「共同参画」2014年 3・4月号

「共同参画」2014年 3・4月号

特集2

農業を成長産業に
農業で輝く女性の力を活かします
農林水産省経営局就農・女性課 女性・高齢者活動推進室

農業を成長産業として発展させていくためには、既成概念にとらわれず、新たな発想で農業経営に取り組む女性の能力を最大限に活かすことが重要。女性ならではの感性や視点、アイディアなどにより農業分野で輝く女性の姿を広く社会に発信していきます。

農業就業人口は260万人(平成22年度)であり、そのうち女性の占める割合は5割となっております。女性が参画している農業経営体は売上や収益が向上する傾向にあり、経営の多角化に取り組む傾向が強いなど、女性農業者は、農業や地域の活性化において重要な役割を果たしており、6次産業化の担い手としても大きく期待されています。

近年、農業の現場で活躍する女性が増えてきており、単なる労働力としてではなく、農業経営の中で、女性ならではの感性や視点、アイディアを活かした経営を展開している女性が多く見受けられます。

農林水産省では、そうした意欲ある女性がますます能力を発揮し、より一層活躍していただくために、女性が働きやすい農業の環境づくりをより一層強化するとともに、女性の力で新たな農林水産業や地域づくりを進めていくことが重要だと考えております。


農水PJ概要


○農業女子プロジェクト

農林水産省では、女性農業者が持つ様々な知恵を、食卓を超えて社会に届けるために昨年11月に農業女子プロジェクトを立ち上げました。

農業女子プロジェクトは、女性農業者が日々の生活や仕事、自然との関わりの中で培った知恵を様々な企業のシーズと結びつけ、新たな商品やサービス・情報を社会に広く発信し、農業で活躍する女性の姿を多くの皆様に知っていただくための取り組みです。

プロジェクトでは、農業女子の持つ、農業女子の生産力の可能性を拡げる「生産力」、農業女子ならではの知恵を商品化する「知恵力」、農業女子という新市場を展開する「市場力」の3つの力を発揮し、様々な業種の企業とのコラボレーションを進めています。プロジェクトの趣旨に賛同する企業と女性農業者が協同で進める個別プロジェクトは、1年間をタームに、新たな商品やサービス等のアウトプットを生み出すこととしています。

参加する農業女子メンバーは、経営者、跡継ぎ娘、農家のお嫁さん、農業法人の農場長など立場も様々、作物も水稲、野菜、果樹、花き、畜産と多岐にわたっています。2014年2月現在、70名の農業女子が参加しており、現在も全国から募集中です。また、プロジェクトの取組を外部との架け橋となって広く発信し、盛り上げていただく「農業女子プロジェクトサポーターズ」も募集しています。

農業女子プロジェクトホームページ

http://www.maff.go.jp/j/keiei/nougyoujoshi/

農業女子プロジェクトFacebook

https://www.facebook.com/nougyoujoshi.project


農業女子プロジェクトロゴマーク

プロジェクトのシンボルでもあるロゴマークは農業に関する地図記号を用いて、きらきら輝く太陽のようなエネルギー、女性の視点で新しい価値を生み出していくエネルギーをイメージしています。

農業女子プロジェクトロゴマーク


○個別プロジェクトの取組

昨年11月に「第1回推進会議」を開催し、企業が農業女子と協同で進める「個別プロジェクト」をスタートさせました。具体的には自動車メーカーやファーストフードチェーン、旅行会社、ホテルなどの9社の企業(平成26年2月現在)と農業女子とのコラボレーションを開始しております。


農業女子プロジェクト全体イメージ


【‘私の’軽トラックプロジェクト】(ダイハツ工業株式会社)

農業女子の視点も取り入れた次世代トラックの企画・開発を進めています。農業女子の軽トラック利用の実態、不満点や要望を開発担当者が直接聞きに行く‘農業女子向け軽トラック調査’が、全国各地で展開され、次世代軽トラックの誕生に向けて各地で意見交換を行っています。

【農業女子的野菜が喜ぶメニュー開発】(日本サブウェイ株式会社)

農業女子のアイディアから、食べる人も野菜も喜ぶメニューを開発します。農業女子と一緒に野菜のおいしさを活かして、野菜を子どもたちにもっと好きになってもらえるようなサイドメニューを企画するプロジェクトを進めます。農業女子が生産する農産物の特徴を活かしたメニュー開発のための意見交換が行われています。

【女子的トイレ開発プロジェクト】(株式会社レンタルのニッケン)

女性が使いたくなる仮設トイレを農業女子と一緒に考えていきます。女性が農作業時に困るのが圃場にトイレが設置されていないこと。農業女子から意見を聞き取り、女性が進んで使いたくなる仮説トイレを開発するプロジェクトを進めます。

