「共同参画」2014年 10月号

「共同参画」2014年 10月号

特集2

地域版「輝く女性応援会議」─三重、石川、佐賀の実施報告─
内閣官房女性が輝く社会づくりチーム/内閣府男女共同参画局総務課

輝く女性応援会議ロゴ


高知県、山形県に続き三重県、石川県、佐賀県において地域版「輝く女性応援会議」が開催され、それぞれ定員を超える参加がありました。それぞれの会議の概要を紹介します。

輝く女性応援会議 in 三重

8月19日(火)に、三重県総合文化センターにおいて、「輝く女性応援会議 in 三重」が開催されました。

鈴木英敬三重県知事による開会挨拶の後、森まさこ大臣(当時)より、政府の取組と成果や「日本再興戦略」改訂2014の具体的施策について基調講演がありました。

パネルディスカッションでは、鈴木知事がコーディネーターとなり、これまでの経験や想い、女性が輝くために必要なことについて意見交換が行われました。

ロールモデルの存在が一歩踏み出すきっかけに

元サッカー日本女子代表・サッカー解説者の宮本ともみさんが、出産後も現役を続けたいと思ったきっかけは、1999年のワールドカップの時、アメリカ代表の「ママさん選手」がホテルで家族と一緒に過ごしている姿を見たこと。チームとしても当たり前に接していることにカルチャーショックを受けたと同時にほほえましい光景に強く憧れ、自分が初の「ママさんなでしこ」として一歩を踏み出したと話されました。

役職が人を育てる。周囲もサポートを

(株)百五銀行の永井佳恵さんは、責任のある大きな仕事を任さられることが、やりがい、モチベーションの向上につながった。女性が輝くためには自分のやる気や責任感などの気持ちも必要だが、これに加えて、実際にサポートしてくれる周囲の応援が必要。家族の協力はもちろんだが、勤務先の理解や後押しが重要と意見を述べられました。

自分の想いに気づくことが大切

「女性が輝くために何が必要か」というテーマについて、NPO法人愛マムズIT倶楽部代表理事の佐藤美保子さんは、(1)強い想い、(2)それに本人が気が付くこと、(3)家族の協力を挙げ、強い想いを自分が気づいて「自分はこうやって生きていきたいなぁ」と思った時に女性が輝き出すのではないか。自分も30歳代で出産したとき、どうやって生きていきたいのか悩んだ。一歩踏み出すことで、自分が何をやりたいのか、何に興味があるのかに気づき、自分らしく生きることができたと語られました。

女性だけでなく男性も輝く努力を

井村屋グループ(株)代表取締役会長兼CEOの浅田剛夫さんは、社員教育をはじめとする人材育成に取り組み、中堅女性社員を対象とした「女性のキャリアアップ研修」、女性管理職を対象としたトップセミナー等、女性の登用促進に向けた取組を積極的に行っている。女性は輝いている方が多い。男性が輝くことで両方が光り合える。男性も輝く努力をしないといけないと話されました。

女性が働きやすい企業は男性も働きやすい企業

(株)光機械製作所代表取締役社長の西岡慶子さんは、自分の経験から社会には能力もやる気もあるのに、それが生かされないでいる女性が沢山いることを知っていたので、採用が決まった女性の社員には絶対にアシスタントでいいと思わないでほしいと伝えてきた。女性が働きやすいということは、男性も働きやすい企業であるはず。社会や個人の意識が変わって、女性の能力が存分に社会で生かされるようになれば、日本はもっともっと元気な国になると述べられました。

三重県 輝く女性応援宣言

パネルディスカッションの後は、「輝く女性」「応援する各界リーダー」「知事」が宣言を行いました。


三重県 輝く女性応援宣言

【輝く女性の宣言】

私たちは、本日皆様方にいただいた応援を糧にして、これからも夢と希望の実現に向かって活動していくことを宣言します。

【各界リーダーの宣言】

私たちは、三重県の女性が今もっている力を最大限発揮するとともに、新しい力を開拓することができるよう、それぞれの立場で応援していくことを宣言します。

【知事の宣言】

女性の活躍が三重県の経済や社会を元気にします。

女性が輝く活力ある三重の実現に向けて、県内の企業・団体等とスクラムを組み、女性とその活躍を応援するすべての皆さんを全力で支援することを宣言します。

左から、永井佳恵さん、宮本ともみさん、鈴木英敬知事、森まさこ前大臣、浅田剛夫さん、西岡慶子さん、佐藤美保子さん
左から、永井佳恵さん、宮本ともみさん、鈴木英敬知事、森まさこ前大臣、浅田剛夫さん、西岡慶子さん、佐藤美保子さん

