「共同参画」2014年 10月号

「共同参画」2014年 10月号

特集1

放課後等に子どもたちの安全で健やかな居場所作りを推進するための放課後子ども総合プラン
厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課
文部科学省生涯学習政策局社会教育課

我が国最大の潜在力である女性の力を最大限発揮し、「女性が輝く社会」を実現するには、安全で安心して子供を預けることができる環境の整備に向け、「小1の壁」と指摘されている小学校入学後の児童の総合的な放課後対策について説明します。

全ての就学児童が放課後等を安全・安心に過ごし、多様な体験・活動を行うことができるよう、一体型を中心とした放課後児童クラブ及び放課後子供教室の計画的な整備等を進めます。

(経緯について)

少子高齢化が進む中、日本経済の成長を持続していくためには、我が国最大の潜在力である女性の力を最大限に発揮し、「女性が輝く社会」を実現するために、安全で安心して児童を預けることのできる環境を整備することが必要です。

国としては現在、保育所の「待機児童解消化加速プラン」に取り組んでいるところですが、保育所を利用する共働き家庭等においては、児童の小学校就学後も、安全・安心な放課後の居場所の確保という課題に直面します。現在は、保護者が労働等により昼間家庭にいない児童に、適切な遊び及び生活の場を提供する放課後児童クラブと、全ての子供を対象に地域の方々の参画を得て、学習や様々な体験・交流活動、スポーツ・文化活動等の機会を提供する放課後子供教室を実施していますが、放課後児童クラブの開設場所や開所時間が必ずしも十分ではないために、子供が小学校に入学するとこれまで勤めてきた仕事を辞めざるを得ない状況、いわゆる「小1の壁」という問題を打破するためには、保育サービスの拡充のみならず、児童が放課後等を安全・安心に過ごすことができる居場所についても整備を進めていく必要があります。

加えて、次代を担う人材の育成の観点からは、共働き家庭等の児童に限らず、全ての児童が放課後等における多様な体験・活動を行うことのできるようにすることが重要であり、全ての児童を対象として総合的な放課後対策を講じる必要があります。

このような観点から、厚生労働省及び文部科学省が連携して検討を進め、平成26年5月の産業競争力会議課題別会合において、両省大臣名により、放課後児童クラブの受け皿を拡大するとともに、一体型を中心とした放課後児童クラブ及び放課後子供教室の計画的な整備を目指す方針を示しました。そして、平成26年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2014においては、「(略)いわゆる「小1の壁」を打破し、次代を担う人材を育成するため、厚生労働省と文部科学省が共同して「放課後子ども総合プラン」を年央に策定(略)」することとされ、

  • 放課後児童クラブについては、平成31年度末までに約30万人分の受け皿を拡大する
  • 一体型の放課後児童クラブ及び放課後子供教室を約1万か所以上とすることが盛り込まれました。

こうした状況を踏まえ、今般、両省において「放課後子ども総合プラン」をとりまとめるに至りました。

(放課後子ども総合プラン)

「放課後子ども総合プラン」では「日本再興戦略」改訂2014に盛り込まれた上記の目標を実現するため、国は「放課後子ども総合プラン」に基づく取組等について次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定指針(本年秋に策定予定)に記載することとしています。また、市町村及び都道府県は、国の行動計画策定指針に即し、放課後児童クラブの平成31年度の目標事業量や小学校の余裕教室の活用方策などを行動計画に盛り込み、計画的な整備を図ることとしています。

具体的な取組としては、「学校の余裕教室等を徹底活用する」ことをキーワードに、(1)実施主体(教育委員会又は福祉部局)の責任の所在の明確化、(2)既に活用されている余裕教室(学習方法・指導方法の多様化に対応したスペース、教職員のためのスペース、地域住民の学習活動のためのスペース等)を含めた学校施設の活用の再検討、(3)放課後児童クラブと放課後子供教室を実施している放課後等の時間帯のみ一時的に学校施設を活用することを盛り込み、こうした取組を効果的かつ円滑に実施していくことを地方自治体に求めています。

また、一体型の放課後児童クラブ及び放課後子供教室については、全ての児童の安全・安心な居場所を確保するため、同一の小学校内等で両事業を実施し、共働き家庭等の児童を含めた全ての児童が放課後子供教室の活動プログラムに参加できるものであるとの定義を示すとともに、一体型の放課後児童クラブ及び放課後子供教室の実施に当たっては、

  • 特別な支援を必要とする児童等を含めた全ての児童の安全・安心な放課後等の居場所の確保
  • 全ての児童を対象とした多様な学習・体験活動のプログラムの充実

について留意しつつ、一体型の利点を生かした取組の推進を図ることが重要であるとしています。

さらに、新たな教育委員会制度の下で全ての地方自治体に設置することとなっている「総合教育会議」を活用して、首長と教育委員会が、学校施設の積極的な活用など、総合的な放課後対策の在り方について十分協議することが重要であるとの視点も盛り込んでいます。

(一体型のモデルケース例について)

放課後子ども総合プランに盛り込まれている放課後児童クラブと放課後子供教室の一体的な実施については、地域の実情に応じた様々な取組方法が考えられますが、ここでは現時点で考えられるモデルケースとして4つのケースを紹介します。

一つ目は、学校の余裕教室等を利用して、1部屋以上を放課後子供教室、1部屋以上を放課後児童クラブの専用室とし、放課後子供教室の活動場所で共通のプログラムを実施するケースです。

