「共同参画」2013年 3月号
特集
地域農業の活性化や6次産業化に女性の能力を活かすために
農林水産省経営局就農・女性課 女性・高齢者活動推進室
女性は農林水産業や地域の担い手として活躍しているだけでなく、6次産業化の取組においても大きく期待されています。
農林水産省では、このような女性たちの活躍を更に応援するため、女性の能力の発揮を一層促進するための施策を実施します。
女性は、農林水産業や地域の活性化において重要な役割を果たし、6次産業化の担い手としても大きく期待されています。農林水産業・農山漁村の再生・活性化に向けて、消費者マインド、アイディア、行動力に優れる女性の能力の発揮を一層促進する必要があります。このため、農林水産省では、平成24年度から、女性向けの事業だけでなく、農林水産省の各種事業において、女性の参画を促進する仕組み等を盛り込むなど女性支援策の充実・強化を図ってきたところであり、平成25年度においても、女性の能力の積極的活用をより強力に進めていく観点から、地域計画づくりへの女性参画の要件化や女性による事業活用の促進を以下のとおり実施することとしています。
1 企画・立案段階からの女性の参画促進
地域の方針を企画・立案する段階から、女性の参画を促進するため、市町村等の単位で地域農業の目指すべき方向や確保すべき経営体の姿を定める「人・農地プラン」の検討において、女性の参画を要件化(検討の場に概ね3割以上の女性の参画を求める)する取組を引き続き進めます。表
2 地域農業の活性化などにチャレンジする女性への支援
6次産業化など女性の実践活動を促進する事業では、女性農業者等による積極的な事業活用が望まれることから、女性農林漁業者のネットワーク等を通じて、女性に対し事業に関する情報を周知するとともに、活用を呼びかけ、女性や女性グループが積極的に採択されるよう配慮を行うこととしています。
女性による取組の促進に配慮した主な事業について、表にとりまとめましたのでご参照ください。
3 地域で活躍する女性経営者の飛躍的な発展支援
地域で活躍する女性経営者の飛躍的な発展を支援するため、「女性経営者発展支援事業」を平成24年度に引き続き実施します。この事業は、女性経営者相互のネットワークの形成や異業種・民間企業経営者との交流機会の設定を行うもので、都道府県段階及び全国段階における取組を支援することとしております。
全国段階での取組では、平成24年度に「女性農林漁業者とつながる全国ネット」(愛称:ひめこらぼ)という全国ネットワークを立ち上げ、女性農林漁業者だけでなく、異業種や民間企業、消費者の方などにも参加いただき、ビジネスパートナーとしての関係づくりや、情報交換・交流・連携を進めているところですが、平成25年度はこのネットワークをさらに発展させていくこととしています。
農林水産省としては、これらの施策を通じて、農山漁村の女性の活躍を強力に支援していきたいと考えています。
女性の参画は経営にとってプラス
今年度、農林業センサスのデータを組替集計して、女性の経営参画と経営状況の関係を分析しました。その結果、女性の基幹的農業従事者のいる経営体や、家族経営協定の締結により女性を農業経営に参画させ、女性の能力を十分に活かした経営体は、販売金額が大きくなる傾向が見られました。また、女性が参画している経営体は、農産物の生産だけにとどまらず、農産物加工、観光農園、農家民宿など、経営の多角化に取り組む傾向が強くなることがわかりました。このことから、女性が経営に参画することは、売上げの増加や経営の多角化にプラスの効果を及ぼすという傾向が明らかになりました。
詳細はこちら(農水省HP)をご覧ください。
http://www.maff.go.jp/j/keiei/keiei/kouzou.html
「農山漁村女性の日」について
農林水産省では、3月10日を「農山漁村女性の日」と定め、農山漁村女性の役割を正しく認識し、適正な評価、女性の能力発揮を促進し、農山漁村における男女共同参画の啓発、気運の醸成に努めてきました。