in 三重
in 三重


輝く女性応援会議 in 石川

9月3日(水)に、石川県立音楽堂において、「輝く女性応援会議 in 石川」が開催されました。

谷本正憲石川県知事の開会挨拶、岡田広副大臣(当時)による基調講演のほか、八重澤美知子金沢大学国際機構教授のコーディネートにより、パネルディスカッションが行われました。

挑戦することで仕事の幅が広がる

中村留精密工業(株)の吉野裕梨さんは、担当ではない仕事でも、「やってみる?」と聞かれたら「ノー」とは言わずに取り組むことで仕事の幅が広がり、挑戦の場も増えた。また、身近に輝く女性の先輩がいたので自分の将来像を具体的にイメージできた。自分自身も、仕事と家庭の両立を図りつつ、輝いて仕事をし、後輩につなげたい。そして、モノづくり企業、石川県の女性の活躍の場を拡大したいと話されました。

次世代が安心して暮らせる地域を作りたい

西中農園の西中宏美さんは、結婚を機に就農し、柿の生産に携わることとなった。その後、「能登里山マイスター」養成プログラムで直売所での販売を学び、規格外の野菜を使った商品の開発と販売を始めた。地域の女性たちと一緒に、能登ならではの商品を作り、県内外から能登に来てもらうようにアピールし、自分の孫や子どもが安心して暮らせる能登となるように活動したいと語られました。

地域ぐるみで子育てを

加賀市育児サークル連絡協議会ぴよぴよかがの窪川茉莉さんは、6つある育児サークルの代表として、育児をする男性は増えたというものの、現状は女性が中心。子どもが小さいうちは家にこもりがちになるが、新しいチャンスと思ってどんどん地域の育児サークルを利用してほしい。そして、地域において皆で子育てをする環境や、子育てをしながら安心して働くことができる環境づくりが重要という意見を述べられました。

周囲の支えを得て「オンリーワン」の生き方

白山商工会白山麓賑わい創出事業実行委員会の安本知子さんは、白山麓に魅せられ、その魅力を国内外に発信する地域活動を行っており、今の私らしい「オンリーワン」の生き方は、ひとりの力ではなく周囲に支えられての今であること、環境を求めるだけではなく、何を求められているのかを考える事や、男女といった性別ではなく、自分らしくどう生きたいか考えることが大切と話されました。


女性を応援する各界リーダーからは、「女性が輝くために必要なこと」をテーマに話をしていただきました。

長時間労働や転勤(海外赴任)をどうクリアするか

(一社)石川県経営者協会会長の菱沼捷二さんは、人口減少の時代、男性も女性も、国境も関係なく、国民が持てる力を最大限発揮することが重要。女性が継続就業するには、出産、育児、介護等に加え、長時間労働や海外赴任も含めた転勤といった課題をどうクリアするかが大切。家族はもとより、行政、企業、地域、それぞれが課題の解決に向けスキームを作り、社会全体で取り組むことが重要と意見を述べられました。

男性は古い慣習にとらわれず女性の応援を

石川県農業協同組合中央会副会長の中村清長さんは、県下JAグループをあげて女性の参画拡大への取組を行っていることや、女性組織が農産物の加工事業等で一定の成果を上げており、今後は、地域貢献、ボランティア等でも、自主的に活動を行うグループ、団体が誕生することを期待すること、また、男性は古い慣習にとらわれず、心を開いて、女性の応援をしていくことが必要だと語られました。

制度の充実ときめ細かな人材育成

(株)小松製作所執行役員の浦野邦子さんは、女性が企業の中で輝くためには、(1)明確なトップの方針を社員に伝えること、(2)制度を充実させながら、人事部門がきめ細かく人事、育成をフォローすること、(3)企業は地域特性に合わせた対応をとることが重要と述べられました。また、人を育成することは簡単ではなく、仕事を通してしか人は育たない。変化の時代は女性にとってチャンスなので、まずは挑戦してほしいと話されました。

