「共同参画」2014年 7月号

「共同参画」2014年 7月号

特集1

変わりゆく男性の仕事と暮らし
─平成26年版男女共同参画白書の公表─
内閣府男女共同参画局調査課

内閣府男女共同参画局では、本年6月17日(火)に、平成26年版男女共同参画白書を公表しました。特集「変わりゆく男性の仕事と暮らし」のポイントをご紹介します。

本年6月17日(火)に、平成26年版男女共同参画白書を公表しました。

本白書は、男女共同参画社会基本法に基づいて毎年国会に報告するもので、今回が15回目になります。

大きく2部構成となっており、「(1)平成25年度 男女共同参画社会の形成の状況」では、冒頭の特集で男性の仕事と暮らしを扱っているほか、例年どおり、各分野における男女の現状を様々な統計データを用いて示しています。「(2)男女共同参画社会の形成の促進に関する施策」では、平成25年度に講じた施策及び26年度に講じようとする施策をまとめています。

ここでは、第(1)部冒頭の特集のポイントをご紹介します。

1.特集のねらい

本特集では、男性に焦点を置きながら、家族・世帯及び男女のワーク・ライフ・バランス、男女の就業の状況、男女共同参画に関する男女の意識について、現状及び中長期的な変化を分析しています。

なお、男女共同参画白書の特集で男性を取り上げるのは、今回が初めてです。

男性の仕事と暮らしに関して何が変化し何が変化していないかについて、特徴的なデータを交えながらご紹介します。

2.家族・世帯の変化

まず、大きく変化したこととして、典型的と言える家族類型がなくなったことが挙げられます。平成12年に、かつて典型的と考えられていた「夫婦と子供」から成る世帯の割合を、「単独」世帯が逆転しました。また、「夫婦のみ」の世帯やひとり親の世帯(「女親と子供」及び「男親と子供」の合計)が増加し、「3世代等」の世帯が減少しています(第1図)。

単独世帯の割合の増加の背景として、高齢化に加えて、未婚率の上昇が考えられます。男女の未婚者の割合を就業状態別に見ると、男性では非正規雇用者及び完全失業者の未婚率が、女性では正規雇用者及び完全失業者の未婚率が、それぞれの就業者全体をおおむね上回っています(第2図)。

独身者女性において、結婚に利点を感じる者の割合や希望する子ども数が微増に転じていますが、家族類型の分散傾向を大きく変えるだけの影響力を持ちえるかどうかは、現時点では断言することは難しい状態です。


第1図 世帯の家族類型別割合の推移(昭和55年→平成22年)


第2図 就業状態(従業上の地位及び雇用形態)別に見た年齢階級別未婚者の割合(男女別、平成25年)


3.男性の就業環境の変化

変化したことの2点目として、男性が外で働き女性が家庭を守る、という性別分業スタイルが多数派ではなくなってきている、という点が挙げられます。平成9年に、共働き世帯の数が男性雇用者と無業の妻から成る世帯を上回り、その後も増加し続けています。その背景として、男性の就業を取り巻く環境の変化が考えられます。

第一に、終身雇用が暗黙の前提として考えにくくなりつつあることが指摘できます。59歳以下の男性就業者の平均勤続年数は減少しており、男性就業者数も、建設業や製造業といった従来の主力産業において減少しています。転職が活発化しているものの、女性と比べると成長産業への労働力人口への移動は鈍くなっています。

また、男性の非正規雇用者が増加し続けています。第3図のグレーの網掛け部分を縦方向に見ると、20歳代後半〜30歳代前半及び60歳代において、若い生まれ世代ほど非正規雇用者の割合が高くなっていることが分かります。

第二に、男性の賃金の減少傾向が挙げられます。男性の平均所定内給与額を見ると、雇用形態及び到達した教育段階に関わらず減少しています(第4図)。

更に、女性の就業等に関する男女の意識が変化していることも、共働き世帯の増加と関連があると考えられます。性別役割分担に関する意識について、若い生まれ世代では、男女とも40%程度とほとんど差がなくなってきています(第5図)。


第3図 雇用形態別に見た男性の年齢階級別労働力率の世代による特徴


第4図 教育(学歴)別雇用形態別平均所定内給与額の年平均増減率(平成17年→25年)


第5図 年齢階級別教育段階別「結婚後は、夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という考え方に対する賛成者の割合の世代別特徴(男女別)


4.男性のワーク・ライフ・バランスの現実と男性の意識

このように、世帯構造や男性の就業環境が大きく変化していますが、男性の働き方や家事活動への参加には、今のところ劇的な変化は見られません。

年間就業日数が200日以上の男性の労働時間を見ると、正規の職員・従業員及び非正規の職員・従業員のいずれにおいても、就業時間が週60時間以上である者の割合には、顕著かつ持続的な減少傾向は見られません(第6図)。