昭和63年3月に第1回目の全国記念行事が開催されて以来、毎年、農山漁村の女性参画関係8団体の主催による記念行事(約千人規模)が東京で開催されています。
第26回目となる本年度は、大会キャッチフレーズを「今こそ見せよう!農山漁村の底力」と定め、記念講演とともに表彰式や優良事例発表などが行われました。
日時:平成25年3月7日(木)10:00~16:00
場所:台東区立浅草公会堂(東京都台東区)
内容:表彰式、活動報告
講演:「ローマ法王に米を食べさせた男-限界集落からの脱却」
講師:高野誠鮮氏
「農山漁村女性の日」設立の経緯
この日は、「国際婦人の10年」ナイロビ世界会議(昭和60年)で採択された「婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略」を受け、我が国において決定された、「西暦2000年に向けての新国内行動計画」(昭和62年策定)の具体的施策の一つとして、位置付けられたものです。
3月10日に設定することについては、まず第1に国際的な視点として「国際婦人の10年」の基本となる世界行動計画草案が検討された時期であること、第2に農家・農村の生活リズムの視点から、農作業が比較的少なく社会生活においても女性が学習や話し合いを共にする条件が整っていること、第3に女性自身の視点として農山漁村女性の3つの能力(知恵、技、経験)をトータル(10)(とお)に発揮してほしいという願いも込められています。
農山漁村でいきいきと活躍する女性達
農山漁村においては、数多くの女性達が、いきいきと活動を展開されており、これらの方々の素晴らしい活躍を広く知っていただくための表彰が行われています。3月7日に開催された記念行事において表彰式が行われました。これらの受賞者の中から、特に優れた活動を行っている女性達の活動を以下にご紹介します。
1「平成24年度農山漁村男女共同参画優良活動表彰」農林水産大臣賞受賞者の紹介
この表彰は、農林水産業分野において、次世代を担う地域リーダーとなることが見込まれている女性や、女性の参画を積極的に推進している組織等を表彰することによって、農山漁村における男女共同参画の取組の推進に資することを目的に行っています。
(1)次世代を担う地域リーダー部門
(1)高 博子氏(石川県七尾市)
能登島赤土野菜の出荷作業
高さんは、平成12年に結婚と同時に夫とともに就農。土づくりや低農薬栽培を実践し、エコ農業のPR活動に取り組むとともに、消費者とのコミュニケーションを重視した販促活動の結果、全国のデパートやレストランに野菜を納入。平成18年には認定農業者となり、高農園の販売部門を担う(株)能登大地や、エディブルフラワーの栽培・加工販売を行う「りらく」を設立するなど6次産業化の先駆的存在でもあります。
(1)高 博子氏(石川県七尾市)
高さんは、平成12年に結婚と同時に夫とともに就農。土づくりや低農薬栽培を実践し、エコ農業のPR活動に取り組むとともに、消費者とのコミュニケーションを重視した販促活動の結果、全国のデパートやレストランに野菜を納入。平成18年には認定農業者となり、高農園の販売部門を担う(株)能登大地や、エディブルフラワーの栽培・加工販売を行う「りらく」を設立するなど6次産業化の先駆的存在でもあります。
(2)平野 佳子氏(千葉県旭市)
ハート型きゅうりで産地をPR
平野さんは、施設野菜農家に生まれて、結婚後就農し、平成16年に経営移譲を受け、経営主として「JAちばみどり旭胡瓜部会」に参加する中で、女性よる産地PRに取り組んでいます。部会内の女性9人で「ハート倶楽部」を結成し、初代会長となって、ハート型キュウリの生産、販売促進活動等に取り組み、年間5万本を出荷するまでに至っています。これらの取り組みを通じて、女性たちが発言できる環境づくりに努め、女性たちの農業経営への参画意識の向上に大きく貢献しています。
(2)組織における女性登用部門
(1)岩手県遠野市農業委員会(岩手県遠野市)
家族経営協定調印式にて
