の優先的な利用が必要と判断される場合があります。

新制度の利用の流れ

幼稚園等の利用を希望される場合(1号認定を受けて認定こども園を利用する場合を含む。)、まず希望する幼稚園等に、直接利用申込みをします。入園が内定したら、園を通じて1号認定の申請をします。

その後、内定した園を通じて市町村から認定証(1号認定)が交付され、幼稚園等との契約をすることになります。

保育所等の利用を希望される場合(2号、3号認定を受けて認定こども園を利用する場合を含む。)は、まず、市町村へ保育の認定を申請します。

市町村から認定証(2号、3号認定)が交付された後、利用を希望する保育所等の施設名等を記載し、市町村に申込みます。なお、保育認定の申請と利用希望施設の申込みを同時にできる市町村もあります。市町村では、申請者の希望や保育所等の状況により、利用調整を行います。利用先が決まった後に、申請者は契約をすることになります。

なお、現在子どもが幼稚園や保育所に通っていて、新制度がスタートする平成27年度も引き続き施設を利用される場合も、この認定を受けていただくこととされています。


子ども・子育て支援新制度の利用の流れ


利用者負担について

新制度における保育料は、国が定める上限額の範囲内で、それぞれの市町村が定めることとされています。保育料の上限額は、おおむね現行の私立幼稚園・保育所の実質的な利用者負担水準と同程度としています2

2 なお、ここで御説明する保育料とは別に、実費徴収分(通園送迎費、給食費等)及び特定負担額(教育・保育の質向上を図るための費用)が必要となる場合があります。

幼稚園、認定こども園(1号認定)を利用

新制度導入前に幼稚園や認定こども園を利用していた子どもについては、下図のように、一旦、一律の保育料を支払った後、就園奨励費等でキャッシュバックを受けていました。

新制度導入後、教育標準時間認定(1号認定)を受けた子どもの保育料は、所得の階層ごとに、国が定める保育料を上限として、市町村が定めることとされています。

保育所、認定こども園(2号、3号認定)、小規模保育(3歳未満のみ)

保育認定(2号、3号認定)を受けた子どもの利用者負担も教育標準時間認定と同様、所得の階層ごとに定める保育料を上限として、市町村が定めることとされています。

なお、保育認定の場合は、保育標準時間認定と保育短時間認定の2つの区分に応じ、国が定める保育料の上限額は異なるものとされています。


利用者負担について


新制度の詳しい内容について

新制度のさらに詳しい内容は「内閣府子ども・子育て支援新制度」のホームページに掲載されています。また、SNSでも新制度に関する情報を随時発信しています。

是非、ご覧ください。

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子ども・子育て支援新制度パンフレット
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