二つ目は、学校の特別教室と余裕教室等を一時的に利用するケースであり、学校の余裕教室等を1部屋以上利用して、放課後児童クラブの専用室(一時的な利用)とし、放課後子供教室は、特別教室や図書室、体育館、校庭等の多様なスペースを一時的に利用して、共通のプログラムを実施するケースです。

三つ目は、放課後児童クラブは校舎内ではなく学校敷地内の専用施設で実施し、放課後子供教室は校舎内の特別教室などを一時的に利用して共通のプログラムを実施するケースです。

四つ目は、放課後児童クラブ及び放課後子供教室を学校敷地内の専用施設を利用して実施するケースです。放課後子供教室の活動場所で共通のプログラムを実施します。

これらの「放課後子ども総合プラン」に基づく市町村等の取組に対し、国は、必要な財政的支援策を講じるため、毎年度予算編成過程において検討していくとともに、効果的な事例の収集・提供等を通じて地域の取組の活性化を図るものとしています。


1.一体型のモデルケース(学校の余裕教室等を利用)


2.モデルケース(学校の特別教室と余裕教室等を一時的に利用)


3.モデルケース(学校施設内の専用施設と特別教室等を利用)


4.モデルケース(学校敷地内の専用施設を利用)


(子どもたちの有意義な放課後のために:東京都豊島区の取組)

〜放課後児童健全育成事業と放課後子ども教室の一体的な運営〜

豊島区では、放課後児童健全育成事業(子どもスキップ)と放課後子ども教室を一体的に運営しています。子どもスキップ(SKIP)とは、Space for Kids’Ideal Play(子どもの理想的な遊び場)の略で、小学校施設を利用し、学童クラブと全児童を対象とする育成事業を総合的に展開する事業のことです。

近年、少子化の進行に加え、塾や習い事などに通う小学生が増え、放課後の時間が様変わりしています。そこで豊島区では、「遊ぶ時間」「遊ぶ仲間」「遊ぶ空間」の3つの「間」を学校内に用意し、子どもたちが様々な活動を通して、友達とかかわりながら遊び・学ぶことを目的として、10年前に「子どもスキップ」を始めました。現在では、区内に19カ所、6,500人以上の小学生が登録をしています。平成29年度には全小学校22か所で展開します。

放課後児童健全育成事業(子どもスキップ)と放課後子ども教室


また、放課後子ども教室は、地域の方がコーディネーターや指導員、安全管理員となって様々な教室を開催し、子どもたちに体験と交流の場を提供するとともに、地域の優れた人材を活用することで、地域教育力の向上にも寄与しています。

学校施設を活用した子どもスキップと放課後子ども教室が一体となることで、子どもたちに安全安心な活動場所を提供し、遊びや学習のほかスポーツ・読書・工作・伝統文化など様々な体験や交流を通じ小学生の放課後をより一層豊かなものにしています。

子どもスキップでの活動内容


さらに子どもスキップでは、「地域子ども懇談会」を開催し、地域・学校・家庭・行政が連携して、地域における子どもたちの健全育成活動や見守り活動の拠点としています。そこでは子どもたちの「地域の先生」を募って放課後子ども教室につなげたり、地域の安全情報を提供するなど、子どもをめぐる環境を地域・学校・家庭で共有し、地域の人材を取り込む仕組みとしても活用しています。

豊島区は、こうした活動を通して地域・学校・行政が一体となって、地域の子育てを応援しています。


〜第三次男女共同参画基本計画で、「男性、子どもにとっての男女共同参画」の柱の一つとして挙げられている、「子どもの健やかな成長と安全で安心な社会の実現」に関連する施策について、厚生労働省の取組をご紹介します。〜

小児慢性特定疾病対策の法改正について

現在、長期療養を必要とし、高額な医療費負担となる疾病にかかっている児童等に対し、児童の健全育成を目的として、その治療の確立と普及を図り、併せて患児家庭の医療費の負担軽減にも資するため、医療費の自己負担分を「小児慢性特定疾患治療研究事業」により助成しています。

この「小児慢性特定疾患治療研究事業」による医療費助成の仕組みについて、より公平で安定的なものとすること、また、疾病に関する研究の充実及び医療の質の向上を図り、併せて療養生活を支える総合的な支援の充実を図ることが患児とその家族等の積年の思いでした。

平成23年から難病対策の在り方の検討が開始されたことを踏まえ、翌年9月、社会保障審議会児童部会「小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」を設置し、慢性的な疾病にかかっている児童への支援の在り方について検討が行われ、平成25年12月に「慢性疾患を抱える子どもとその家族への支援の在り方(報告)」がとりまとめられました。

その内容は、(1)公平で安定的な医療費助成の仕組みの構築、(2)研究の推進と医療の質の向上、(3)慢性疾患児の特性を踏まえた健全育成・社会参加の促進、地域関係者が一体となった自立支援の充実、という大きな3つの柱から成っています。

(1)については、義務的経費化により一層安定的かつ公平な仕組みとしていくことが適当とする一方で、国民に対する公平性・合理性、また、持続可能性という観点から、給付水準は、負担能力に応じた適切な利用者負担とする必要があるとされました。

(2)は、患者データ登録の精度の向上を図り、治療研究を推進すること、(3)は、患児の自立や成長を支援するため、地域による総合的な支援の強化を行うことが必要であるとされました。

この報告をもとに児童福祉法の一部を改正する法律案が第186回国会に提出され、本年5月に成立しました。

この改正児童福祉法に基づく小児慢性特定疾病対策を平成27年1月1日から実施し、小児慢性特定疾病児童等とその家族に対する支援をより一層充実させることとしております。