平成24年3月の農業委員の改選にあたり、農業委員会会長が市長、市議会議長へ女性農業委員の選任を要請した結果、市議会から3名の推薦があり、選挙委員1名と合わせて4名の女性が登用されました。遠野市農業委員会では、女性による活動を重要な柱に位置づけており、全ての委員会等に女性を配置しています。また、「女性農業委員業務検討会」を設置するなど、女性農業委員の活動を実効あるものとしています。
(2)鹿児島県曽於市農業委員会(鹿児島県曽於市)
「食と農と女性の会」講演会
曽於市では農業委員会も参画した「曽於市男女共同参画推進会議」を設置。平成23年度の改選期には、これまでの専任委員の選挙への立候補を促すとともに、新たな女性委員の選任について、市長・議長に対して要請活動を展開した結果、選挙委員3名、選任委員3名の計6名の女性農業委員が誕生しました。女性農業委員が中心となり「食と農と女性の会」を設立し、講演会、交流会等を実施して地域の活性化にも大きく貢献しています。
2「平成24年度農山漁村女性・シニア活動表彰」農林水産大臣賞受賞者の紹介
この表彰は、農林水産業及び農山漁村の生活、農山漁村の活性化に優れた活動の実績をもち、男女共同参画の推進又はいきいきとした高齢者の活動の推進のために積極的に活動している経験豊富な女性・高齢者の個人又は団体を表彰することにより、女性や高齢者といった地域の多様な人材が農山漁村でいきいきと活躍できる環境づくりの推進に資することを目的に行っています。ここでは女性参画部門の受賞者について紹介します。
(1)女性地域社会参画部門
(1)中山 みつい氏(茨城県牛久市)
子ども達と一緒に収穫を喜ぶ
中山さんは、平成11年から12年に、茨城県女性農業士会長として全県的な食農活動をリードしながら、地元での食育活動に熱意をもって取り組んできました。小学生を対象にした食農教育は12年目を迎え、平成18年からは中学生の職場体験受け入れや農業講話などにも活動の幅を広げています。県の農政審議会や女性支援会議へも出席し、女性の視点から様々な提言を行っています。
(2)栗原 慶子氏(埼玉県飯能市)
「全国林業女性交流会」において、全林研女性会議相談役として講評する栗原慶子氏
栗原さんは、県内初の女性林業グループを結成し、学習活動や木工品の制作等を開始。平成9年、県の林業女性会議「結木の会」を発足、代表となり、同年、全国林業グループ連絡協議会女性会議を結成し、初代会長として、全国レベルでの女性林業者の組織化に向け尽力してきました。これらの活動が全国に波及し、各都道府県で女性林業者の会が結成されるなど、男性社会だった林業界で女性の参画を牽引してきました。
(2)女性起業・経営参画部門
(1)渡邉 政子氏(群馬県玉村町)
スタッフと共に
渡邉さんは、兼業農家に嫁ぎ、義父から経営移譲を受け、経営者となりました。米麦生産に畜産部門を導入して複合経営化を進め、その後、米麦経営への再転換を図るなど経営改善に取り組み、着実に規模拡大に取り組んできました。また、JA若妻会や生活改善グループの結成等、女性ネットワークの構築を推進し、平成17年、町で初の女性認定農業者に認定され、平成24年からはJA理事として活躍しています。今後も加工部門の導入や、夫や後継者を加えての法人化も目指しているなど、女性農業経営者の先駆的モデルです。
(2)開聞農産物販売所「おふくろの里」運営会(鹿児島県指宿市)
開聞産、採れたて野菜はいかが!
同会は、地元の生活改善グループが活動母体となり、食べ方の提案も伴った農産物販売や伝承料理を活用した消費者交流イベントの開催等、販売、運営方法の工夫を行ってきました。高齢化が進む中、直売所の継続をめざした後継者育成にも取り組み、安定した直売所運営により若い農業者も育てています。さらに学校給食センター、保育園、病院などへの販路拡大にも取り組んでいます。
まとめ
同会は、地元の生活改善グループが活動母体となり、食べ方の提案も伴った農産物販売や伝承料理を活用した消費者交流イベントの開催等、販売、運営方法の工夫を行ってきました。高齢化が進む中、直売所の継続をめざした後継者育成にも取り組み、安定した直売所運営により若い農業者も育てています。さらに学校給食センター、保育園、病院などへの販路拡大にも取り組んでいます。