【農業女子的!おもてなしプロジェクト】(リーガロイヤルホテル東京)

ホテルでのおもてなしについて、農業女子と一緒に考えて提供します。「農業女子フェア(仮)」に向けて、農業女子の知恵や生産力を取り入れたサービスによる宿泊プランやレストランメニュー、イベントなどの企画を農業女子と一緒に組み立てていきます。

【農業女子Beautyプロジェクト】(株式会社コーセー)

農業女子の就業環境に適した化粧品をキットとして提供し、使用感や悩みを聞き取ります。農作業時の日焼けや感想、汗など農業女子を取り巻く環境は非常に過酷なものです。女子の美を極めるため、機能と気持ちの両方をバックアップするための化粧品をキットとして提供するとともに、その使用感や改善案などをフィードバックし、今後の商品開発や改善に活かしていく取組です。

【フィールドウェア開発プロジェクト】(株式会社モンベル)

農業女子目線で、快適かつファッショナブルなウェアを考え提案していきます。ウェアに対する日ごろの悩みを聞き取り、それにこたえるアイテム紹介やお手入れ方法などをアドバイスするとともに、今後、農業女子がフィールドウェアをモニター使用し、気づきやアイディア等を製品にフィードバックするプロジェクトを進めます。

【教えて!農業女子プロジェクト】(株式会社東急ハンズ)

家庭菜園や野菜を使った加工品などのワークショップを農業女子が先生として開催!農業女子の商品の販売も行います。歳時などのテーマに合わせて農業女子の生産品を利用したワークショップを店頭で開催、商品の販売も同時に実施します。農業女子の新しい提案の発信に取り組んで行きます。

【夢ある‘農業女子’応援】(井関農機株式会社)

女性が農業をする中で、大変だと感じていること、困っていることを共有し、サポートします。農業機械・栽培技術のサポート部隊を設置し、作物・地域に合わせた効果的な農業機械の選択・使用方法を提供すると共に栽培方法のサポートなどを実施します。

【農業体験&交流ツアー】(株式会社エイチ・アイ・エス)

農業女子が行っている農業体験や加工体験をさらにパワーアップ。農業女子を訪問し、学び、体験するツアーを企画します。

農業のイメージ変え、可能性を広げていき、農業と他業種のコラボレーションで、新しい市場を作るなど農業体験の楽しさを沢山の方に提供の機会創出に取り組んで行きます。


こうした、プロジェクトの活動を通じて、農業内外の多様な企業・団体と連携し、農業で活躍する女性の姿を様々な切り口から情報発信することにより、社会全体での女性農業者の存在感を高め、併せて職業としての農業を選択する若手女性の増加を図っていくこととしております。

○次世代を担う女性農業者たち

農山漁村においては、数多くの女性達が、いきいきと活動を展開されており、これらの方々の素晴らしい活躍を広く知っていただくため、3月6日に開催された「農山漁村女性の日」の記念行事の中で、農林水産業分野における、次世代を担う地域リーダーとなりうる女性、地域における優良な女性の取組や女性登用に積極的な組織等の活動において、優れた活動を行った女性達への表彰式が行われました。これらの受賞者の中から、特に優れた活動を行っている女性達の活動を以下にご紹介します。

「農山漁村女性の日」設立の経緯

この日は、「国際婦人の10年」ナイロビ世界会議(昭和60年)で採択された「婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略」を受け、我が国において決定された、「西暦2000年に向けての新国内行動計画」(昭和62年策定)の具体的施策の一つとして、位置付けられたものです。

3月10日に設定することについては、まず第1に国際的な視点として「国際婦人の10年」の基本となる世界行動計画草案が検討された時期であること、第2に農家・農村の生活リズムの視点から、農作業が比較的少なく社会生活においても女性が学習や話し合いを共にする条件が整っていること、第3に女性自身の視点として農山漁村女性の3つの能力(知恵、技、経験)をトータル(10)(とお)に発揮してほしいという願いも込められています。


「平成25年度農山漁村男女共同参画優良活動表彰」農林水産大臣賞受賞者の紹介

この表彰は、農林水産業分野において、次世代を担う地域リーダーとなることが見込まれている女性や、女性の参画を積極的に推進している組織等を表彰することによって、農山漁村における男女共同参画の取組の推進に資することを目的に行っています。

(1)次世代を担う地域リーダー部門

(1)寺田真由美氏(岐阜県)

寺田真由美氏(岐阜県)


