「共同参画」2013年 10月号

「共同参画」2013年 10月号

連載 その1

男女共同参画の視点からの防災・復興の取組事例(3)
被災地の女性を雇用した買物代行・安否確認事業(岩手県沿岸部)

内閣府男女共同参画局総務課

仮設住宅で暮らす人々の日常生活支援

特定非営利活動法人参画プランニング・いわて(以下「参画プランニング・いわて」という。)は、岩手県盛岡市の委託を受け、平成23年8月から岩手県宮古市、大槌町、野田村、平成24年4月から大船渡市、25年4月から陸前高田市において、「デリバリーケアプロジェクト事業」を行っています。

この事業は、緊急雇用創出事業として、被災した女性を雇用し、軽自動車を用いて、仮設住宅等と地元商店を結ぶ買物代行と安否確認を行っているものです。

平地にあった市街地が津波により流出し、商店がない状況の中で、仮設住宅等が丘陵地に点在しており、高齢者や障害者、病気の人、乳幼児のいる家庭等は買物等の日常生活に困っているのではないかという疑問が、事業を実施した経緯となっています。

買物代行の流れは、電話で注文の依頼を受けて食料品や日用品、衣料等の買物を代行し、配達の際に、利用者から購入代金と代行料100円を受け取る仕組みです。1品でも依頼することができ、また、スタッフが話し相手にもなることから、毎日のように依頼する一人暮らしの高齢者もいます。

平成25年8月末現在、スタッフとして沿岸被災地の女性20名を雇用しています。


被災者への声かけ
被災者への声かけ

買物代行と安否確認の現状

サービス開始から平成25年3月末までに買物を代行した総数は5,157件です。買物代行の顧客数は319件(女性242件、男性77件)、安否確認の顧客数は1,016件(女性685件、男性331件)となっています。

ある地域では、買物代行を頼まれた利用者宅を訪問したところ、本人から調子が悪いと言われたので病院に行くように促し、本人も同意したため担当の保健師へ連絡を取って、救急車で搬送してもらいました。病院から自宅に戻った利用者に頼まれた食料品を配達した際に、体調がすぐれない様子が気になったスタッフは、翌朝電話をかけました。しかし、電話がつながらなかったため、様子が気になり、利用者の自宅へ向かうとともに、仮設住宅で活動している支援団体を通じて、町役場へ連絡を入れてもらいました。町役場の担当者が中に入ったところ倒れている利用者を発見したという例もありました。

また、配達の際に、同居する50代の息子から言葉の暴力を受けているという母親から相談があり、町役場に連絡し、介護施設へ一時入居後、息子とは別の仮設住宅に転居した例もありました。

買物代行と安否確認事業のスタッフが関係機関とのつなぎ役となり、孤独死や高齢者虐待の防止につながっています。


買物を代行するスタッフ
買物を代行するスタッフ

女性の経済的自立に向けて

買物代行と安否確認事業のスタッフは、地元の女性達を雇用しているため、利用者との間に信頼関係が築かれています。その結果、被災した方々の現在抱えている心の状況を聞けるようになっています。

スタッフは期限付きの雇用となっているため、本事業が終了した後も経済的な自立ができるよう、参画プランニング・いわてでは、スタッフに対する様々な研修を行っています。

将来、安全な食材を使った弁当屋やグループホームを起業したいという夢を持つスタッフも出てきました。

買物代行と安否確認事業は、生活支援事業の分野において、女性が起業をして、女性の経済的自立を図るための芽となっています。