「共同参画」2014年 5月号

「共同参画」2014年 5月号

行政施策トピックス

ダイバーシティ推進の経営効果と女性活躍推進の取組
経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室

「ダイバーシティ経営」というのは、「多様な人材の能力を最大限発揮させることで、企業のパフォーマンスにつなげる経営」であり、今や、グローバル企業にとっては、競争優位を確立するために不可欠な「経営戦略」であると考えられます。中でも「女性力の活用」は、日本企業にとって、ダイバーシティ経営に取り組む上での「試金石」とも言われています。

(「ダイバーシティ経営」の具体的なメリット)

具体的に、「ダイバーシティ経営」の意義・効用は大きく次の4つがあります。

一つ目は、グローバル化により多様化する市場ニーズに応じた商品開発、販売戦略を展開するためには、供給側の人的構成にも、市場と同様の「多様性」が求められます。特に女性は、国内でも海外でも、購買決定権の約2/3を握っており、供給側にも女性の視点を入れることは必要不可欠であると考えられています。

二つ目は、企業のガバナンスの観点からの効用で、「取締役会に女性が一人以上いる企業は破綻リスクが20%低くなっている」という英国の大学による調査結果(17000社を対象に調査)もあり、これは取締役会という集団としての視野や知見が広がり、変化への適応力が高まることによると考えられています。

三つ目は、資金調達における重要性です。欧米の機関投資家(年金基金等)は、SRIといわれる社会的責任投資(Social Responsible investment:環境・社会・ガバナンス等の非財務情報を考慮した投資)に積極的で、「ダイバーシティ」に関する取組も社会的責任投資における評価の対象となっています。

四つ目は、より広い母集団から「優秀な人材」を選び出すことができるようになること。特に人材難に苦しむ中小企業にとっては大きなメリットです。

(企業のパフォーマンスに対する影響)

データ分析による実証研究によると、女性役員比率が高い企業の方が、株主資本利益率などの経営指標が良い傾向があるといった結果(※図1)や、女性の活躍推進のために必要なワークライフバランスの環境整備(育児介護との両立支援や雇用者が柔軟に働ける制度など)に取り組む企業は、何もしない企業に比べ、正社員1人当たりの生産性が二倍以上高いといった結果(※図2)もでています。

こうした調査結果は、一例ですが、女性活躍推進に積極的に取り組み、成果を上げている企業は、「多様な人材を活かすマネジメントの能力」や「環境変化に適応するための自己変革力がある」という点で、「中長期的な成長力のある企業」であると考えられています。


図1 女性役員数と企業業績


図2 WLBに対する取り組みと生産性(※1)の関連


(経済産業省の取組 (1)ダイバーシティ経営企業100選)

経済産業省では、H24年度より、ダイバーシティ経営に優れた企業を「ダイバーシティ経営企業100選」として、選定・表彰しています。業種・規模・地域において様々なベストプラクティスを集め、それを広く発信することで、ダイバーシティ推進のすそ野を広げることを目的としています。

3年で累積100社程度の表彰を目指し、25年度は、135社の応募の中から、「100選」46社(大企業25社、中小企業21社)、「促進事業表彰」3社を選定し、本年3月3日に表彰式を行いました(※表1)。今回受賞した企業の取組とその成果として、以下のような事例がありました。


  • ・輸出向けのお酒の開発のために外国人女性を採用し、スパークリング清酒の開発に成功し、全日空の機内でも提供。
  • ・女性の企画による女性向けのパソコン開発において、ジュエリーブランドとコラボ。パール調の電源ボタンや爪(ネイル)を傷つけずに開けられるクラッチバッグ形状の開閉部など女性にとって嬉しいデザインで差別化に成功。
  • ・女性を積極的に採用している建築事務所では、建築設計分野に、ワークシェアの手法を導入することで、時間的制約のある女性が活躍できる職務環境を実現。

受賞企業における取組(ベストプラクティス)から共通的な要素を抜き出し、ダイバーシティ経営を成果につなげるための基本的な考え方を整理した「価値創造のためのダイバーシティ経営に向けて」(※図3)を作成しました。

今年度は、最終年度となりますが、6月中旬頃から公募を開始する予定です。


表1 平成25年度「ダイバーシティ経営企業100選」受賞企業


図3 ダイバーシティ経営の基本的な考え方と進め方(全体像)


(経済産業省の取組 (2)「なでしこ銘柄」の選定)

経済産業省は、東京証券取引所と共同で、女性活躍推進に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として、選定・公表しています。東証一部上場企業を対象に、「女性のキャリア支援」と「仕事と家庭の両立支援」の二つの側面からスコアリングを行い、各業種上位企業の中から財務面でのパフォーマンスもよい(3年間のROE平均が業種平均以上)企業として、26社を本年3月3日に発表しました(※表2)。今年度以降も継続的に行っていきたいと考えています。


表2 平成25年度「なでしこ銘柄」選定企業


<参考URL>

ダイバーシティ経営企業100選
http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen.html

なでしこ銘柄
http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/nadeshiko.html