「共同参画」2014年 11月号

「共同参画」2014年 11月号

連載 その1

こんにちは! 復興庁男女共同参画班です(5) 福島県における男女共同参画の視点での復興の事例
復興庁男女共同参画班

男女共同参画班では、東日本大震災からの復興の現場、男女共同参画の視点での取組を取材し、「男女共同参画の視点からの復興〜参考事例集〜」を取りまとめ、公表しています。今回は福島県の事例をご紹介します。各事例の詳細につきましては、復興庁ホームページに掲載しておりますのでご覧ください。

http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-16/20130626164021.html

仕事づくりの例:地域の再生をめざして被災地が自立できる産業を興す

いわき市主催の海外研修「いわき女性の翼」に参加した主婦らが設立したNPO法人ザ・ピープルでは、古着リサイクル活動を通して身近な環境問題と住民主体の地域づくりに長年取り組んできました。震災後、新たに市内の休耕地を活用して在来種綿花の有機栽培を始めました。綿花は放射線や塩害の影響を受けにくく、風評被害に苦しむ地元農業を支える作物として期待されています。栽培作業には、地元の住民や学校、企業等のほか、全国から多くのボランティアが参加。収穫した綿花は質の高いオーガニックコットンに加工し、Tシャツにして販売しています。復興支援に携わる女性リーダー交流会で知り合った専門家から繊維産業のノウハウを学び、雇用支援制度を活用して次世代を担う運営スタッフを採用するなど事務局体制も強化しました。地域に活気と仕事を生み出して、津波・原発事故の被災を乗り越えて持続できる事業モデル構築を目指しています。

栽培地でのオーガニックコットン収穫祭
栽培地でのオーガニックコットン収穫祭


居場所づくりの例:楽しい企画で男性の地域参加を実現

桑折町社会福祉協議会では、介護予防の観点から高齢者の交流サロンに力を入れてきましたが、参加者は女性ばかりという状況が続いていました。震災後、桑折町にできた浪江町の仮設住宅でも、やはり男性が家に閉じこもりがちで、健康面や家族関係の悪化が心配されました。そこで、団塊世代の男性になじみのあるマージャンを題材にした事業を考案。町民を対象に「お金を賭けない・タバコを吸わない・お酒を飲まない」条件のもとで行う「健康マージャン」の地域指導員講習会を開催したところ、男性の熱心な参加がありました。指導員となった男性は、ボランティアグループを結成して、仮設住宅集会所等で定期的に健康マージャンサロンを開催。住民間の交流が進み、他の地域活動への男性参加が広がるきっかけにもなっています。

桑折町の健康マージャンサロン
桑折町の健康マージャンサロン


情報発信の例:女性たちの被災経験を聴きとって共有、発信する

福島県在住の女性らが、メディア等に載ることが少ない、避難せずに福島県で生活している女性に被災経験を聴いた記録集『ふくしま、わたしたちの3.11〜30人のHer Story〜』をまとめました。子どもを避難させるかどうかの選択、放射線の影響から身を守る日常生活の工夫と心労、震災で体調を崩した家族の介護など、ケア役割を担うことが多い女性たちの困難と、一人ひとりの多様な被災体験が記述されています。被災当事者間での丁寧な聞き取りによって、普段は我慢しがちな本音が引き出され、互いのケアとエンパワーにもつながりました。制作メンバーは地元で「読みあう会」を開く他、県内外のシンポジウムなどでも冊子を紹介し、「生活再建には女性やマイノリティの声を大切にした多様性への配慮が必要だ」と訴えています。

『ふくしま、わたしたちの3.11』証言記録集・制作委員会のメンバー
『ふくしま、わたしたちの3.11』証言記録集・制作委員会のメンバー