また、有業・有配偶男性の家事関連活動は、以前と比べて拡大しているものの、全般として女性より低い水準が続いています(第7図)。男性の育児休業の取得率も、2%前後で推移しています。

男性の長時間労働や家事関連活動への参加において大きな変化が見られないことには、主たる稼ぎ手としての男性の意識が背景にあると考えられます。男性の非正規雇用者が、非正規雇用を選んだ理由として「正規の職員・従業員の仕事がないから」を挙げる割合が高いことから、男性に正規雇用が標準的な雇用形態と考える傾向があると考えられます。


第6図 年間就業日数200日以上の男性就業者の就業形態別週間就業時間の推移(昭和62年→平成24年)


第7図 有業・有配偶者の仕事時間及び家事関連時間の男女比の推移(平成13年→23年)


一方で、長時間労働や家事関連活動時間の短さといった現状に、必ずしも男性が満足しているわけではないこともうかがわれます。ワーク・ライフ・バランスに関する希望と現実を見ると、現状として「「仕事」を優先」している男性は、「「仕事」を優先」させたいと希望する男性の倍以上に達しています。また、現状として「「仕事」と「家庭生活」をともに優先」している男性は、「ともに優先」したいと希望する男性の3分の2に留まっています。こうした希望と現実の乖離は、平成19年以降大きくは変化していません(第8図)。


第8図 仕事と生活の調和に関する希望と現実の推移(男女別、平成19年→24年)


5.夫婦の役割に関する女性の意識

男性の働き方や家事関連活動に関する女性の意識もまた、男性の長時間労働や家事関連活動への関わり方を決定する重要な要素の一つです。この点については、変化した面と変化していない面の両面が見られます。

変化した点として、独身女性において、結婚に経済的な利点を感じる割合が増加していることが挙げられます。

また、第5図b(再掲)の大学卒独身女性のグラフを縦方向に見ると、昭和38年以降生まれ世代の独身女性は、37年以前生まれ世代と比べて性別役割分担を肯定する割合が高くなっていることが分かります。

一方で、女性のワーク・ライフ・バランスの理想と現実を見ると、女性の3分の1が「「家庭生活」を優先」したいと考えており、この傾向には平成19年以降大きな変化は見られません(第8図(再掲))。

6.到達した教育段階の関わり

これまで、男性の仕事と暮らしについて変化した点と変化していない点を見てきましたが、これらをさらに到達した教育段階別に見ると、教育段階によって状況が異なることが分かります。

まず、男女を問わず、教育段階によって未婚率や雇用形態が大きく異なるという点を指摘することができます(第9図:男性の例)。また、男性の平均所定内給与額の減少幅は、雇用形態に関わらず教育段階によって差が見られます(第4図(再掲))。世帯という観点から見ると、到達した教育段階が近い男女が結婚する割合が高く、共働き夫婦の所得の合計額は、夫婦の教育段階の組合せによって大きく異なります。さらに、男女を問わず、教育段階が高いほど女性の就業を肯定的に考え、性別役割分担を否定的に考える傾向があります(第5図(再掲))。

もちろん、到達した教育段階がすべてを説明するわけではありません。


第9図 教育(卒業)別に見た男性の未婚率の推移と就業者の就業形態別内訳


7.今後に向けて

これまで見てきたように、男性の就業を取り巻く状況は大きく変化しており、経済的な理由から女性が就業するという例が増えていくことが考えられます。

男女とも、女性の就業を肯定的に考える割合が増えており、特に若年層においては、性別役割分担に関する意識は男女でほとんど差が見られなくなっています。

一方で、男女の両方において男性を主たる稼ぎ手であると考える傾向も見られ、特に若い世代の独身者女性においてその傾向が強くなっています。また、昭和38年以降生まれ世代の大学卒の独身者女性において、37年以前生まれ世代よりも性別役割分担を肯定する割合が高くなっています。

このような現状と意識のかい離は、必ずしも現状が正確に認識されておらず、意識の変化が現状の変化に追いついていない、ということを意味するわけではありません。男女が、現状を踏まえた上で、現状とは逆の理想や願望を抱いていることを表している可能性もあります。

確実に言えるのは、家族類型、産業、就業スタイル、個人・社会生活といったあらゆる面において変化や多様化が進み、「主力」、「標準的」、「典型的」といった言葉で表せるような特定のモデルはもはや存在しない、ということです。

個々の男女だけでなく、企業・組織や行政も、あらゆる面における変化をより迅速かつ的確に把握して、従来の考えに縛られることなく様々な施策や制度の検討・実施を行うことが求められている、と考えられます。


本白書の特集では、ここで紹介した図表以外にも、様々なデータや取組の事例を取り上げています。詳しくは、内閣府ホームページを御覧ください。
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/index.html