「共同参画」2014年 8月号

「共同参画」2014年 8月号

特集1

女性と男性で輝く社会へ〜紅一点じゃ、足りない。×家事場のパパヂカラ〜
平成26年度「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」開催報告
内閣府男女共同参画局総務課

男女共同参画週間の中央行事として、6月27日(金)日比谷公会堂(東京都千代田区)において、平成26年度「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」が開催されました。今年のテーマは、「女性と男性で輝く社会へ〜紅一点じゃ、足りない。×家事場のパパヂカラ〜」です。
全国各地から800名を超える方々にご出席いただきました。
なお、この会議は「輝く女性の応援会議」の一環として行っています。

森大臣の主催者挨拶、基調講演(1)

開会にあたり、森まさこ内閣府特命担当大臣(男女共同参画)から、「女性、男性にかかわらず、誰もが活躍できる男女共同参画社会を作るには、職場や地域など身近なところからの取組が重要です。今後とも、男女共同参画社会の実現、そして、女性の活躍推進に向けて、ご理解とご協力を宜しくお願いします。」と挨拶がありました。

その後の基調講演では、安倍総理のリーダーシップの下で女性の活躍推進について具体的な施策を展開し、成果を出していること、改訂された「日本再興戦略」等新たな施策を講じていくことについて述べられました。

森まさこ内閣府特命担当大臣


基調講演(2)

ブルース・ミラー駐日オーストラリア大使は、「豪州における女性活躍推進の取組〜女性の活躍促進に向け男性にできること〜」と題して、講演を行いました。

ミラー大使は、「アベノミクスの行方に強い関心があり、両国が女性の社会参加等の共通のテーマで協力し合うことは経済的効果にもつながる。」と述べられました。

次に、ジェンダー平等を女性だけの問題であるかのように扱うのをやめる必要があり、女性と男性の両方の振る舞いが変わらなくてはならず、従来の男女格差を永続させるような職場の規範や構造を変える必要がある。このことを男性が、仲間の男性に求めるような環境づくりが不可欠。このため、豪州では、「変化をもたらす男性リーダー・グループ(Male Champions of Change)」として、各界を代表する男性リーダーが女性の活躍を後押ししていることについて説明がありました。

また、ミラー大使は、「女性に活躍の場を与えることは、企業や組織の利益拡大につながる。ジェンダー平等の推進は、組織の業績や生産性向上、優秀な人材の長期確保につながると、豪政府は認識している。」と述べられました。

ブルース・ミラー大使


パネルディスカッション

飯田香織NHK報道局経済部副部長をコーディネーターに、4名のパネリストから企業の取組や具体策、ご自身の働き方等を紹介していただきました。

岡藤正広伊藤忠商事代表取締役社長は、「他社に先駆けて、女性の採用・管理職登用に数値目標を定め、支援制度も拡充したが、現場との乖離や充実した制度への甘えといった問題が生じた。そこで、新たなステージに向けた調整が必要だと感じた。最も重要なのは、現場視点。数値目標は撤廃し、個人の適性や業界の状況を見極めた配属、個々人の事情に合わせた個人支援に転換した。商社初の女性役員、女性労働組合長が誕生するなど、伊藤忠商事には労使双方で女性が実際に活躍できる場がある。全体的な働き方の改革も重要で、長時間残業は女性の活躍を阻害している。伊藤忠商事では、昨年から、朝型勤務を導入し、効率的な働き方を推進している。」と紹介されました。

岡藤正広さん 伊藤忠商事株式会社代表取締役社長


川村隆日立製作所相談役は、「当社の採用の約85%が技術系の社員。女性の採用比率を高めようと思っても、女性の技術系、いわゆる「リケジョ」が日本では非常に少ないので難しい。2009年以降特にダイバーシティの取組に力を入れ、2012年には、女性経営リーダーの確保・育成に注力を始めた。現在は、数値目標として(1)2015年度までに女性役員登用、(2)2020年度までに女性管理職を現状の2.5倍の1,000人に増やすということを掲げている。日立グループ内で女性登用等の進捗、課題の「見える化」をしてランキングを行っており、各社で女性が活躍している。」と報告されました。


川村隆さん 株式会社日立製作所相談役


白井明子ローソンマーケティング本部マネジャーは、これまでの自身の働き方について、「大学を出てローソンに入社し、大阪で3年くらい店長をやった。社内公募で本社に着任したが、29歳の時にどん底を味わい、社内の評価も最低ランクだった。その後、これはまずいと社会人大学院に通うようになり、そこでいろんな立場の友達ができ、話を聞く中で、どんどん自分で企画ができるようになってきた。リラックマフェアというキャンペーンを企画したり、2010年からソーシャルメディアで「ローソンクルーあきこちゃん」というキャラクターを作り、認められた。」と話されました。

白井明子さん 株式会社ローソン マーケティング本部 マネジャー


塚越学ファザーリング・ジャパン理事は、「自ら育児休業を取得している。NPOでイクボス・プロジェクトを立ち上げた。イクメン(育児に積極的な父親たち)は普及したが、イクボス(部下のワークライフバランスに配慮し、会社で成果も挙げていく上司)を普及させる方が難しい。イクボスが普及しにくいのは、人事評価の兼ね合いとロールモデルの不在。ワークライフバランスをしながら、成果を挙げていくようなロールモデルを「見える化」していくことが重要である。」と述べられました。

塚越学さん 特定非営利活動法人 ファザーリング・ジャパン理事


ディスカッションでは、飯田さんからの質問に対し、川村さんは、「我々のグループの中の欧米の会社では、男性の働き方が違う。真夜中まで働いて、夜中に意思決定するということは決してない。長時間残業で体を壊すようなことをやらなくても、たくさんの注文が取れるということに日本人社員が気付き出した。これからは、多様な働き方が認められ、パフォーマンスベースの評価になっていくことが求められる。」、塚越さんは、「新入社員の7割が育児休業を取りたいと思っている。中学校の家庭科が男性にも必修化された世代は今35歳以下。このイクメン世代は、会社の中では今、脂が乗っているので、人材を活用していかなければならない。管理職の価値観とはずれているので、部下の側からのコミュニケーションが重要。」と述べられました。

白井さんは、「20代の時は自分は管理職になれないと思っていた。30代になって女性管理職が増え、私もなれるかなと思った。やっぱり上に上がって行かないと自分のやりたいことも当然できないし、上に行けば共有される情報や紹介される人脈等、情報量がすごく増えてくる。」と話されました。

岡藤さんは、「成功例を作ることによって後に続く女性が出てくる。女性には、自分がその成功例になるんだという気概でぜひがんばってもらいたい。また、企業の方もそういう成功例を1つでも2つでも多く作ることによって、自然にそれに続く人が出てくる。」と述べられました。

飯田香織さん NHK報道局経済部副部長


最後に、「男女問わず、本日のテーマを実現するために必要なこと」を一言づつ書いていただきました。

  • ゲンコツ改革(ゲン:現場、コ:個別支援、ツ:つながり)(岡藤さん)
  • 男性側の意識改革/働き方の改革(川村さん)
  • チームワーク(白井さん)
  • 信頼とコミュニケーション(塚越さん)