基盤づくりが女性が輝く社会をつくる

石川県は、結婚、子育て世代の女性の労働力率は全国に比べて高く、M字の谷は浅くなっています。

谷本知事は、石川県内の全市町において男女共同参画に関する条例、計画が整備されているほか、(全国平均:条例31.3%、計画70.3%)保育所の普及率が高く待機児童がいないこと、ワークライフバランス推進のため、県独自の取組を行っているなど、子育て環境が充実していることが、女性の社会進出の進展につながっているのではないかと発言されました。

最後に、岡田副大臣(当時)より、女性が輝く社会は、経済だけではなく、仕事を通して女性の魅力や資質を高めていく点で重要。今日の内容をそれぞれの地域に持ち帰っていただきたいと総括がありました。

左から、吉野裕梨さん、西中宏美さん、窪川茉莉さん、安本知子さん、谷本正憲知事、岡田広前副大臣、八重澤美知子さん、菱沼捷二さん、中村清長さん、浦野邦子さん
左から、吉野裕梨さん、西中宏美さん、窪川茉莉さん、安本知子さん、谷本正憲知事、岡田広前副大臣、八重澤美知子さん、菱沼捷二さん、中村清長さん、浦野邦子さん

in 石川
in 石川


輝く女性応援会議 in 佐賀

9月8日(月)に、ホテルニューオータニ佐賀において、「輝く女性応援会議 in 佐賀」が開催されました。

古川康佐賀県知事の開会挨拶、武川恵子内閣府男女共同参画局長の基調講演の後、佐賀県、福岡県、長崎県で活躍されている女性や各界リーダーの取組発表、意見交換が行われました。

まず、「女性が輝くために障壁となったこと、それをどう克服したか」というテーマで発表していただきました。

人との出会いと周囲の支え

(株)佐賀銀行事務管理部副部長の安永理佳子さんは、現在のような育児休業制度もなく、女性の昇格も考えられない時代だったが、身近に、初の女性主任が誕生し、また「これからは女性が活躍する時代」と言われ頑張ってきた。人との出会い、周りの方の支えにより輝かせていただいていると発表されました。

自分の道を信じチャレンジ

(株)百姓屋取締役の市丸初美さんは、農業という分野で今より女性が輝くことが難しい時代の中、「私の人生だから、人に言われて諦めて後悔するよりも、自分の道を信じて進んでいこう」と前向きにチャレンジしてきたことで今があること、また、一番の理解者である夫や子どもたちに感謝しているとお話しいただきました。

仕事は一歩一歩の積み重ね

(株)ポータル人材部部長の古田香さんは、障壁は、大きな壁というよりも身近にあるもの、石ころや岩のようなもので、仕事をする上で目的が明確であれば、取り除いたり、遠回りしながら進んでいけると考えている。仕事は一歩一歩の積み重ねで、その時に障壁があっても飛び越えていけると、今までの経験からのご意見をいただきました。

与えられた仕事に120%の力を

ホテルニュー長崎中国料理「桃林」主任の武久朋美さんは、特別なことをやってきたわけではなく、仕事が好きという気持ち、与えられた仕事に120%の力を出すことを常に心がけてきた。また、働く女性自身にも覚悟が必要で、子どもに病気をさせないよう事前ケアをし、もしもの時に頼れる相手を見つけるなどの準備が必要とお話しいただきました。

続いて、「女性の育成・登用をどのように実現したか」をテーマに発表いただきました。

女性の視点が建設業の成長へ

松尾建設(株)人事課長の坂本裕三さんは、当時の経営者が女性の視点を活かさなければ今後の建設業は成長しないと、営業等で女性の採用を始め、技術の話を重視する男性と違い、お客様の話に共感し、同じ目線で考えるため大変好評を得ているとの現状をお話しいただきました。

女性の雇用促進は、女性にも地方にもメリット

レバレジーズ(株)佐賀支店統括マネージャーの山本征史さんは、自社も女性も地方にとってもメリットとなるよう女性の雇用に力を入れているが、今後、子育てしている方が安心して働ける環境づくりに力を入れていくことが私たちのステップとなると語られました。

大切なのは会社の風土づくり

(株)アヴァンティ代表取締役社長の清澄由美子さんは、制度づくりも大切だが使えなくては意味がなく、もっと大事なのは会社の風土づくりと考えていると話され、仕事を続けてもらうためにどういう努力ができるか、働く女性も企業の側も努力することが大切であるとの意見をいただきました。