平成11年、結婚を機に就農。平成18年に夫婦で認定農業者となる。農家の後継者でない若者の研修受入により、本気で農業をやりたい人と一緒に新しい農業スタイルを作りたいと、平成22年に「株式会社 寺田農園」を設立、代表取締役となる。同年、加工所を建設。自社生産のトマトをジュースやピューレ、ドライトマト等に加工し、ネーミング・パッケージにも配慮して販売するなど、地域内でも先駆的に6次産業化に取り組むとともに、女性の感性を活かした「自分らしい新しい農業スタイル」を実践している。

(2) 三宅静恵氏(福岡県)

三宅静恵氏(福岡県)


平成8年、両親の経営する三宅牧場に転職し、出産を機に退職。平成14年に加工所「まきば」を立ち上げ、三宅牧場のもち米を使って餅加工を始める。平成18年に直営店を併設した加工所をオープン。平成19年に「合同会社三宅牧場まきば」として法人化。加工所では三宅牧場の米などを使った餅、はかた地どりおにぎり、ポン菓子等を製造し、直営店やネットショップ、JA直売所、地元量販店等で販売。また、子育て世代の女性を積極的に雇用し、就業時間の工夫等により従業員が働きやすい職場環境を整えている。

(2)組織における女性登用部門

(1)大崎市農業委員会(宮城県)

大崎市農業委員会(宮城県)


大崎市農業委員50名中、女性委員が6名で女性の登用率は12%。毎年管内9選挙区から2人ずつ、「一日女性農業委員」に任命する「一日女性農業委員会」を年2回開催し、女性の市農業施策から市政へと視野を広げるきっかけとなっている。家族経営協定の促進についても農業委員会をあげて協定締結に取り組んでいる。また、女性農業者ネットワークの構築を進め、親身な相談活動を行う姿勢を共有している。女性農業委員が編集委員の一員となり、「大崎市農業委員会だより」を発行している。

(2)栃木県農村女性会議(栃木県)

栃木県農村女性会議(栃木県)


県域の各農村女性団体と各地区農村女性会議で構成され、18年にわたり活動を行ってきた。県が策定した「とちぎの農村女性ビジョン」これに続く「とちぎ農業・農村男女共同参画ビジョン」の推進母体として栃木県の女性農業者の育成や男女共同参画の着実な推進に貢献してきた。特に女性の社会参画の促進については、同組織が全県下で登用活動を展開し、第21回農業委員統一選挙において、県内全市町の農業委員会に女性の農業委員を誕生させ、全国一位の実績を納めた。併せて平成23年度に県内全JAに女性理事を誕生させた。県各市町農業委員675名の内、77名が女性(11.4%)、県内各理事311名の内、22名が女性(7.1%)です。

○施策による支援

農業を成長産業として発展させていくためには、既成概念にとらわれず、新たな発想で農業経営に取り組む女性の能力を最大限に活かすことが重要であり、女性農業者の新たな発想によるビジネスチャレンジを促進し、その能力を最大限に発揮させていくことが、農業経営や地域経済の発展に必要です。

農業で活躍している女性は着実に増えてきている中、女性の経営参画は農業経営の発展に大きく関わっており、売り上げの増加や、経営の多角化につながる傾向にあります。一方で、豊かな才能やキャリアを持ちながらも、その力を活かしきれずに潜在力にとどまっている女性が、特に若い世代に多く見受けられます。

そうした女性は、きっかけとなる情報や活躍できる機会があれば、瞬く間に第一線で活躍できる能力を身につけ、成長することができます。

農林水産省では、可能性を秘めた女性をターゲットに女性の経営参画を促進する仕組みや、地域農業の活性化などにチャレンジする女性への支援などの施策をさまざまな切り口から展開していくこととしております。また、平成26年度からは、新たに、農業経営や農村に変革をもたらす次世代リーダーとなりうる女性農業経営者の活躍促進、農業で新たにチャレンジを行う女性のビジネス発展を支援し、女性農業者の活躍促進及び社会的認知度の向上を目的とした「輝く女性農業経営者育成事業」を実施します。次世代リーダーとなりうる意欲ある女性農業者の資質向上及び活躍を促進するため、消費者への直接販売や商談会出展等のビジネス発展に資する活躍機会の提供や、地域における女性農業者の経営意欲や資質の向上、有望な人材の掘り起こし等を推進するための取り組みをサポートしていきます。

その他、農林水産省の様々な事業においても、女性が活躍するための環境づくりを整備するため、女性の参画を促進する仕組みや、6次産業化などの女性の実践活動を促進する事業等について、女性や女性グループへの事業活用の促進を図り、地域農業の活性化などにチャレンジする女性への支援を展開していきます。

女性支援施策の詳細はこちらをご覧ください。

農林水産省ホームページ

http://www.maff.go.jp/j/keiei/kourei/danzyo/d_yosan/index.html