「共同参画」2012年 12月号

「共同参画」2012年 12月号

取組事例ファイル/団体編

日本女性科学者の会

1.女性科学者・研究者の男女共同参画への苦難の道のり

本会は平塚らいてう女史、湯川秀樹博士をはじめとする世界平和アピール7人会委員の応援を得て1958年に設立以来、今日言われる男女共同参画社会を目指し、着実に活動を続けてきました。

今日に至るまでのその苦難の道のりを、本会の功労賞受賞者田中咸子会員が会のニュースに記している文章を少し引用し、辿ってみたいと思います。

日本での男女共同参画社会に向けてのきっかけは、1946年に制定された日本国憲法にあり、この新憲法のもとに1947年の教育基本法に基づき男女共学が開始されたことにあります。それまでは女性が学問をする、仕事をすることが稀な時代であり、研究者になること以前の問題で、女性の科学者の現場は惨憺たるものであり、発足当時の置かれた地位は、女性であることを全て捨てなければ仕事を続けることが不可能な時代でした。

そのような背景下、田中氏は敗戦国日本から戦勝国で世界をリードしていたアメリカに渡られ、フルブライト留学生として研究生活を経験され、同時に男女平等に触れ、日本の男女平等は国連に指導されたと言っても過言ではないとの感想を述べられております。そこで1975年の国連の国際婦人年を基に日本の男女平等の法整備が進み、1986年の男女雇用機会均等法の施行により各企業の定年制及び初任給などの男女差別の撤廃が定義されることになりました。このことは理工系志望の女子でも、当時必須であった大学の教養課程で法学を学び、法というものがいかに日常生活の中で大きな影響があるかということに気づかされました。その結果、本会は、NGO国際婦人年連絡会の加盟団体となり、他の女性団体と連携して活動するに至りました。

2.女性研究者の質の向上及びリーダー・次世代研究者育成への取組み

本会は質を伴った男女共同参画を目指し、若手及びリーダー育成のために1995年に奨励賞及び功労賞(男女を問わず)を設立し、この奨励賞受賞者の方々の中で、表に示します通り、2~3年後には確実に昇格されていることから、この賞が今日の男女共同参画の質の高い女性の割合を上げるのに一役を担っていると考えております。さらに日本初の女性科学者・技術者国際会議を主催するとともに、子供向けの理科実験教室及び女子中高校生夏の学校(国立女性教育会館)での実験指導などの活動を続けております。

3.科学者・研究者の社会的位置づけの躍進

今までの活動がやっと実り、2011年に第3次男女共同参画基本計画の中に科学技術・学術分野が入ったことが、我々女性科学者・研究者にとって大きな転機となりました。女性と男性とが共に科学技術分野において、個性と能力を発揮できる環境づくり、ネットワークづくりと社会貢献を目指し、年1回の学術大会の開催、学術誌(電子ジャーナル)の刊行、機関誌NEWS(年2回)の発行などにより、質の向上を図り、本来の男女共同参画社会を実現すべく活動を行っています。


2012年度奨励賞・功労賞受賞者


女子中高生
2012夏の学校実験指導


東日本大震災復興懇談会

前身の日本婦人科学者の会は「女性科学者の友好を深め、研究分野の知識の交換を図り、女性科学者の地位向上を目指すと共に、世界の平和に貢献すること」を目的に1958年4月に設立されました。1996年6月に「日本女性科学者の会(SJWS)]と名称を改め、2008年に創立50周年を迎えました。現在は日本学術会議協力団体となっています。会員は、理、工、医、薬、農、家政学などの幅広い科学・技術分野をカバーし、男性研究者・技術者も活動しています。会員数は350~400名。東北、東海、関西、九州の4支部で各々で活動しています。