女性が輝き続けることを企業が支援

湯江タクシー(有)代表取締役の内田輝美さんは、タクシー会社として、女性が産み働き輝き続けられる環境を作るために、何ができるかを考え、子どもさんをドアからドアまで送迎する安全安心のシステムである子育てタクシー事業を立ち上げ、全国組織を作り、全国に展開しているとの話をいただきました。

女性が輝くために必要なこと

最後に「女性が輝くために必要なこと」をテーマに、意見交換を行いました。女性に敢えて難しいと思われる役割にチャレンジするきっかけを作ることや、男性に家庭での役割を与えて男性の意識改革を促すなどの意見や、女性の意見を聞くだけでなく決定の場への参画が必要で、このことが世の中を変えていくなどの意見が出されました。また、行政に対しても「ママ目線」での仕組みづくりが必要等の意見をいただきました。

1列目左から、武川恵子局長、古川康知事、富吉賢太郎さん、清澄由美子さん、内田輝美さん、2列目左から、武久朋美さん、安永理佳子さん、市丸初美さん、古田香さん、坂本裕三さん、山本征史さん
1列目左から、武川恵子局長、古川康知事、富吉賢太郎さん、清澄由美子さん、内田輝美さん、2列目左から、武久朋美さん、安永理佳子さん、市丸初美さん、古田香さん、坂本裕三さん、山本征史さん

in 佐賀
in 佐賀


会議の成果と今後

会議の成果

7月から各地で始まった「輝く女性応援会議」の5会場(高知、山形、三重、石川、佐賀)の様子をこれまでに紹介してきました。各会議それぞれにおいて個性豊かな登壇者一人ひとりが、意欲を持って積極的に活動しておられる様子が伝わりました。

いずれの会場でも共通していたのは、女性の活躍がその地域の活性化へ繋がるという強い意識で皆さんが参加しているということでした。

言うまでもなく、子育て期の女性の就業率が低いこと、女性の管理職比率が低いことなどは逆に労働力人口、優秀な人材が潜在していると捉えることができます。各地域においてもいずれもこの課題を抱えており、地域経済の成長のためにも女性の活躍が期待されています。

女性の活躍の場は企業や経済の場だけではありません。地域の状況を良く理解し、地域に根差した活動ができる人材はますます必要とされています。女性が活躍できる環境を整えるには、企業単体での取組だけでなく、地域ぐるみの協力が求められます。

都道府県、市区町村によって状況は異なっており、それぞれに合った展開が必要なのです。

この度の「輝く女性応援会議」では、各地で実際に活躍する輝く女性の経験や、応援するリーダーから参考にすべき好事例や、今後の課題として受け止めるべきもの等が具体的に示されました。

また、会議で披露された様々な事例のみならず、これを機にそれぞれの地域における連携ネットワークが構築され、活動が促進されたことも大きな意義がありました。

商工会、経営者協会等の地域経済団体、地方銀行等の金融機関、農業協同組合、教育機関やNPOなど地域を支える多様な主体が参加し、女性の活躍を支える多くの取組を紹介、情報を共有し、ノウハウを提供する場となりました。

各府県の知事がリーダーとして率先してコミットしたことも大きく影響し、本会議を今後の展開のためのキックオフとして位置づけて、会議の取りまとめを「宣言」として発信したり、連携ネットワークを立ち上げたりという積極的な行動に発展し、またそれを発信することができました。

今後への期待

これまで「輝く女性応援会議」が実施された地域にとどまらず、すでに多くの地域が積極的に女性の活躍に向けての取組を始めています。「女性の大活躍福岡県会議」の「自主宣言登録企業」には140もの企業・団体が参加しており、「働く女性応援隊ひろしま」には、経済団体、労働団体のほか県内全市町を含む行政などが一丸となって活動を始めました。連携ネットワークが未だ構築されていない地域であっても都道府県や市町村、地域の団体などが中心となって企業における女性の活躍支援や女性のための支援策を実行しています。

ひとつひとつのこれらの動きが大きなムーブメントとなって全国へと広がり、より良い社会へと向かっていく流れが動きだしています。

「輝く女性応援会議」の詳細はHPをご覧ください。

http://www.gender.go.jp/policy/sokushin/chiiki_ouenkaigi.html

働く女性応援隊ひろしま